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学校薬剤師とは?

小学校や中学校、高校や専門学校にまで大学以外の学校には、学校薬剤師なるもの1名ずつ配置されています。学校薬剤師を配置する目的は、医薬品などの適切な管理を行うためであり、学校の環境衛生の管理や保健管理を行います。

 

学校薬剤師の存在は、学校保健安全法で、「大学以外の学校には、学校薬剤師を置くものとする」と明記がされていることによります。国公立または私立を問わず、幼稚園から高校までの学校には、特定の薬剤師がいることになります。ほかにも学校保健安全法では、学校薬剤師以外に学校医や学校歯科医の配置も規定されています。

 

学校薬剤師は、公立学校の場合は教育委員会からの委嘱という形で保健室に常駐している訳ではありません。平均すると月に1回程度、学校を訪問して衛生管理や保健管理を行います。大抵の場合は、学校の付近の調剤薬局の薬剤師が担当することが多いです。1人の薬剤師が複数の学校の学校薬剤師を兼務するケースもあります。

 

学校薬剤師となるための必要条件は、薬剤師であることが絶対条件ですが、特別に必要な条件は他に定められていません。しかしながら、通常は学校薬剤師になろうと思ってもなかなかなれないのが現状です。学校薬剤師募集という広告も見たことがありません。というのも、学校薬剤師は地域の薬剤師会に所属する会員から選抜されるためです。

 

学校薬剤師の業務に環境衛生検査がありますが、具体的には教室内の照度測定、CO2COの濃度測定、給食室の大腸菌検査などがあります。これらの検査に使用する機器は学校が保有していることはほとんどなく、薬剤師会が保有しています。

 

また、実際に検査を薬剤師会でまとめて行っていることが多く、1個人が学校と契約して、検査をするというケースはほとんどなく、薬剤師会が仲介するのがほとんどだと思われます。このようにソフト面とハード面の両面から学校薬剤師になるためには、現実的には薬剤師会へ所属する必要があります。

 

私も小学校の学校薬剤師を担当したことがありますが、依頼があったのは薬剤師会からでした。事前に薬剤師会へ学校薬剤師希望の旨を伝えておいたところ、薬剤師会から連絡がありました。その頃、薬剤師としてはまだ経験の浅い時期にもかかわらず依頼があったということは、薬剤師の資質よりも薬剤師会に入会していたからなんだと今になって感じています。

 

 

学校薬剤師の報酬

学校薬剤師の報酬は教育委員会の所属する市町村から支給されます。平均すると年間で5~15万円程度ではないかと思います。同じ県下でも市町村によって報酬額が違っていました。私の場合は、年間12万円程度で12回に分割されて支給されていました。月に1万円程度の報酬でしたが、2校担当していたため、月2万円程度の収入がありました。

 

学校薬剤師の業務として、環境衛生検査を定期的に行わなければなりません。検査は実際に授業中の環境を検査する必要があるため、午前中もしくは午後の生徒がいる時間帯に検査を行わなくてはいけません。

 

したがって、調剤薬局の忙しい時間帯を抜け出す必要性があるため、事前に職場の了承を得て、スケジュール調整を行う必要があります。

 

 

学校の環境衛生検査

以下に私の経験を踏まえ、環境衛生検査について述べます。地域や学校によっては実施しない項目もあるかもしれませんし、これら以外の項目も実施している学校があるかと思われます。

 

 

<照度検査>
環境衛生検査の項目として、照度があります。照度検査は授業中に得られる明るさが適切かどうかの検査で、照度計を用いて測定します。黒板上と教室内を測定します。照度が十分でない場合は、照明器具の清掃や設置を助言したり、明るすぎる場合はカーテンの使用や設置を助言したりします。

 

 

<空気検査>
教室内の空気検査も検査項目にあります。特に冬季では教室の換気が不十分だったり、暖房器具を使用するため、空気が汚れがちになります。教室内の空気の安全のために、CO2とCOの空気検査を行います。CO2は規定濃度以下である必要があり、COは検出されてはいけません。

 

 

<プール水の検査>
夏季になると、学校でプールの授業を行います。プールの授業を行う前に、プール水に細菌がいないか、塩素消毒が十分行われているか検査を行います。実際に薬剤師はサンプルを採取し、薬剤師会で検査を行っていました。結果を学校薬剤師を介して行い、必要な措置を講じるように助言していました。

 

 

<給食検査>
給食はほとんどの小学校で実施されていますが、給食室がある場合とそうでない場合があります。給食室がない場合は、給食センターが調理して、各学校へ運搬される形式をとっているようでした。
給食室は食中毒防止の観点から、大腸菌が検出されてはなりません。さらに使用する食器も衛生的でなくてはなりません。

 

この状態を担保する検査として、培地を使った大腸菌検出検査食器の残渣検査を行います。残渣項目として、デンプンと脂肪を行いました。残渣の検査は試薬により結果をすぐに得ることができるので薬剤師が実施していましたが、培養検査はサンプル採取を薬剤師が行ない、培養と測定は薬剤師会で行っていました。

 

 

<保健室・理科室の薬品チェック>
保健室には怪我や病気に備えて医薬品が備えてあります。医薬品の管理が適切に行われているか指導・助言を行います。医薬品の開封年月日、使用期限などを記録する帳簿備え付けられているか、医薬品の保管が適切か確認を行います。

 

理科室には、毒劇物や引火性のある薬品があるため、その管理が適切かどうか指導・助言を行います。使用期間を過ぎたものについて、適切に廃棄できるよう助言することもあります。中和反応などでその場で処理できる分については、直接薬剤師が行うこともあります。

 

 

学校の保健管理

学校に薬剤師が出向いていき、そこで講義を行うことがあります。講義の内容は薬に関連するテーマが多く、くすりの使い方喫煙・飲酒についてまたは薬物乱用防止についてなどがあります。教材は薬剤師側が準備することになっていますが、薬剤師会が保有する資材を使用することもあります。

 

最近では中学校や高校などで医薬品の正しい理解や適正使用について「くすり教育」が行われており、薬剤師が参画する機会が今後増えてくるのではないかと考えられます。他にもPM2.5や放射線量や脱法ハーブなど薬剤師が情報提供できるような時事問題は多々あるように思えます。

 

今後このような活動を薬剤師が積極的に行っていくことで、薬剤師や学校薬剤師の存在が認知されていくとよいと思います。

 


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