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甲状腺ホルモン製剤と抗甲状腺薬の併用

 

甲状腺ホルモン製剤のレボチロキシンナトリウム(商品名:チラーヂンS)、抗甲状腺薬のチアマゾール(商品名:メルカゾール)という薬剤があります。これらは相反する作用を持っているにも関わらず同時に処方される場合があります。相反する作用をもつ2剤がなぜ併用されるのでしょうか?

 

甲状腺機能亢進症の治療

甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることが原因で起こります。女性に多いバセドウ病は、甲状腺機能亢進症の1つで、病態として甲状腺ホルモンが過剰に分泌されている状態になっています。

 

治療方針として、過剰になった甲状腺ホルモンの働きを抑えるため、抗甲状腺薬が投与されます。抗甲状腺薬の服用期間が長く、通常2年間以上は投与される必要があります。

 

甲状腺機能亢進症の主な症状として、甲状腺腫、眼球突出、頻脈などがあり、この症状を抑えるべく初期の投与量は多めに投与されます。そして甲状腺腫の大きさや脈拍などの臨床症状などによって異なってはきますが、血液検査のデータの経過を辿りながら徐々に量を減らしていき、最終的には少量の抗甲状腺薬で維持していくという治療方法となります。

 

ただし、抗甲状腺薬によって過度に抑制されてしまうと、反対に機能低下症を起こすことがあります。このとき、抗甲状腺薬を急に休薬してしまうと甲状腺亢進症が再燃してしまうおそれがあり、これまでの治療が無駄になってしまいます。そのため、抗甲状腺薬は休薬することは難しいため、代わりに投与されるのが甲状腺ホルモン製剤で、過度の甲状腺機能低下を抑えます。

 

このように甲状腺機能亢進症において、過度の抑制が起こらないよう甲状腺ホルモンの作用を調節する目的で相反する2つの薬剤が同時に投与されることがあります。

 

一方、甲状腺亢進症では、頻脈振戦が起こることもあります。このとき、プロプラノロール(商品名:インデラル)やアテノロール(商品名:テノーミン)のβ遮断薬が使用されることがあります。

 

 


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