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ビスフォスフォネート(BP)関連顎骨壊死

ビスフォスフォネート(BP)系薬剤は骨粗鬆症治療の第一選択薬であり、服用時間は起床時になっていて、毎日起床時服用する薬剤、週に1回だけ起床時に服用する薬剤、月に1回または28日に1回だけ起床時に服用する薬剤があります。飲み方としては非常に特殊な薬剤と言えます。また、骨粗鬆症だけではなく、悪性腫瘍の患者骨量が減少する疾患に対しても使用されることもあります。

 

近年、BP を投与されている骨粗鬆症の患者やがん患者が抜歯などの侵襲的な歯科治療を受けた後に、顎骨壊死(Bisphosphonate-Related Osteonecrosis of the Jaw, BRONJ)が発生し、BPと BRONJ の関連性を示唆するような報告がなされています。

 

BRONJとは、顎の骨の組織や細胞が局所的に死滅し、骨が腐った状態になることです。あごの骨が腐ると、口の中にもともと生息する細菌による感染が起こり、あごの痛み、腫れ、膿が出るなどの症状が出現します。一度発症してしまうと完全に治癒することが難しいため、予防が重要です。

 

BRONJの発症には口の中の衛生状態が大きく関わっていると考えられているため、BPを服用する患者は口腔内を清潔に保つことが重要になります。こまめなブラッシングや歯科医による定期的な検査によって予防できる可能性があります。

 

 

BP投与患者の歯科治療とBPの一時的休薬・再開

BRONJの発症を防ぐためには、BP 投与予定の患者、特に悪性腫瘍患者の場合は、投与前に口腔衛生状態を良好に保つことの重要性を理解しておくことが重要です。

 

可能であれば、歯科治療が終了して口腔状態が改善した後に BP 投与を開始する方が安心だと言えます。 前述のようにBPの中には週に1回または月に1回服用を行うものもあり、服用していること自体をあまり自覚していないことも見受けられます。侵襲的な歯科治療を行う際には、BP服用中の旨を必ず歯科医に伝えることが重要です。

 

一方、BP の休薬が BRONJ 発生を予防するという明らかな臨床的エビデンスは今のところ得られていません。そのため、歯科医によってはBPを中止せずに侵襲的な治療を行う場合もあります。特に悪性腫瘍の患者には、BRONJの 発生リスクと BP の治療効果を考慮して服用継続の判断を行わなくてはいけません。悪性腫瘍の患者の場合、原則的に BP 投与を継続し、侵襲的歯科治療はできるかぎり避けることが望ましいと言えます。

 

また、BPの服用期間が長いほどBRONJの発生リスクが高まると考えられています。侵襲的歯科治療を行うことについて、投与期間が3年未満で他にリスクファクターがない場合は 、休薬は原則として不要と判断されることが多く、適切な口腔管理を行った後に侵襲的歯科治療を行っても差し支えないと考えられます。

 

反対に、投与期間が3年以上あるいは 3 年未満でもリスクファクターがある場合には判断が難しいとされます。この場合、処方医と歯科医との間で現段階で疾病の状況と侵襲的歯科治療の必要性を検討する必要があります。

 

BP の休薬が可能な場合、休薬期間が長いほど、BRONJ の発生頻度は低くなるとの報告があり、骨のリモデリングを考慮すると休薬期間はヶ月程度が望ましいとされています。

 

このようにBPと歯科の侵襲的治療における明確なエビデンスが不十分なため、医師や歯科医師によって判断が分かれることが多くあります。しかし医療を受ける側としては、BP服用中のリスクを理解し、そしてその情報をしっかりと伝えいくことが重要です。その情報提供ツールとしてお薬手帳などを活用していくとよいのではないでしょうか?

 


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