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DOAC服用時の注意点

DOACが推奨される疾患

国内でDOACは、ダビガトラン(プラザキサ)、リバーロキサバン(イグザレルト)、アピキサバン(エリキュース)、エドキサバン(リクシアナ)の4種類があります。
DOACは一般的な医薬品に比べて価格が高く負担金が大きいですが、メリットが多い薬剤です。
ワルファリンと比較して頭蓋内出血発生率が低く、用量調節のためのPT-INRの定期的な測定が不要、食事の影響がほとんどない、他の薬剤との相互作用が少ないなどのメリットがあります。

 

2020年改訂版不整脈薬物治療ガイドラインによると、弁膜症性心房細動(リウマチ性僧帽弁狭窄症、機械弁置換術後)でない心房細動、つまり非弁膜症性心房細動において、心原性塞栓症のリスク評価である「CHADSsスコア」が1点以上であれば、DOACの投与が推奨されています。

CHADSsスコア→心不全 1点、高血圧 1点、年齢≧75歳 1点、糖尿病 1点、脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)の既往 2点

 

一方、弁膜症で機械弁置換術を受けた患者については、ワルファリン投与が推奨されており、生涯にわたって投与されることになります。
生体弁に置換した患者は、術後3カ月はワルファリンを使用し、その後心房細動のがある場合にはDOACの処方が推奨されます。

 

新規で心房細動が見つかった患者の治療にワルファリンを使うことは減っています。ワルファリンが新規に処方された場合、高度腎機能低下がありDOACが禁忌な例、もしくは心臓弁膜症のため機械弁置換術を受けた可能性があると考えられます。

 

4種類あるDOACの使い分けについて、今のところ明確な基準はありません。
4種類のDOACを直接比較検討した臨床試験はありませんが、、ワルファリンとの比較試験では、安全性おいて全てのDOACがワルファリンより優れていたという報告あります。

 

DOAC服用時の注意点① 出血リスク

DOAC使用について、注意すべき点として出血リスクと減量基準を守ることが挙げられます。

 

出血の中で、発症頻度の高さと転帰の重大さから、頭蓋内出血消化管出血には注意しなくてはなりません。
DOACの第3相試験については、頭蓋内出血が認められました。脳出血や硬膜下血種、くも膜下出血などによる後遺症が残ったり、寝たきりや死亡に至ることもあるので注意が必要です。前駆症状として、めまいや頭痛、手足の麻痺、ろれつが回らない、目の見え方がおかしいなどの症状には注意しなくてはなりません。

 

一方、消化管出血は、貧血や大量出血によりショックを起こすことがあります。
倦怠感やふらつきなどの貧血症状、血便や下血などの症状がないか注意が必要です。
特に低体重やフレイルを合併する高齢者や、腎機能が低下している患者は、出血リスクが高いとされています。

 

青あざなどの内出血症状については、臨床的に問題となることは少ないようです。皮下出血の訴えだけで抗血栓薬を中止・変更あるいは減量することはありません。
しかし、鼻出血や歯肉出血が別の疾患の発見につながることがありますので、出血や血尿などが見られたら、ヘモグロビン値や患者にふらつきや失神などのエピソードがないか確認する必要があります。

 

DOAC服用時の注意点② DOACの減量基準

DOACを使う上で減量基準を順守しなければなりません。長年、DOACを服用している患者については、年齢や腎機能などが減量基準に該当することがありますので、減量のタイミングを見逃さないことが大切です。

 

腎機能の確認は必須であり、クレアチニンクリアランスを参考にします。最近は、検査値が処方せんに記されている場合もありますので、DOACを投与する際の注意すべき項目になります。DOACはCcr 15mL/分未満の高度腎機能低下例では、いずれも禁忌となり、特にダビガトランについては、30mL/分未満で禁忌となります。
腎機能低下例では、DOACの代わりにワルファリンを投与することになります。

 

一方、タビガトラン、エドキサバンはP糖蛋白阻害薬と併用注意であり、タビガトランはイトラコナゾールとの併用禁忌となります。
また、ベラパミルやアミオダロンなどとの併用時には減量を考慮する必要があります。

 

エドキサバンは、キニジン、ベラパミル、エリスロマイシン、シクロスポリンなどが減量を要する併用薬としてあげられます。
ベラパミルは頻脈性の心房細動の患者に心拍数調節の目的で投与されることが多くありますので見落とさないように注意が必要です。
以下に各DOACの用法・用量と減量基準を記載します。

タビガトラン(プラザキサ)

【用法・用量】150mg1日2回
【減量用法・用量】110mg1日2回
【減量基準】・Ccr<50mL/分、・P糖蛋白阻害薬併用、・年齢≧70歳、・消化管出血既往あり
【腎機能低下による禁忌】Ccr<30mL/分

 

リバーロキサバン(イグザレルト)

【用法・用量】15mg1日1回
【減量用法・用量】10mg1日1回
【減量基準】Ccr<50mL/分
【腎機能低下による禁忌】Ccr<15mL/分

 

アピキサバン(エリキュース)

【用法・用量】5mg1日2回
【減量用法・用量】2.5mg1日2回
【減量基準】以下の2つ以上に該当・血清Cr≧1.5mg/dL、・年齢≧80歳。・体重≦60kg
【腎機能低下による禁忌】Ccr<15mL/分

 

エドキサバン(リクシアナ)

【用法・用量】60mg1日1回
【減量用法・用量】30mg1日1回
80歳以上で、かつ頭蓋内、眼内、消化管等での出血の既往、低体重(45kg以下)、Ccr 15mL/分以上30mL/分未満、NSAIDsの常用、抗血小板薬の使用のうち、1つ以上を有し、エドキサバンの通常用量または他の経口抗凝固薬の承認用量では出血リスクのため投与でいない場合は、15mg1日1回
【減量基準】以下のいずれかに該当。・Ccr<50mL/分、・P糖蛋白阻害薬併用、・体重≦60kg
【腎機能低下による禁忌】Ccr<15mL/分


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