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血液製剤の管理と取扱い

 血液製剤は、薬事法第2条の特定生物由来製品に含まれ、特定生物由来製品の中で、ヒトの血液を原料とする医薬品を血液製剤と呼んでいます。

 

血液製剤は輸血用血液製剤(全血製剤、赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤)血漿分画製剤(アルブミン製剤、免疫グロブリン製剤、血液凝固因子製剤)に分けられます。輸血用血液製剤のうち、赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤で成分輸血と呼ばれており、現在の輸血のほとんどを占めています。一方、血漿分画製剤は、血液中の血漿を分画・精製し、成分ごとに分けて精製した製剤になります。

 

血液製剤は、血液製剤管理簿を作成し、ロット管理を行うこととなっています。記録には血液製剤の製品名、製造番号(ロット番号)、投与日(医療機関の場合)または調剤日(薬局の場合)、患者の氏名・住所を記載し、少なくとも20年間保管しなければならないとされています。

 

これは薬害エイズ事件の反省からこのような使用記録保管が義務付けられるようになっています。血液製剤は、ヒトの血液を使用している限り、100%安全とは言えず、未知のウイルスが存在も否定できないため、将来追跡調査ができるようにしておく必要があります。

 

 

血液製剤の適応症と保管管理

<全血製剤>

人全血液

【用途】赤血球と血漿を必要とする場合。外傷、分娩、手術などによる出血もしくは失血時の大量輸血、交換輸血
【保存温度】2~6℃
【有効期間】採血後21日間

<血液成分製剤>

人赤血球濃厚液

【用途】出血、慢性貧血など
【保存温度】2~6℃
【有効期間】採血後21日間

 

人血小板濃厚製剤

【用途】血小板減少による出血傾向
【保存温度】20~24℃で振とう保存。(振とうせずに保存すると乳酸が蓄積してpHが低下して、輸血効果が低下してしまうおそれがあるため。)
【有効期間】採血後4日間

 

新鮮凍結人血漿

【用途】血液凝固因子の補充、循環血漿量の改善と維持
【保存温度】-20℃以下(凝固因子の活性を保つため)
【有効期間】採血後1年間

<血漿分画製剤>

人血清アルブミン

アルブミン製剤は血液型に関係なく用いられ、60℃で10時間加熱処理を行って肝炎ウイルスやHIVウイルスを不活化させており、有効期間2年と長いのが特徴です。血液中の成分など(血漿)を血管内に保持し、種々の物質を運搬する働きがあります。

 

【用途】熱傷、ネフローゼ等によるアルブミンの消失、肝硬変などのアルブミン合成低下による低アルブミン血症、出血性ショック
【保存温度】30℃以下(凍結を避ける)
【有効期間】2年間

 

人免疫グロブリン

ウイルスなどの病原体の感染を予防したり、免疫機能を調整する働きがあります。

 

【用途】無又は低ガンマグロブリン血症、重症感染症、川崎病、特発性血小板減少性紫斑病等
【保存温度】10℃以下(凍結を避ける)
【有効期間】2年間

 

血液凝固因子製剤

出血時に血液を固めて止血する働きをする。

 

【用途】血友病、全身性微小血管内凝固(DIC)、手術時の傷口接着・閉鎖等
【保存温度】10℃以下(凍結を避ける)
【有効期間】2年間

 

 

輸血用血液製剤の管理と取扱い

 輸血用血液製剤はヒトの血液を原料としているため、肝炎ウイルスやHIVウイルスなどの感染のリスクまたは過敏症や輸血後GVHD(移植片対宿主病)などの副作用のリスクが存在します。そのため、輸血前に患者又は家族に文書などで分かりやすく説明し、同意を得ることが望ましいとされています。

 

輸血後GVHD(移植片対宿主病)

輸血後GVHD(移植片対宿主病)は輸血後に起こる対宿主の免疫反応の一種で、輸血血液中に存在するリンパ球(T細胞)が患者の体内で非自己として排除されずに、患者組織を攻撃する病態です。GVHDは一度発症するとほぼ死に至ります。

 

発症を予防するためには、自己血輸液、同種血輸血(血縁者からの輸血)の回避、新鮮血輸血(特に採血後3日以内のもの)の回避、放射線照射(137セシウムγ線:15~50Gy)等があります。

 

放射線照射の対象となる血液製剤は、新鮮凍結血漿を除く全血製剤、赤血球製剤、血小板製剤となります。新鮮凍結血漿は融解後に含まれるリンパ球の異種反応性はほとんどなく、輸血後GVHDを起こすとは考えにくいとされていることから放射線照射対象からは外れています。
なお、照射後の血液は上清のカリウム値が上昇するので、新生児、腎不全患者の輸血、急速大量輸血では照射後速やかに輸血を実施する必要があります。

 

また輸血後GVHDを避けるために自己血輸血法(術前貯血式、希釈式、術中回収式)が行われることがあります。自己輸血法は、手術が予定されている患者の血液を予め採血または術中に出血した血液を回収して輸血するという輸血法です。自分の血液を用いるので、免疫反応や新たな感染症などの副作用を防止できるという利点があります。他人の血液、いわゆる同種血輸血法では、免疫抗体の産生を促したりウイルス感染の伝播などが考えられるので、より安全な輸血式となります。

 


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