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アリピプラゾール

 

睡眠障害は、入眠障害(寝つきが悪い)、中途覚醒(途中で目覚める)、早期覚醒(早朝に目覚め、二度寝ができない)、熟眠困難(寝た気がしない)といった睡眠の質の悪化を主体とするものが多くを占める。

 

近年では、望むべき時間に入眠や覚醒ができなくなる睡眠障害の患者も増えている。夜間のシフトで働く人の増加や、自身の趣味に没頭し夜更かしをする若年者が増えていることなどが、1つの原因として考えられている。

 

これらの障害の特徴は、入眠できないことよりも、望む時間に覚醒できない点が問題であり、学校にいけない、会社に行けないなど社会生活に支障をきたす。近年、こうした障害は概日リズム障害(睡眠・覚醒リズム障害)と分類されている。

 

概日リズム障害のうち、就寝時間が遅く(入眠困難)、本来目覚めるべき時間より2時間以上遅れる(覚醒困難)状態が慢性的に持続するものを睡眠相後退症候群(Delayed sleep-phase syndrome:DSPS)と呼ぶ。

 

DSPSの薬物治療においては、ラメルテオン(ロゼレム)、メラトニン(メラトベル)といったメラトニン受容体作動薬の投与が適応となる。その他、抑うつ症状を伴うDSPSについては、非定型抗精神病薬であるアリピプラゾール(エビリファイ)の1.5 ~3mg/日の少量投与が、夜間睡眠の延長を短縮できると報告されている。

 

アリピプラゾールは消失半減期が約65時間と長いため、定常状態に達するまで14日間を要するとされているが、この研究では1週間程度で効果が認められている。

 

アリピプラゾールの作用機序として、ドパミン神経伝達物質が亢進したD2受容体へは拮抗作用を示す。一方、ドパミン神経伝達が低下したD2受容体へは適度に活性化する部分アゴニスト(パーシャルアゴニスト)であり、低用量と中等量以上ではその薬理作用が異なると言われている。
 低用量ではシナプス前の自己受容体であるD2受容体およびD3受容体に働きアゴニスト作用を示すが、中等量以上ではシナプス後のD2受容体にも働きアンタゴニストとして作用するため鎮静作用が強くなってしまう。この少量投与でのドパミン系の賦活作用が睡眠時間の短縮やうつ症状の改善に寄与している可能性が示唆されている。


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