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妊娠週数の数え方と妊娠時期の区分けについて

妊娠週数は、最終月経開始日0周0日とし、満日数で表現します。月経開始日の翌日を0周1日目、翌々日を0周2日とし、0周7日目に当たる日を1周0日と表現します。月経周期は、月経の開始日から次回月経開始日までの間の期間をいい、だいたい28日間になります。

 

月経周期を28日とするとだいたい2週0日で排卵が起こり、受精が起こります。妊娠が成立しなかった場合は4週0日に次の月経が始まります。このようにして妊娠週数を数えていきます。

 

 

妊娠の時期の区分けについては、いくつか分け方について方法はありますが、代表的なもので妊娠時期を初期・中期・後期の3つの時期で表現する方法があります。

 

3つの時期で区分する場合、以下のようになります。

妊娠初期→妊娠0週0日から妊娠13週6日まで
妊娠中期→妊娠14週0日から妊娠27週6日まで
妊娠後期→妊娠28週0日以降

 

 

胎児への薬剤の影響

薬剤の胎児に対する影響、特に胎児の奇形発生については、妊娠のどの時期に服用したかが重要となり、薬剤の影響を最も考慮すべき時期は妊娠初期です。妊娠初期は週数により、①無影響期、②絶対過敏期、③相対・比較過敏期に分かれます。

 

①無影響期:受精前~妊娠3週末まで
受精後2週間以内に影響を受けた場合には着床しなかったり、流産して消失するか、あるいは完全に修復されて健児を出産するという、all or none(全か無か)と呼ばれる時期になります。そのため、残留性のある薬剤以外については考慮する必要はない時期となります。

 

②絶対過敏期:妊娠4~7週末まで
妊娠4週~7週末までは薬剤などによる催奇形性が疑われる胎児が最も敏感な時期となります。この時期になると胎児の中枢神経、心臓、消化器などの重要な臓器、四肢などが形成されていきます。かつてサリドマイドによる胎児奇形が起こったのもこの時期であり、この時期の薬剤服用には十分注意が必要となります。

 

③相対過敏期・比較過敏期:妊娠8週~15週末まで
この期間は、胎児にとって重要な器官の形成は終わっているため、薬剤による奇形発生は少なくなっていく時期になります。しかし、妊娠11週頃になると外観から男女の区別ができるようになり、12~14週頃には外陰部の分化が完成します。そのため、ダナゾールのような女児の外性器の男性化が報告されている薬剤については服用を注意しなければなりません。

 

妊娠16週から分娩にかけての妊娠中期・後期は潜在過敏期といわれています。中期を過ぎるとACE阻害剤やワルファリンなどを除いて、薬剤による奇形はありません。

 

しかし、この時期では、胎児の機能を抑制する薬剤については注意が必要となります。胎児に対するさまざまな影響を胎児毒性といいますが、胎児毒性として問題となるのは、発育の抑制、子宮内胎児の死亡、胎児環境の変化(胎児尿量の減少による羊水減少)です。

 

例えば抗甲状腺薬を過量に服用した場合は、胎児が甲状腺機能低下症となる危険性があったり、NSAIDsは胎児の動脈管を閉鎖する可能性があり、妊娠後期の使用では注意が必要となります。

 

 

妊娠中に注意すべき薬剤

催奇形性・胎児毒性が報告されている医薬品には注意しなければなりません。動物実験のみの報告もありますが、実際にヒトで報告されている医薬品については特に注意が必要となります。

 

催奇形性・胎児毒性が報告されているものを以下にまとめます。

催奇形性が報告されている薬剤

薬剤名

商品名

報告されている問題

エトレチナート チガソン 催奇形性、男性も避妊が必要
大量のビタミンA チョコラA 催奇形性
ワルファリン ワーファリン 妊娠のどの時期でも胎児に形態異常を引き起こす可能性がある。
プロスタグランジン製剤 サイトテック 妊娠のどの時期でも胎児に形態異常を引き起こす可能性がある。流早産
ダナゾール ボンゾール 女児の外陰部の男性化
フェニトイン アレビアチン ヒダントイン症候群
バルプロ酸ナトリウム デパケン、セレニカなど 神経管閉鎖障害、胎児バルプロ酸症候群、尿道下裂、認知機能低下
風疹ワクチン   生ワクチンのために先天性風疹症候群の発生。しかし実際の報告例はない

