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保険調剤の流れ

私たちは医療機関で診察を受けた後、薬局で医薬品を受け取ります。受け取るまでの手順として、医療機関で発行された処方せんを持って保険薬局へ行き、そこで薬剤師に調剤を行ってもらい、薬を受け取っています。

 

この一連の流れの中で、処方せんや時間帯によっては調剤を行ってもらう時間が長くかかることがあります。実際に保険調剤では調剤して薬をお渡しするまでに、調剤室ではいろいろな作業を行っています。調剤室が待合室から見えているところも多いと思いますが、実際にどのようなことを具体的に行っているのか知っている方は多くはないと思います。

 

お薬をもらうまで保険調剤の流れの基本的なフローチャートを以下に記します。

 

 

 

1.処方せんの受付

処方せんの確認

保険調剤を受けるためには、保険医が交付する処方せんが必要です。そして、保険薬剤師は処方せんに基づき調剤を行わなくてはなりません。処方せんは一定の様式またはこれに準ずる様式と定められおり、医療機関で採用している形式は異なります。

 

一方、処方せんに記載されるべき内容は定められており、処方せんに不備がある場合には調剤報酬の支払いが受けられないこともあります。最近では保険処方せんをカラーコピーして向精神病薬を不正に受給しようとしたケースもありました。そのため、保険薬局ではまず処方せんに不備がないか十分に確認を行います。

 

 

薬剤服用歴の確認

保険薬局では、来局した患者の服薬の履歴や患者が使用している一般用医薬品・サプリメントアレルギー歴・副作用歴などを併せて記録しています。この記録のことを薬剤服用歴(薬歴)といいます。

 

処方せんを確認して調剤を行う前に、来局したことがあり薬歴があれば、そこに記録した患者情報と処方内容を照合してから調剤を開始します。

 

薬局を訪れた際に、アンケートとしてアレルギー、副作用歴、使用中の薬剤などについて記載を求められることがありますが、これは薬歴を作成する上で必要な情報を得るためであり、患者ごとに作成し、投与される薬剤について服薬指導を行うことになっています。

 

薬局間で情報の共有は行っていないため、初めて受診する薬局では再度、アンケートを求められることになります。

 

薬歴を作成する目的は、医薬品の重複投与や相互作用等について確認することで医薬品の安全性と有効性を高めることにあります。

 

現在、ジェネリック医薬品の使用が推奨されています。薬の有効成分は同じであるものの商品名が異なっているために、別の薬と思い込んで一緒に服用していたことが判明したことがありました。

 

また、サプリメントが医薬品の薬効を弱めたり強めたりすることもあるので、医薬品とサプリメントの相互作用を確認することができます。

 

このように薬歴を作成し、薬剤師のチェックが通ることによって安全に医薬品を使用することができます。かかりつけの薬局があれば、薬歴が充実していきますので安全性を高めることができます。

 

 

後発品医薬品(ジェネリック医薬品)への変更

調剤を行う前に処方せんに不備がないか確認し、薬歴を確認した後に後発品への変更を行う場合があります。これは薬剤師の意思のみで行うことはできません。あくまで処方医と患者の同意があることが前提となります。

 

しかしながら、高騰する医療費を抑制する必要性があることから、商品名を指定していない一般名処方と生活保護受給者に対する給付については原則としてジェネリック医薬品を選択しなければなりません。

 

一般名処方にもかかわらずジェネリック医薬品を選択しない場合はなぜ選択しなかったのか理由を示す必要があり、薬局はその理由を薬歴に残す義務があります。

 

処方医がジェネリック医薬品を使用してもよいという意思は、処方せんの「変更不可」の欄に医薬品毎に「?」又は「×」の記載の有無で確認できます。空欄になっている場合は変更可能であり、「?」又は「×」がある場合は変更ができないということを示します。

 

薬剤師はジェネリック医薬品への変更の可否を確認し、患者に変更に関する聴取を行います。変更する意思があれば、ジェネリック医薬品へ変更します。しかし、中にはいつも飲んでいる薬でないと安心できないとか効果が違う気がするなどの理由で変更を希望されない場合もあります。

 

私は薬を服用するという行為自体も治療に含まれると感じていますので、希望するブランド名の薬剤を服用するべきだとは思いますが、薬剤師としてジェネリック医薬品のメリットとデメリットの十分に説明を行った上で患者に選択させる必要があると思います。

 

 

