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抗生剤と低血糖症状

 

幼児に多くみられる咽頭炎、上気道炎、中耳炎などの治療に抗生剤が使用されることがあります。抗生剤は必要最小限の使用にとどめておくべきですが、場合によっては抗生剤を長期間服用することもあります。その場合、抗生剤の長期間投与によりけいれんや意識障害などの低血糖症状が懸念される場合があります。

 

ピボキシル基による低カルニチン血症

国内で市販されている抗生剤の中で、長期連用により低血糖症状を起こす恐れがあるものに、セフカペンピボキシル塩酸塩水和物(商品名:フロモックスなど)セフジトレンピボキシル(商品名:メイアクトMSなど)セフテラムピボキシル(商品名:トミロンなど)があります。

 

これらは化学構造式の中に共通したある部分があり、その部分がピボキシル基になります。

 

ピボキシル基の部分は直接薬効に関わる部位ではありませんが、メイアクトMSの場合は経口吸収を高めるためエステル結合したプロドラッグ化された部分になっています。この部位は、腸管から吸収されるとエステラーゼによって分解され、活性体となり薬効を示します。

 

エステラーゼによって分解されたピボキシル基は、ピバリン酸とホルムアルデヒドに分解され、さらにはホルムアルデヒドは二酸化炭素に分解されて呼気から排泄されます。一方、ピバリン酸はほとんどが血中のカルニチンという物質と結合し、カルニチン抱合体として尿中に排泄され、血液中のカルニチン濃度が低下していきます。

 

カルニチンは、脂肪酸の分解を促進してエネルギーを産生する働きがあります。したがってカルニチンが不足するとエネルギー不足を引き起こします。

 

エネルギーは身体の中でいろいろな部位で利用されていますが、その中でもエネルギーから糖を作り出す糖新生にも使用されています。糖新生は、糖質以外から糖が得られない場合、脂肪酸など糖質以外の物質から糖を産生する作用です。糖新生が妨げられるということは、低血糖症状を起こす可能性があることを示します。

 

実際、ピボキシル基を持つ抗生剤を通常量で4〜5日間服用した場合、血清中のカルニチンは30〜40%低下し、抗生剤の投与を中止すると約2週間で正常値まで戻るとされています。また一定の休薬期間を含んだとして投与期間が50日間以上の場合、低血糖症状を起こしやすいと報告されています。

 

したがって、低血糖症状を避けるためには、ピボキシル基を有する抗生剤の長期間服用に注意し、必要であれば、クラリスロマイシンなどのピボキシル基の構造を持たない抗生剤に変更するなどの措置が必要となります。

 

 

まとめ

ピボキシル基を有する抗生剤を長期間使用すると、分解されてできたピバリン酸によって低カルニチン血症を起こして低血糖症状を起こす可能性があります。やむを得ない理由などで長期間使用する必要がある場合は、この化学構造を持たない別の抗生剤に変更する方がよいでしょう。

 

 

 

 


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