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輸液の目的

 輸液を行う目的には、体液管理、栄養補給、薬剤投与ルートの確保などがあります。
体液は水分や電解質で構成されていますが、脱水症などの疾病や手術などによっては体液バランスが崩れてしまいます。そのため、体液バランスを速やかに補正する手段として、水・電解質の輸液が使用されます。

 

水や電解質の補給以外に栄養補給を輸液により行うことがあります。侵襲性のある手術で消化管が使用できない場合や食欲不振などで必要な栄養量が充足できない場合、エネルギー源や体構成成分となる糖質、アミノ酸、脂質やビタミン、微量元素などの栄養素を経静脈的に補給します。

 

一方、緊急搬送時などに薬剤や輸液の投与を行うために、予め血管を薬剤投与ルートとして確保しておくことがあります。血管が細い場合は穿刺が困難になることがあるため、輸液で血管を確保する必要があることがあります。

 

 

電解質輸液

等張性電解質輸液製剤(細胞外液補充液)

等張電解質輸液は血漿とほぼ等しい電解質の浸透圧に調製された輸液です。等張電解質輸液には生理食塩液、リンゲル液、乳酸(酢酸)リンゲル液などがあります。

 

細胞内外の水・電解質は、半透膜の細胞膜によって分けられていて、細胞外液はさらに毛細血管膜で組織間質液血漿に分けられ、細胞外液に多い電解質はNa+とCl-になっています。
等張性の輸液は細胞内へは移行せず、細胞外にのみ分布して細胞外液(組織間液と血漿)量を増やす輸液になります。下痢や嘔吐、外傷、火傷などが起こると細胞外液が失われてしまいますので、等張性電解質輸液で水、電解質の不足を補うことになります。

血清組成(Na+:142 mEq/L、K+:5 mEq/L、Ca2+:5 mEq/L、Cl-:103 mEq/L、HCO3-:27mEq/L)

 

生理食塩液(Na+:154 mEq/L、Cl-:154mEq/L)

最も簡単にNa+とCl-のみで血清の電解質組成に近いようにつくられており、アルカリ成分がないので嘔吐(胃液成分のCl-喪失)時などに用いられますが、大量投与でCl-過剰によるアシドーシスに注意が必要となります。

 

リンゲル液(Na+:147 mEq/L、K+:4 mEq/L、Ca2+:4.5 mEq/L、Cl-:155.5 mEq/L)

生理食塩液のNaClを減量し、KCl、CaCl2を配合してより血清に近い組成でつくられていますが、Cl-は生理食塩液と変わらないので、同じく大量投与でCl-過剰によるアシドーシスに注意が必要です。

 

乳酸(酢酸)リンゲル液(Na+:130 mEq/L、K+:4 mEq/L、Ca2+:3 mEq/L、Cl-:109 mEq/L、HCO3-:28 mEq/L)(ラクテックR、ヴィーンFRなど)

リンゲル液に乳酸(HCO3-の代用)を配合したもので、Na+はやや低値で、それ以外は血清の組成に最も近いようにつくられています。下痢(腸液成分のHCO3-喪失)や出血性ショック(生理食塩液ではアシドーシスになる)時に使用されます。

 

乳酸は肝臓で生体内のH+を消費して重曹(重炭酸イオン)に代謝されてから作用するので、代謝性アシドーシスを是正することができます。

 

酢酸は乳酸に比べ代謝速度が速く(直接作用する)、また肝臓以外の組織でも代謝されるので肝障害時などでも投与可能となります。

 

重炭酸リンゲル液(Na+:135 mEq/L、K+:4 mEq/L、Ca2+:3 mEq/L、Cl-:113 mEq/L、HCO3-:25 mEq/L、Mg2+:Citrate=1:5)

生体内で代謝を必要としないため、代謝能に異常がある患者に使用することができ、代謝アシドーシス補正効果も速やかに得ることができます。

 