処方せんに疑義が生じた場合

調剤を行う前に処方せんや薬歴の確認を行うことを述べてきましたが、疑問に思うことや不明な点が出ることがあります。その場合は必ず処方医へ確認した上で調剤を行わなくてはなりません。これを疑義照会といいますが、お薬をお渡しした後に医師に問い合わせをしてはいけません。

 

照会後は薬剤師が備考欄に疑義紹介した内容を記載することになっています。疑義照会がある場合はその分調剤に入るまでに時間がかかるため、結果的に薬を受け取る時間が遅くなったり、順番が前後することもあります。しかし、薬を安全にかつ有効に使用するためには、疑義照会があることはやむを得ません。

 

 

2.調剤

調剤

処方せんに基づき薬剤師が調剤を行います。調剤の内容によって調剤に要する時間は異なります。錠剤、カプセル剤、粉薬の分包品は、薬剤棚からピッキングして薬剤を揃えます。

 

散剤の場合は、秤量、混和、分包という過程を経て薬剤を揃えることになります。さらに小児の体重に換算した調整や2種類以上の散剤を混合することがあるため、調剤に時間を要します。

 

必要に応じて錠剤、カプセル剤を散剤とまとめて分包することもあります。その他、嚥下機能が低下している方に対しては錠剤を粉砕して飲みやすいように加工したり、飲み間違いが多かったり認知機能が低下している方は、用法別にまとめた一包化を行ったりします。

 

 

外用薬についてもピッキングで薬を揃えることができますが、場合によって2種類以上の軟膏やクリーム等の混合したり、別の容器に小分けしてお渡しするケースもあります。

 

このように内用薬も外用薬も患者個々の状況に合わせた調剤を行っており、最大限服用または使用しやすいように調剤を行います。

 

調剤で薬を揃えることができたら、次に調剤した薬剤と処方せんを照合して、間違いがないか監査を行います。この段階が調剤過誤を防止する最後の砦となります。

 

調剤した薬剤の錠剤の数や薬袋に間違いがないか、調剤した薬用量に間違いがないなどの確認を行います。また、一包化の場合は錠剤やカプセルに印字されている識別コードで確認したりします。散剤や外用剤を混合した場合は、偏りや異物の混入がないか確認します。

 

以上の手順を経て、ようやく薬剤を交付できる準備が整います。

 

 

3.薬剤服用歴に基づく服薬指導、 4.薬剤の交付

薬歴または患者アンケートを参考にしながら投薬を行います。

 

患者へインタビューを行いながら説明をしていきます。処方された薬が症状と妥当か体重から推測される薬用量は妥当か、これまでに服用している薬があるときはこれまでの服用で副作用の発現はないか薬の飲み合わせは問題ないかなどを聴取していきます。

 

服薬指導の中で疑義が生じた場合は疑義照会を行います。

 

患者によってこのような会話をせず、一刻も早く薬をもらって帰りたいという方もいると思いますが、このような薬剤師の行為は薬を安全に使用するためには必要な行為なのです。

 

 

5.薬歴・調剤録の作成と保存

薬歴・調剤録の作成

実際に行った服薬指導の内容を薬歴に残します。問題点を抽出し、次の服薬指導に活用できるような継続性のある記述方法で記載を行っていきます。これらの情報は個人情報であるため、プライバシー保護には十分に配慮がなされていなければなりません。

 

調剤録は実際に薬剤師が調剤を行った内容の記録をいいます。調剤録は処方せんとおりに薬剤師が調剤を行った証拠と言うことができ、保険薬局の開設者は最終記載後3年間保存しなければなりません。

 

調剤録は調剤済みとなった処方せんに調剤録と同様の事項を記入したものをもってかえるできるとされていますので、調剤録は別冊で整備しているというよりも、処方せんの裏面等に必要事項を記載している場合がほとんどです。

 

処方せんについても調剤が完了した日から3年間の保存義務があります。薬剤師が調剤を行ったときは、その処方せんに調剤済みになったこと、調剤年月日、薬局の所在地及び名称、医師等への照会事項、変更事項を記入し、記名押印又は署名しなければならないとされています。

 

 

調剤報酬の請求

保険薬局では、調剤業務以外に月に1回月末に調剤報酬の請求を行います。いわゆる調剤報酬請求書またはレセプト作成といったりしています。

 

請求事務は本来開設者の義務となっているので必ずしも薬剤師が行わなければならないわけではありません。実際保険薬局では調剤事務を専門的に行う人を雇っており、薬剤師が調剤業務に専念できる環境にあることが多いです。

 

しかし、調剤内容と請求内容の齟齬が不正請求ともなる可能性もありますので、薬剤師による内容確認が重要です。

 


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