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アニサキス症と正露丸

アニサキス症

アニサキスとは、アニサキス亜科に属する線虫類の総称で、成虫はイルカやクジラなどの胃に寄生しており、幼虫はサバ、タラ、イカなどの魚介類などに寄生しています。

 

アニサキス症とは、アニサキスの幼虫が寄生する海産魚介類を食べた場合に感染する消化管疾患のことをいいます。感染原因食はサバが最も多いと考えられていますが、生食だけでなく、加熱不十分あるいは塩漬けや酢漬けの状態でも感染します。

 

通常、ヒトが感染した魚を食べてもほとんどの幼虫は感染を起こすことなく、便中に排出されます。しかし、胃の中で自由になった幼虫が胃粘膜や腸粘膜に付着して侵入すると、アニサキス症を引き起こし、急性腹症として発症します。

 

アニサキス症は、胃アニサキス症が大半を占めており腸アニサキス症はまれです。アニサキスの初感染時は、症状が軽微で自覚症状もないことが多く、緩和型と呼ばれますが、再感染時すると非常に激しい症状を示し、劇症型と呼ばれます。再感染により劇症型となるのは、初感染時に感作され、再感染により即時型過敏症状を起こすためと考えられています。

 

劇症型の胃アニサキス症では喫食後8時間以内、劇症型の腸アニサキス症は数時間から数日後に持続する激しい腹痛差し込むような痛みが起こり、吐気嘔吐を伴うこともあります。

 

私が幼い頃に父がアニサキス症にかかりましたが、非常に激しい腹痛で動くことができずうずくまっていたことを記憶しています。

 

 

アニサキス症の治療

治療法として、胃アニサキス症の場合は胃内視鏡により虫体を確認し、鉗子などで摘出する方法が最も有効とされています。
一方、腸アニサキス症の場合は、内視鏡による診断・摘出が困難な部位であるため、X線検査などで診断を行い、鎮痛薬などの対症療法となります。これは1週間ほどで自然にアニサキスは死亡するとされているためですが、腸閉塞など重症化した場合は外科的治療が必要となる場合もあります。

 

これまでアニサキス症に特異的に効果のある治療薬はないとされてきましたが、木クレオソートを含有する正露丸の内服により、胃アニサキス症の症状である強い上腹部痛が消失した症例が報告されています。これは木クレオソートがアニサキスの活動を抑制するためと考えられています。

 

正露丸は1回3粒、1日3回服用とされており、1日最大9粒服用することができます。アニサキス症に対して正露丸を服用する場合は通常の用量で効果が期待できるとされており、大量に飲む必要はありません。

 

もしも、運悪くアニサキス症にかかり激しい症状に悩まされる場合、正露丸があればそれに助けられることがあるかも知れません。しかし、自己判断でむやみに服用すると症状を悪化させてしまうことがあるため、医師による正確な診断が必要です。

 

このほかの治療法として、アニサキス症における消化器症状をアニサキスを抗原とするアレルギー反応によるものと捉えて、ステロイド剤や抗ヒスタミン薬などによるアレルギー治療で症状緩和を試みる方法も行われるようにもなっています。

 

 


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