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プロアクティブ療法

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は、強いかゆみを伴う湿疹が増悪と寛解を繰り返す慢性的な炎症性皮膚疾患です。乳児期に発症することが多く、大半は寛解します。しかし、その一部では重症化し寛解しにくい状態が続くこともあります。

 

アトピー性皮膚炎では、皮膚の水分量やバリア機能が低下し、外部からの刺激を受けやすい状態になっています。外からの刺激を受けるとアレルギー反応を引き起こし、かゆみを引き起こしさらには皮膚炎を引き起こしてしまいます。かゆみがひどくなると、それに対してかきむしることで炎症が起こっていき、さらに皮膚にバリアが障害されます。つまり、かゆみ→炎症→バリアの破壊→さらに強いかゆみ→・・・という悪循環となっていきます。

 

そこで、アトピー性皮膚炎の治療では、スキンケアを継続的に行いつつ、重症度に応じて炎症反応を抑えていくという方法がとられます。
薬物療法として、スキンケアに対しては保湿剤を使用し、炎症反応に対してはステロイド外用剤タクロリムス外用剤が使用されます。

 

 

 

アトピー性皮膚炎の治療薬

アトピー性皮膚炎の薬物療法には、一般的に以下の薬剤が使用されています。

 

スキンケア(皮膚の保湿剤)

ヘパリン類似物質、尿素製剤、ワセリン、亜鉛華軟膏

 

炎症反応の抑制

副腎皮質ホルモン、ステロイド外用剤、タクロリムス外用剤

皮疹には乾燥や紅斑の程度、皮疹の範囲などにより軽症から重症に分類され、重症度によって適切なステロイド薬を選択することが治療の基本となります。
乳幼児や小児では原則的に皮疹の重症度よりもワンランク低いものを選択し、経皮吸収のよい顔面にはmediumクラス以下のステロイド外用剤を選択します。

 

ステロイド外用剤の局所的な副作用には、皮膚萎縮、毛細血管拡張、ステロイドざ瘡、多毛、皮膚感染症などがあります。

 

一方、ステロイド外用剤が無効の場合や副作用により使用が難しい場合はタクロリムス外用剤を使用します。タクロリムス外用剤は顔面・頸部で有効性が高いですが、潰瘍面には使用できません。使用後一時的にヒリヒリしたりする一過性の刺激症状がみられることがあります。

 

 

プロアクティブ療法

アトピー性皮膚炎の寛解維持期の治療として、保湿剤の外用と組み合わせて、炎症を抑えるステロイド外用剤やタクロリムス外用剤の外用薬を週1~3回間欠的に使用するプロアクティブ療法が拡がりつつあります。

 

アトピー性皮膚炎の皮膚は、治療により一見正常に見えるようにまで改善していても、組織学的には炎症が残存しており、炎症が再燃しやすい状態にあります。ここで炎症を抑える治療を中止してしまうと炎症が再燃してしまいます。
そのため、皮膚の潜在的な炎症に対して、ステロイド外用剤またはタクロリムス外用剤を使ってプロアクティブ療法を行うことで症状の再燃を予防できると考えられています。

 

プロアクティブ療法への移行は、皮膚炎が十分に改善してから行われることが重要となりますので、自己判断では悪化させてしまう危険性があるので医師による判断が必要です。塗布範囲や塗布量、終了時期などについては症例ごとの対応が必要となります。

 


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