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注射剤の混合

注射剤や輸液の混合は、これまで病棟で医師または看護師が行ってきたが、近年TPNや抗がん剤などいわゆるハイリスク注射剤は薬剤師が調製した方が望ましいというようになってきた。

 

注射剤投与は常に感染や異物混入、注射手技による合併症に注意しなければならなりません。注射剤は無菌の製剤であり、患者に投与される前の混合や溶解操作は無菌的に行われることが必要です。そのため、注射剤の混合を行う場所はクリーンベンチ、またはクリーンルーム内に設置したクリーンベンチで行い、器具等は滅菌したものを使用します。クリーンベンチ内の洗浄には通常は消毒用エタノールを使用し、原則として上から下へ、奥から手前へと消毒を行います。

 

クリーンルーム(無菌室)

<設備>

・  天井や壁面にHEPAフィルターを組み込み清浄な空気を送風する。

・  室内は陽圧となっている。そのため、室内から室外へ空気が吹き出すようになる。

・  空気清浄度はクラス1000~10000程度

 

<操作手順>

・  入室前に手指洗浄・消毒の後、滅菌無じん衣の着用とマスク・キャップの装着を行う。

・  エアシャワーで塵埃を除去する。

・  入室後、手指洗浄・消毒し、無菌手袋を装着する。

・  搬入する材料などはパスボックなどを利用し、消毒用アルコールで消毒する。

クリーンベンチ

<設備>

・  HEPAフィルターを通した空気を送風する。

・  空気清浄度はクラス100

 

<操作手順>

・  搬入する材料などは消毒用アルコールで消毒する。

・  手指洗浄・消毒し、無菌ゴム手袋を装着する。必要に応じてガウンを装着する。

・  前面から15cm以上離れた場所で作業を行う。

・  作業は通気開始30分後に開始する。殺菌灯からは強い紫外線が出ているため、殺菌灯を消してから作業を行う。

 

空気清浄度

クリーンルーム内の清浄度の指標として、単位体積に含まれる粒子の数でクラス分けがされています。一定体積あたりの空気中に微粒子がどのくらいあるかということを示し、数値が小さいほど空気がきれいで、数値が高いほど空気が汚れていると考えることができます。

 

高カロリー輸液製剤への薬剤の混合を行う場合は、可能な限りクリーンベンチを用いてクラス100環境で調整します。ダブルバッグやトリプルバッグなどのキット製剤については、使用前に隔壁を開通するだけなので、クリーンベンチ内などで調整する必要はありません。

 

 

注射剤の混合投与法

臨床現場では、各種注射剤を同一の注射筒に混合したり、輸液に混合することが行われています。その際、混合する輸液量や薬剤の特性に応じた混合方法で行われ、I.V.Push法、Piggyback法、Tandem法などがあります。

I.V.Push法

輸液セットのゴム管あるいは混注口から注射筒を用いて注入する投与方法です。通常、20mL以下の量が少ない注射液の混合、配合変化を起こしやすいもの、溶解度が不安定なもの、血中濃度を一過性に上昇させる必要があるものの投与に適しています。

Piggyback法

2つの輸液を接続する方法で、輸液セットのゴム管あるいは混注口に他の輸液セットの静脈針を刺すか、三方活栓に他方の輸液セットを接続し、混合・投与する方法です。主として100mL以上の量の多い注射剤や時間経過により配合変化を起こす薬剤に使用されます。

Tandem法

2種類以上の輸液を連結管で並列に接続し、混合・投与する方法で、何種類もの輸液を投与したい場合に使用されます。長時間にわたる輸液の注入に使用されますが、点滴ラインに接続した方に比重の軽い注射液をセットしないと、均一な混合が行われない場合があります。

 

バイアルに針を刺しこむ際、注射針がゴムを削り取り、薬剤内に混入してしまうコアリングが発生することがあります。ゴム栓面に対して注射針を垂直に刺すとコアリングが起こりにくいとされています。仮に、コアリングが起こった場合は、0.8μm程度のフィルターを用いることで除去することができます。

 


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