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薬剤師の使命

 薬剤師は医薬品の専門家です。薬剤師になるためには大学薬学部で6年間修業し、国家試験に合格しなければなりません。医薬品は生命にかかわるものであり、適切に使用することで疾病による苦痛を取り除いたり、症状を緩和することができます。しかし、医薬品が“クスリ”として利用することができる反面、副作用が発現することもあり、“リスク”ともなり得ます。薬剤師は医薬品の専門家として、高度な専門知識に習熟し、調剤、医薬品の供給、その他薬事衛生をつかさどるという重い社会的責任を担っています。

 

薬剤師の使命は、薬剤師法第一条に薬剤師の任務として以下のように規定されています。

 

薬剤師法第一条

薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康的な生活を確保すうるものとする。

 

 ここにおける薬事衛生とは、薬剤師が薬学の知識に基づいて処理すべき衛生上の以下のような事項を指します。
(イ)  医薬品・医薬部外品・化粧品及び毒物劇物の製造、輸入、授与、管理、保存、試験等
(ロ)  食品衛生及び環境衛生関係の化学的な試験・研究その他
(ハ)  日常生活における薬などの使用に関する相談・助言等

 

 薬剤師は薬局や病院のみならず、官公庁や企業などあらゆる部門で従事しています。最近、薬局は地域医療の担い手として、調剤業務のみならず健康情報を発信する拠点となる役割や地域住民の健康維持・管理の役割が求められるようになってきました。全ての薬剤師はそれぞれの職能を生かして、医療に貢献していくことを期待されています。したがって、薬剤師法に明記されている薬剤師の使命は、全ての薬剤師に該当するものとして考えなくてはなりません。

 

 薬剤師法は法的拘束力をもちますが、法的拘束力はなく、ある団体の理念や指針を要約した文書を綱領といいます。日本薬剤師会は、薬剤師としての基本的任務とその目指すべき目標を綱領として表明しています。薬剤師綱領を以下に示します。

 

薬剤師綱領

一.薬剤師は国から付託された資格に基づき、医薬品の製造・調剤・供給において、その固有の任務を遂行することにより、医療水準の向上に資することを本領とする。
一.薬剤師は広く薬事衛生をつかさどる専門職としてその職能を発揮し、国民の健康増進に寄与する社会的責任を担う。
一.薬剤師はその業務が人の生命健康にかかわることに深く思いを致し、絶えず薬学・医学の成果を吸収して、人類の福祉に貢献するよう努める。

 

 

薬剤師の倫理

 医療に関係するすべての薬剤師には倫理的観点からの行動が必要とされます。薬剤師としての倫理は、薬剤師が常にもち合わせておかなくてはならない行動規範になります。日本薬剤師会は遵守すべき具体的倫理規定を薬剤師倫理規定として制定しています。

 

 倫理観はその人が持ち合わせているものなので、表立ってみえているものではありません。薬剤師が倫理を欠いていたとしても外からそれを判断できず、またそれがなかったとしても日常業務はこなすことはできます。しかし、しっかりとした倫理観を持ち合わせいなければ患者とトラブルになったとき、ついつい楽な解決法を選んでしまいがちになってしまいます。つい保身を優先して考えてしまうこともありますが、一歩立ち止まって考え直さなければなりません。

 

 薬剤師としての倫理と使命を基に判断して問題解決をはかる必要があります。最近では薬学教育の中でも倫理の学習が重要視されるようになっています。薬剤師として現場に出てしまうと倫理規定を目にする機会はほとんど失われてしまいます。このページを目にした機会に倫理規定について目を通しておくべきと考えます。

 

薬剤師倫理規定

前文
 薬剤師は、国民の信託により、憲法及び法令に基づき、医療の担い手の一員として、人権の中で最も基本的な生命・健康の保持増進に寄与する責務を担っている。この責務の根底には生命への畏敬に発する倫理が存在するが、さらに、調剤をはじめ、医薬品の創製から、供給、適正な使用に至るまで、確固たる薬(やく)の倫理が求められる。
 薬剤師が人々の信頼に応え、医療の向上及び公共の福祉の増進に貢献し、薬剤師職能を全うするため、ここに薬剤師倫理規定を制定する。

 

(任務)
第1条 薬剤師は、個人の尊厳の保持と生命の尊重を旨とし、調剤をはじめ、医薬品の供給、その他薬事衛生をつかさどることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって人々の健康な生活の確保に努める。

 

(良心と自律)
第2条 薬剤師は、常に自らを律し、良心と愛情をもって職能の発揮に努める。

 

(法令等の遵守)
第3条 薬剤師は、薬剤師法、薬事法、医療法、健康保険法、その他関連法規に精通し、これら法令等を遵守する。

 

(生涯研鑽)
第4条 薬剤師は、生涯にわたり高い知識と技能の水準を維持するよう積極的に研鑽するとともに、先人の業績を顕彰し、後進の育成に努める。

 

(最善尽力義務)
第5条 薬剤師は、医療の担い手として、常に同僚及び他の医療関係者と協力し、医療及び保健、福祉の向上に努め、患者の利益のため職能の最善を尽くす。

 

(医薬品の安全性等の確保)
第6条 薬剤師は、常に医薬品の品質、有効性及び安全性の確保に努める。また、医薬品が適正に使用されるよう、調剤及び医薬品の供給に当たり患者等に十分な説明を行う。

 

(地域医療への貢献)
第7条 薬剤師は、地域医療向上のための施策について、常に率先してその推進に努める。

 

(職能間の協調)
第8条 薬剤師は、広範にわたる薬剤師職能間の相互協調に努めるとともに、他の関係職能を持つ人々と協力して社会に貢献する。

 

(秘密の保持)
第9条 薬剤師は、職務上知り得た患者等の秘密を、正当な理由なく漏らさない。

 

(品位・信用等の維持)
第10条 薬剤師は、その職務遂行にあたって、品位と信用を損なう行為、信義にもとる行為及び医薬品の誤用を招き濫用を助長する行為をしない。

 

 

 


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