 

低張性電解質輸液製剤

低張電解質輸液剤は体液より電解質濃度が低いため、細胞内・外を問わず、体全体に水分及び電解質の補給できる輸液になります。ヒトが絶飲、絶食状態下で生命を維持するために必要な電解質と水分の補給の目的で投与されます。生理食塩液と5%ブドウ糖液の配合割合を変えることにより、1号液から4号液に分けられています。

 

 

1号液(開始液)
脱水原因が不明のときに用いら使用される輸液になります。病態が分かれば他の適した輸液に変更します。Kが含まれていないのが特徴です。生理食塩液(Na+約154mEq/L)を5%ブドウ糖液で1/2に希釈した輸液(Na+約77mEq/L)になります。

 

2号液(脱水補給液)
細胞内に多い電解質(K+、Mg2+、HCO3-)を含んでおり、細胞外液の異常を修復しながら細胞内電解質の異常を正常化する輸液になります。Kを含んでいるため、1号液で利尿がついた後の低カリウム血症や細胞内電解質が不足する低張性脱水に使用されます。
生理食塩液(Na+約154mEq/L)を5%ブドウ糖液で1/3に希釈した輸液(Na+約51mEq/L)になります。

 

3号液(維持液)
水分、電解質の1日必要量が組成の基準となっているため、最も汎用される輸液であり、経口摂取不能または不十分時の水分、電解質の補給・維持に使用されます。Kを含んでいるため、1号液で利尿がついた後の高張性脱水に使用されます。
生理食塩液(Na+約154mEq/L)を5%ブドウ糖液で1/4に希釈した輸液(Na+約35mEq/L)になります。

 

4号液(術後回復液)
電解質濃度が最も低く、水分補給を目的とした輸液で、腎機能が低下している高齢者、術後早期の患者及び腎機能が未熟な新生児に使用されます。
生理食塩液(Na+約154mEq/L)を5%ブドウ糖液で1/5に希釈した輸液(Na+約31mEq/L)になります。

 

 

血漿増量剤

血漿増量剤には、膠質輸液剤浸透圧輸液剤があり、出血や火傷による重篤な血漿、血液量の欠乏を補う目的で使用されます。

 

膠質輸液剤

膠質成分(デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン)が血管内にのみ分布し、血管内の水を維持するとともに、膠質浸透圧を上昇させることによって循環血漿量が増加・維持されます。

 

膠質浸透圧が下がると、水分は血管内より組織間へ移行するため浮腫(腹水)が生じる可能性があるので、輸液中に抗アルドステロン薬(スピロノラクトン、カンレノ酸カリウム)、ループ利尿薬(フロセミド)を添加投与したり、アルブミン製剤の点滴投与を行います。

 

浸透圧輸液剤(D-マンニトール)

細胞外液中に分布し、浸透圧を増加させることにより組織間液を血液中に移行させるので、術中・術後の急性腎不全の予防・治療、脳圧・眼内圧降下に用いられるます。

 

 

補正用電解質液

補正用電解質液にはナトリウム(NaCl)、カリウム(KCl)、(K2HPO4)、カルシウム(CaCl2)、マグネシウム(MgSO4)製剤などがあり、それぞれの欠乏症や補正に使用されます。補正用電解質液は浸透圧が高いので(高張液)、必ず希釈して使用します。

 

Naは約84%が細胞外液中に存在しており、細胞外液量及び体液浸透圧を維持するため、1日90〜120mEq必要となります。

 

Kは約90%が細胞内液中に存在しており、神経や筋肉の興奮と伝達が重要な働きで1日50〜90mEq必要となります。Kは心臓への影響が大きいので、投与液の濃度は40mEq/L以下、速度は20mEq/hr以下、投与量は100mEq/日以下が原則で、心電図や血清K濃度(正常値3.5〜5.0mEq/L)をモニターしながら投与を行います。

 


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