参照:妊娠・授乳とくすりのQ&A-安全・適正な薬物治療のために-

 

 

胎児毒性が報告されている薬剤

薬剤名

商品名

報告されている問題

アミノグリコシド系抗菌薬 カナマイシン、ストレプトマイシン 非可逆性の第Ⅷ脳神経障害
テトラサイクリン系抗菌薬 ミノマイシン 乳歯のエナメル質染色、永久歯冠の染色
クロラムフェニコール系抗菌薬 クロロマイセチン 新生児の中毒(gray syndrome)
NSAIDs インダシン、ボルタレン 動脈館閉鎖、新生児持続性肺高血圧症、持続胎児循環症、羊水過少、分娩遅延、予定日超過
プロスタグランジン製剤 サイトテック 妊娠のどの時期でも胎児に形態異常を引き起こす可能性がある。流早産

参照:妊娠・授乳とくすりのQ&A-安全・適正な薬物治療のために-

 

 

胎盤の薬物移行について

母体内の胎児にとって、胎盤は重要な役割を担っています。胎盤の役割としては胎児の呼吸のためのガス交換、母児間の物質交換の関門および内分泌作用などさまざまなものがあります。

 

母体に薬剤が投与されると母体の血中に取り込まれ、胎盤を介して胎児へと移行していきます。そのため、薬剤の胎盤通過性は胎児への影響を考慮する上では極めて重要となります。

 

薬物が胎盤を通過する機序として以下の3つが考えられます。分子量、脂溶性やpH勾配などの因子が関連する受動的輸送(単純拡散)とトランスポーターなどを介する能動的輸送、食細胞運動や飲細胞運動が関連する生物学的輸送があります。

 

①受動的輸送(単純拡散)
胎盤通過性に影響を与える因子として、分子量、イオン化、脂溶性、血漿蛋白との結合があります。

分子量

一般に分子量が小さいほど胎盤を通過しやすいとされています。分子量が300~600以下のものは通過しますが、1,000以上になると通過しにくいとされます。

 

イオン化

イオン化が強いほど通過しにくいとされています。胎児血のpHは、母体血よりも0.1~0.15程度低いとされているため、母体血中とは異なる影響を与えることがあります。塩基性の薬物は胎児側ではイオン化している割合が多くなるため、胎児に蓄積する傾向が高いとされています。

 

脂溶性

脂溶性が高い薬物ほど胎盤を通過しやすいとされます。脂溶性ビタミン、ステロイドホルモン、全身麻酔薬、バルビツール酸類、ジアゼパム、サイアザイド剤、経口抗凝固剤などは脂溶性が高く、容易に胎盤を通過します。

 

血漿蛋白との結合   

蛋白との結合率が高いほど胎盤を通過しにくいとされています。母体から胎児側へ胎盤を通過する薬物はほとんどが蛋白と結合していない遊離型の薬物です。母体の血漿蛋白と結合している薬物は胎盤を通過することができません。胎児側から母体側へ胎盤を通過する場合も遊離型の薬物となっていますので、この性質をもつワルファリンやフェニルブタゾンなどは胎盤通過後、胎児血中で血漿蛋白と結合するため、母体側へ戻りにくいとされています。

 

②能動的輸送
能動的輸送は、胎盤に発現するトランスポーターを介して胎盤を通過する機序で、エネルギーを消費することによって濃度勾配をさかのぼって薬物が移動します。これは胎児の体構成成分や代謝に必須の物質のアミノ酸、ブドウ糖、ビタミン類などの輸送に限られます。

 

 

③生物学的輸送
食細胞運動や飲細胞運動によるもので、高分子物質の輸送の役割を担っています。IgGやLDLなどがこの機序で胎盤を通過します。

 


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