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漢方薬とは

漢方薬とは漢方医学に使用される処方のことで、天然物である生薬(薬草の根や茎、葉などの有用部分を乾燥させたものや動物由来のもの、鉱物など)を組合わせた薬です。

 

漢方医学は、全身の調和を整え、その結果として局部の疾患(症状)を改善していくという治療概念があります。西洋医学のように疾患そのものだけを対象として治療していくのではなく、バランスが崩れた人間の恒常性の維持機能を正常に戻すことを治療の基本としています。その際に用いられる医薬品が漢方薬です。

 

漢方薬は、古代中国で確立され、生薬の種類・配合量は傷寒論や金匱要略などの古典に記載されている処方が基本となり、加減法(例:葛根湯加川芎辛夷、加味逍遥散など)などの処方が経験に基づいて伝えられています。

 

漢方薬の剤形は、煎じて飲む「煎剤」と、生薬を粉末にした「散剤」、さらに、蜜や糊のような結合剤を用いて丸く固めた「丸剤」などがあります。近年では、製剤技術の進歩により、服薬量を減少して服用しやすく、保存や携帯に便利なエキス製剤(錠剤、顆粒剤、細粒剤など)が主流となっています。

 

 

漢方薬の作用による分類

漢方薬はその作用によりいくつかのグループに分類することができます。
以下の補剤、駆瘀血剤、利水剤に分けることができます。

 

補剤

補剤とは、元気がない(精神的な落ち込みではなく、肉体疲労が蓄積し休養してもなかなか解消されない状態)、体が乾いている(乾燥肌や多尿を訴える状態)、寒がり(冷え)などの各々のエネルギー、水分、熱が不足した状態に対して、各要素を補う薬です。

 

補剤の多くに共通して含まれる生薬に、人参、黄耆があり、これらを含む薬を参耆剤といいます。

 

【代表例】 補中益気湯、六君子湯、十全大補湯

駆瘀血剤

私たちの体の中には血液が循環しています。
血液は肺で酸素を十分に取り込んだ後、肺静脈を経由し左心室へ運ばれ、大動脈を通り全身へ運ばれます。
その後分岐を繰り返して毛細血管となって全身組織へ行き渡り、酸素や栄養分を細胞に届けます。
そして、細胞から排出された老廃物を毛細血管に戻し、大静脈を通って右心室へと戻り、肺動脈を経由して肺で二酸化炭素を排出させるという循環を1サイクルとして血液は絶えず循環しています。

 

ところが何らかの理由により、血流が悪くなったり、血流が滞る状態になることがあります。
この状態を瘀血とよんでいます。

 

瘀血は微小循環障害ということであり、瘀血の状態になると、体全体が酸欠および栄養不足の状態になり、新陳代謝が低下します。その結果、慢性疼痛や冷えなどの症状が出たり、悪化すると血管が塞がって狭心症や脳梗塞などの思い循環器疾患をもたらすことがあります。

 

瘀血状態を改善する薬剤を駆瘀血剤といい、共通して含まれる生薬に、牡丹皮、桃仁、芍薬、大黄などがあります。
牡丹皮と桃仁はともに強力な駆瘀血作用(循環改善作用)をもつ代表格です。駆瘀血作用に加えて、芍薬は補血作用があり、大黄には瀉下作用も併せもっています。

 

【代表例】 当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸

利水剤

利水剤とは、体内に水分が不均衡に分布した状態から、水分の分布を再分配する薬になります。
水分が不均衡な状態を水滞や水毒といい、体内の水の代謝異常が原因となっています。
水滞状態になると、むくみ、下痢、尿量減少、多尿、嘔吐、口渇などの症状が起こることがあります。

 

利水剤に共通して含まれる生薬に、茯苓、沢瀉、蒼朮、白朮などがあり、精神安定作用、頭の締め付け感改善作用、健胃(健脾)作用などを示します。

 

【代表例】 五苓散、猪苓湯

 

(参考書籍:よく出る漢方薬ABC レシピプラス 南山堂,2017)


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