ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物(一般名:ロケルマ懸濁用散分包)
名称の由来
「下げる(lower)」と「カリウム血症(kalemia)」から「LOKELMA」と命名されました。(インタビューフォームより)
効能・効果
高カリウム血症
高カリウム血症は、慢性腎臓病(CKD)や心不全の他、生活習慣病に伴う腎機能低下により引き起こされることがあります。高カリウム血症は不整脈を来し、心停止に至ることもあるため、食事制限や利尿薬などで効果が不十分な場合、カリウム吸着薬による治療が行われます。一方で、緊急性がある場合は本剤は使用されず、インスリンとグルコースまたは重炭酸ナトリウムの静脈内投与や血液透析が実施されます。
高カリウム血症治療の国内ガイドラインによると、本剤は血清カリウム値5.5mmol/L以上の高カリウム血症を呈するCKD患者において、食事療法でカリウム制限(1,500mg/日)を行うだけでは管理ができない場合に使用されます。
用法・用量
通常、成人には開始用量として1回10gを水で懸濁して1日3回、2日間経口投与。患者の状態に応じて最長3日間まで投与可能。
以後、1回5gを水で懸濁して1日1回経口投与、患者の状態に応じて適宜増減しますが、1日1回最大15gまでとなっています。
血液透析患者の場合は通常、1回5gを水で懸濁して非透析日に1日1回経口投与し、最大透析間隔後の透析前の血清K値や患者の状態に応じて適宜増減します。最高用量は1日1回15gまで服用することができます。
作用機序
本剤は均一な微細構造を有する非ポリマーの無機結晶で、消化管内に存在するK+イオンを選択的に捕捉し、本剤内のH+イオン及びNa+と交換します。K+イオンを補足すると、糞中に排泄させます。消化管内腔における遊離K濃度を低下させることにより、血清K濃度を低下させ高K血症を改善します。
これまで販売されてきた本剤と同効薬のカリウム吸着薬は、カリウム以外の陽イオンも捕捉しやすいとされていました。しかし、本剤は、微孔開口径が平均約3Åであり、K+イオンの直径(2.98Å)に近いことから、K+イオンを選択的に捕捉できると考えられています。ちなみにカルシウムイオンは2.00Å、マグネシウムイオンは1.44Åと考えられています。
薬物動態
消化管から体内に吸収されることはないため、血中や細胞内への移行はなく、消化管内腔のみに分布します。本剤は代謝を受けず、糞中に全量排泄されます。
<相互作用>
H+イオンを吸着して一時的に胃内pHを上昇させる可能性があります。胃内pHに依存してバイオアベイラビリティが変化する薬剤の作用を減弱する恐れがあるため、相互作用のおそれがある薬剤は本剤投与の少なくとも2時間前または2時間後に投与します。
そのほか、AUC低下が報告されている薬剤にクロピドグレル、ダビガトランがあり、Cmax上昇が報告されている薬剤にアトルバスタチンカルシウム、フロセミド、ワルファリンがあります。
副作用
重大な副作用に低K血症、うっ血性心不全が報告されています。
低K血症
血清K濃度が3mmol/L未満になると筋力低下が生じ、麻痺や呼吸不全に至ることがあります。そのほか痙攣、線維束性収縮、麻痺性イレウス、低血圧、テタニー、横紋筋融解症などが現れること報告されています。
うっ血性心不全
全身の臓器の血管で血流の滞留が起こり、体液量が増加して尿量が減ります。肺に水がたまると(肺水腫)、肺の機能が低下し、息切れや呼吸困難、倦怠感などが生じます。
日中に全身に分布していた血液が就寝時に横になることで体幹に戻り、腎臓の血流が増加するため、就寝後の尿量が増えます。
その他の副作用に便秘が起こりやすいとされています。
服薬指導
本剤の服用方法は、1回約45mL(大さじ3杯)の水で懸濁します。溶解しにくいため、十分に懸濁し、沈殿する前に服用する必要があります。服用後、容器に薬が残っていた場合には再び水に懸濁して服用します。服用時点は定められておらず、いつでも服用可能となっています。
経口の高カリウム血症治療薬は、溶解しにくいため懸濁状態で服用することになります。そのため、ざらつき感が強く、継続的に服用することは困難となる場合があります。さらに腎不全状態や透析時には水分量が制限されている場合もありますので問題なく服用できるか服薬の手技を確認する必要もあります。
併用薬について、腎障害時にミネラルコルチコイド受容体拮抗薬やACE阻害薬、インドメタシンを使用すると高カリウム血症をきたしやすいため、必要に応じては中止や変更を検討します。
まとめ
・消化管内に存在するK+イオンを選択的に捕捉し、本剤内のH+イオン及びNa+と交換することで、血清K濃度を低下させ高K血症を改善します。
・これまでの高カリウム血症治療薬よりも1回量が比較的少なめ。
・重大な副作用に低K血症、うっ血性心不全が報告されている。