リウマトレックスについて
リウマトレックスは、関節リウマチ(RA)の薬物治療において重要な薬剤で、有効成分はメトトレキサート(MTX)です。MTXの服用方法は独特で、1週間につき1~2回投与となっていて、連日服用してはいけない薬剤になっています。
RAは、免疫機能の異常により関節に炎症が起きて関節の軟骨や骨が破壊され、関節が変形したり、動かなくなる疾病です。
RAは慢性かつ進行性に経過し、炎症が続くことで関節の腫れや痛みが出て、日常生活を過ごすのに支障を来します。さらに進行すると生命予後の悪い間質性肺炎や血管炎など関節病変を合併することもあります。30~50歳代に好発し、女性に多い疾病です。
RAの薬物治療に数種類の治療薬が使われていますが、その中でMTXは第一選択薬となることが多く、RA薬物治療における重要な役割を担っており、アンカードラッグと呼ばれることもあります。アンカーとは、中心的役割を果たしている、信頼がかけられている人や物を指す言葉として使われています。
RA治療薬で使用される薬剤は薬価が高い薬剤が多くありますが、現在MTXの後発品が発売されており、やや処方しやすくなっている状態にあります。
MTXは、MTXは、葉酸の働きを抑えることによって関節内で炎症を起こしている滑膜細胞やリンパ球の増殖を抑え、結果として関節内で起きている炎症を抑えます。つまりMTXはRAで起こっている過剰な免疫機能を抑制することで効果を発揮するとされています。
MTXを服用することによるRAに対する改善率は60%程度とされていますが、服用すればすぐに効き目が出てくるのではなく、3~6週間程度の服用期間が必要となります。
RAにおけるMTXの服用方法
RAの治療でMTXを服用する場合、毎日服用するのではなく、1週間のうち1~2日だけ服用をする独特な服用方法を行います。RAにおいて最初は1週間に6mgまたは8mgから開始し、週の初めに12時間間隔で1~3回に分けて服用し、以後週の後半は休薬します。
効果と副作用を確認しながら、最大16mg/週まで増量することができます。
標準的には6mg/週で開始し、1~2ヶ月毎に1回2~4mgずつ増量を行います。8mg/週を超えて投与する場合は、3分割して服用することが推奨されています。定期的に臨床検査値を確認し副作用の発現に注意しなければなりません。
副作用を防ぐために葉酸を投与することもあります。以下に具体的な投与量の投与スケジュール例を示します。
MTXと葉酸の併用
MTXを服用した最終日の翌日または翌々日に葉酸を服用することがあります。MTXは葉酸の働きを抑える効果を示しますので、服用を続けるうちに葉酸が不足し、副作用を発現する可能性があります。
副作用として口内炎、吐気、下痢、肝機能異常などがあり、MTXの投与量が多くなるにつれて発現しやすくなりますが、葉酸を補給することで防ぐことができます。
一般的にはMTXを8mg/週を超えて服用する場合、葉酸製剤(フォリアミン)を併用します。ただし、高齢者や腎機能障害がある場合は、MTXが少量であっても併用することがあります。白血球減少などの重い副作用が起きた場合は、活性型の葉酸製剤(ロイコボリン)によって治療を行うことがあります。
葉酸により副作用を防ぐことができますが、葉酸の摂取量が過剰になってしまうとMTXの効果が弱まる可能性があります。葉酸は食物の中に含まれており、私たちは食事によって葉酸を摂取しています。
葉酸を多く含む食品としてほうれん草、枝豆、グリーンアスパラ、レバーなどがあります。これらは葉酸を多く含んではいますが、摂取しても過量とはならないため、制限する必要はないとされています。
しかし、サプリメントや栄養補助食品に葉酸を多く含む製品が多くあり、これらを服用する場合は葉酸が過量となってしまうことがありますので、自己判断でサプリメントを服用することは危険です。
MTXの副作用
MTXは細胞の増殖を抑えるため、白血球や血小板の増殖も抑制されて白血球や血小板の数が減り過ぎてしまうことがあります。
白血球が減少すると細菌やウイルスに対する抵抗力が弱くなり、感染症にかかりやすくなります。そのため、口内のただれや肺炎や尿路感染症などを起こしやすくなるため、注意が必要です。
また、血小板が減少すると、出血した血液を止める働きが弱くなるため、歯磨き等で容易に出血したり、皮下出血やあざができやすくなります。
RAの病態進行により、間質性肺炎を起こすことがありますが、MTXを服用することでも起きることもあります。肺は肺胞とよばれる小さな組織がブドウの房のように集まって組織されていて、その周りを毛細血管が網の目のように取り囲んでいます。
肺胞では外から取り込まれた空気中の酸素と血液との間でガス交換が行われており、間質性肺炎では、肺胞の壁や周辺に炎症が起こります。炎症が起こると肺胞の働きがうまく行われなくなるため、低酸素血症状となり呼吸が苦しくなります。
主な症状には痰の絡まない空咳、息切れ、発熱があります。間質性肺炎は進行して、肺が繊維化して硬くなってしまうことがあります。この状態になってしまうと元に戻ることができなくなってしまい、肺の機能が失われてしまいます。初期症状が出たら、早めに対処する必要があります。
MTX服用中における妊娠と授乳
MTXは服用により流産や奇形が誘発されやすいことが報告されているため、MTXを内服中および内服中止から少なからず3か月は妊娠を避ける必要があります。また、女性のみならず男性でも妊娠計画の少なくとも3ヶ月前にはMTXを中止しなければなりません。