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ラモトリギン (商品名:ラミクタール)

どんな薬か?

ラモトリギン(ラミクタール)は種々のてんかん発作に効果があるいわゆる広域スペクトラムをもつ抗てんかん薬です。ラミクタールは抗てんかん作用の他に感情を安定化させる作用も有しているため、双極性障害における効果も認められています。

 

ラミクタールを投与した場合に起こりうる有害事象は、重篤な皮膚障害などが報告されていますが、患者が耐えうることができる比較的軽度のものが多いとされています。催奇形性が低く、胎児に与える影響も少ないと考えられているため、妊娠可能な女性に使用しやすかったり、認知機能への影響が少ないため高齢者に対しても使いやすいという利点があります。

 

ラミクタールは肝臓でグルクロン酸転移酵素によるグルクロン酸抱合によって代謝され、半減期は約31~38時間となっています。薬物によっては、ラミクタールよりもグルクロン酸抱合されやすかったり、反対にグルクロン酸抱合を誘導するものがあったりするため、ラミクタールは併用される薬物により半減期が延長したり短縮したりすることがあります。

 

てんかんや双極性障害の治療などで使用されることが多いバルプロ酸ナトリウムはラミクタールと同様にグルクロン酸抱合されるため、ラミクタールと併用することでグルクロン酸抱合が競合して阻害され、ラミクタールの半減期は2倍の約70時間に延長するされています。一方、グルクロン酸抱合を誘導するカルバマゼピンを併用すると半減期は約13時間に短縮するとされています。

 

したがって、バルプロ酸ナトリウムやカルバマゼピンは治療上併用される可能性が高い薬剤ですので、ラミクタールを安全に使用するためにはこれらの影響を加味した上で投与計画を考えなければなりません。そのため、ラミクタールの服用方法または増量法は成人のてんかん患者においては以下のように設定されています。

 

<成人てんかん患者の場合>

バルプロ酸ナトリウムとの併用療法の場合

使用開始1・2週 :1日おきに25㎎
使用開始3・4週 :1日1回25㎎
使用開始5週以降 :1~2週毎に1日量として25~50㎎ずつ漸増
維持量 :100~200㎎を1日に2回に分けて服用

 

バルプロ酸ナトリウム以外の併用療法でグルクロン酸抱合を誘導する薬剤の場合(フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、プリミドンなど)

使用開始1・2週 :1日1回50㎎
使用開始3・4週 :100~200㎎を1日に2回に分けて服用
使用開始5週以降 :1~2週毎に1日量として最大100㎎ずつ漸増
維持量 :200~400㎎を1日に2回に分けて服用

 

単剤療法もしくはグルクロン酸抱合を誘導する薬剤以外の抗てんかん薬と併用する場合(ゾニザミド、ガバペンチン、トピラマート、レベチラセタムなど)

使用開始1・2週 :1日1回25㎎
使用開始3・4週 :1日1回50㎎
使用開始5週以降 :5週目は100㎎を1日1回または2回に分けて服用。その後は、1~2週間毎に1日量として最大100㎎ずつ漸増
維持量 :100~200㎎(最大400㎎)を1日1回または2回に分けて服用。増量する場合は、1週間以上の間隔をあけて最大100㎎ずつ漸増

 

 

注意すべき副作用

本剤による副作用として皮膚障害が知られています。投与早期に重篤な皮膚障害であるスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)や中毒性表皮壊死症(TEN)を生じることもあるため注意が必要となります。小児投与例、急激な増量、高用量での初期投与例またバルプロ酸併用例などで起こりやすいとされているため、慎重な増量が必要となります。

 

皮膚障害以外の重大な副作用に再生不良性貧血、汎血球減少症、肝機能障害、無菌性髄膜炎などの報告があります。その他の主な副作用として、傾眠、めまい、消化器症状、肝機能異常、発疹などがあります。

 

前述のようにバルプロ酸ナトリウムを併用すると本剤の半減期が延長し、反対にグルクロン酸抱合を誘導する薬剤と併用すると効果が減弱してしまいます。グルクロン酸抱合を誘導する薬剤として、抗てんかん薬のフェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、プリミドン、抗菌薬のリファンピシン、抗ウイルス剤のロピナビル、リトナビルなどが知られています。

 

また、経口避妊薬との併用で、本剤の血中濃度低下および経口避妊薬の血中濃度低下が報告があったり、カルバマゼピン併用でめまいまたは失調症状、リスペリドン併用で傾眠症状が起こりやすいとの報告があり、ラミクタールの併用薬には十分な注意が必要となります。

 

 

まとめ
  • 忍容性が高く、広域スペクトラムをもつ抗てんかん薬であり、双極性障害にも効果がある。
  • バルプロ酸ナトリウムとの併用で半減期が2倍になる。
  • 重篤な皮膚症状を発現することがある。

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