服薬指導の意義
服薬指導とは、薬の正しい飲み方や使い方を説明するとともに薬効、副作用、薬物相互作用など薬物治療を安全かつ効果的に行うために必要な内容を患者に伝えることをいいます。
医薬品の薬効、副作用、相互作用などの情報は無数に存在します。そのため、薬剤師は患者の年齢、性格、習慣、生活背景、疾患などから情報を取捨選択し、それぞれの患者にカスタマイズした情報提供を行わなくてはなりません。医薬品における情報をただひたすらに情報提供すればよいのではありません。
どのような情報を選択するかは患者との会話や行動などをもとに薬剤師が考えなくてはなりません。薬局のドアから入ったときからすでに勝負が始まっています。手に入る情報が限られる薬局では会話や行動を注意深く観察して情報を探ることが重要となります。
尿や便の色調変化をきたす医薬品
医薬品を服薬した際に、尿や便の色が変色することがあります。色が変色するだけでほとんど場合は人体に影響はありませんが、色が変わることにより不安になり、自ら服薬を中止してしまうことがあります。そのため、薬剤師は患者が不安から服薬を中止しないようにあらかじめ説明を行う必要性があります。医薬品と尿や便の変色について、以下のものがあります。
尿の色調変化
医薬品(商品名) |
色調変化 |
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セフジニル(セフゾン) | 赤色 |
ダイオウ、センナ、センノシド(アローゼン、プルゼニドなど) | アルカリ尿で赤色 |
チペピジンヒベンズ酸塩(アスベリン) | 赤みがかった着色尿 |
リファンピシン(リファジン) | 橙赤色 |
エパルレスタット(キネダック) | 黄褐色~赤色 |
サラゾスルファピリジン(アザルフィジン) | 黄赤色 |
便の色調変化
医薬品(商品名) |
色調変化 |
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鉄塩、ビスマス塩(フェロミアなど) | 黒色 |
リファンピシン(リファジン) | 橙赤色 |
アルミニウム塩(制酸剤) | 白色に変色、斑点 |
セフジニル(セフゾン) | 鉄添加製品との併用により、赤色 |
サントニン | 黄色~黄緑色 |
銅クロロフィリンナトリウム配合剤(メサフィリン) | 濃緑色 |
手術前に投与中止を必要とする医薬品
手術を実施する場合、出血リスクを回避するために血液凝固阻止剤の服用を予め中止する必要があります。投与中止時期に関しては医薬品の特性に異なっており、以下のようになっています。
手術前の投与中止時期に注意する医薬品
医薬品(商品名) |
色調変化 |
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サルポグレラート塩酸塩(アンプラーグ) | 1~2日前 |
シロスタゾール(プレタール) | 3日前 |
ワルファリンカリウム(ワーファリン) | 3~5日前 |
アスピリン(バイアスピリン、バファリン) | 7日前 |
チクロピジン塩酸塩(パナルジン) | 10~14日前 |
クロピドグレル硫酸塩(プラビックス) | 14日前 |
多めの水(コップ1杯:約180mL)で服用する必要がある医薬品
食道に停留して崩壊すると食道潰瘍をおこすおそれがあります。そのため、以下の医薬品についてはコップ1杯程度の多めの水で服用する必要があります。
ビスホスホネート製剤(アクトネル、ボナロン、リカルボンなど)
テトラサイクリン系抗生物質(ミノマイシンなど)、バカンピシリン塩酸塩(ペングッド)
ピブメシリナム塩酸塩(メリシン)、リンコマイシン塩酸塩水和物(リンコシン)
クリンダマイシン塩酸塩(ダラシン)、メフェナム酸(ポンタール)
ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)、メキシレチン塩酸塩(メキシチール)
リバウンド現象などを起こしやすい医薬品
特に長期投与薬剤などを服用している患者が、自己判断で勝手に服薬を中止した場合に主作用の反跳現象(リバウンド現象)が起きてしまうため、患者が勝手に服用を中止しないようにしなければなりません。
医薬品(商品名) |
理由 |
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プロプラノロール塩酸塩 |
狭心症患者で急に投与を中止したとき、症状が悪化したり、心筋梗塞を起こした症例が報告されている。 |
Ca2+チャネル遮断薬 | 急に投与を中止したとき、症状が悪化した(血圧の上昇など)症例が報告されている。 |
クロニジン塩酸塩 |
急に投与を中止すると、まれに血圧の上昇、神経過敏、頻脈、不安感、頭痛等のリバウンド現象が現れることがある。 |
副腎皮質ステロイド性薬 | 連用後、投与を急に中止すると、ときに発熱、頭痛、食欲不振、脱力感、筋肉・関節痛、ショック等の離脱症状が現れることがある。 |
ワルファリンカリウム |
急に投与を中止すると血栓を生じるおそれがある。 |
抗てんかん薬 | 連用中における投与量の急激な減少ないし投与の中止により、てんかん重積状態が現れることがある。 |