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予防接種のスケジュール

 ワクチン接種を実際に実行しようとすると、定期接種だけでもかなりの回数接種を行わなければならないことに気づきます。不活化ワクチンの場合は一般的に複数回の接種が必要で、生ワクチンの場合であっても十分な抗体価を得るためには数回接種を行わなくてはなりません。

 

ワクチン接種を効率的にかつ安全に行うためには、事前にスケジュールを立てておき、接種期間が来たら、すぐに接種を行うことが重要です。生後2ヶ月からワクチン接種を始めるのが理想的です。スケジュールを設定する理由は、ワクチンには接種期間と接種間隔が決められており、ワクチン接種後は一定期間あける必要があるためです。またスケジュールを立てることで接種漏れを防ぐこともできます。

 

スケジュールの立て方として、1歳までに接種するワクチン1歳以降に接種するワクチンとに分けて考え、感染すると生命に関わるもしくは重症化しやすい疾患から最優先に接種します。
そのため、ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチン、四種混合ワクチンを優先することになりますが、ヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンは生後2か月から、四種混合ワクチンは生後3か月から接種することができますので、ヒブワクチン→肺炎球菌→四種混合ワクチンの順で接種します。その間に、ロタウイルスワクチン、B型肝炎ウイルスワクチン、BCGを組み込んでいきます。

 

1歳までに接種するワクチン
  • 生後6週間から接種できるワクチン⇒ロタウイルスワクチン(任意)
  • 生後2ヶ月から接種できるワクチン⇒ヒブワクチン(定期)、肺炎球菌ワクチン(定期)、B型肝炎ワクチン(任意)
  • 生後3ヶ月から接種できるワクチン⇒四種混合ワクチン(定期)
  • 生後1ヶ月まで(生後5ヶ月〜8ヶ月未満が望ましい)に接種するワクチン⇒BCG(定期)

 

 

 インフルエンザ菌b型肺炎球菌細菌性髄膜炎を合併することがあり、細菌性髄膜炎は死に至る重篤な疾患です。ヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンを予防接種することで、この疾患を防ぐことができます。したがって、この2つのワクチンは優先順位が高く、生後2ヶ月になったら、すぐに接種する必要があります。両者とも3回接種と1回の追加接種の合計4回接種が必要です。

 

 生後3ヶ月から四種混合ワクチン(DPT-IPV)が接種することができます。四種とはジフテリア(D)、百日咳(P)、破傷風(T)、ポリオの四種を指します。百日咳は乳児が罹患しやすく、肺炎脳症を併発することがあります。そのため、3ヶ月になったらすぐに接種する必要があります。DPT-IPVは3回接種と1回の追加接種の合計4回接種が必要です。

 

 任意接種になりますが、ロタウイルスワクチンB型肝炎ワクチンも検討すべきワクチンです。保育園などに入所するとロタウイルス胃腸炎に罹患することが多く、ロタウイルスワクチンにより、重症化防ぐことができます。
ロタウイルスワクチンはロタリックスロタテックの2種類があり、両者とも生ワクチンです。生後6週から接種可能で前者は2回接種で後者は3回接種となっています。接種時期は早ければ早いほどよいですが、生後6週で接種すると生ワクチンのため、4週間以上他のワクチンが接種できなくなってしまいます。そのためヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンを先に接種して1週間後に接種する方が早く済ませることができます。

 

 B型肝炎は罹患すると劇症肝炎などの重篤な病気を引き起こし、慢性化すると肝硬変から肝臓がんになることもあります。B型肝炎ワクチンは生後2ヶ月から接種できるワクチンになっています。

 

 BCGは結核予防のための生ワクチンです。生後5ヶ月から8ヶ月未満の間に接種するのが標準的とされていますが、現在では乳児に結核はあまり認められなくなったため、急ぎません。生後1ヶ月までの間に1回接種を行います。

 

 このように1歳までに受けるワクチンだけで6種類(任意も含む)もありますので、重症化しやすい疾患や流行状況を加味してワクチンのスケジュールを立てなければなりません。いつでも接種できると考えず、生後2ヶ月を過ぎたらワクチン接種を開始することが重要です。

 

 

1歳以降に接種するワクチン
  • 1歳以上2歳未満⇒麻疹・風疹ワクチン(定期)
  • 1歳以上⇒水痘ワクチン(任意)、ムンプスワクチン(任意)
  • 3歳以上⇒日本脳炎ワクチン(定期)
  • 11歳から12歳に達するまで⇒二種混合(DT)ワクチン(定期)
  • 12歳から16歳(小学校6年生〜高校1年生)⇒ヒトパピローマウイルスワクチン(定期:女子のみ)

 

 1歳になったら、疾患が重症化しやすいことから麻疹・風疹ワクチンを接種します。麻疹・風疹ワクチンは1回接種すると生涯に渡って免疫が続くとされていましたが、最近では十分な免疫が得られことがあるため、小学校入学前に2回目接種を行っています。

 

 水痘ワクチンとムンプスワクチンは、保育園や幼稚園などの集団生活で流行しやすいため、入園前に済ませておく方が良いと考えられます。ただし、両方とも任意接種であるため、全額自費となりますが、ムンプスウイルスに感染するとまれに後遺症で難聴を起こすことがありますので、注意が必要です。

 

 日本脳炎ワクチンは生後6か月から接種することができますが、通常は3歳以降に接種します。第1期として3歳のときに6〜28日の間隔をおいて2回接種し、その後おおむね1年の間隔をおいて1回接種し、合計4回接種します。第2期として、9歳のときに1回接種します。

 

 ヒトパピローマウイルスワクチンは子宮頸がんを予防する目的で接種します。小学校6年生から高校1年生までの女子が対象となっており、3回接種が必要です。

 

 

ワクチンの接種間隔

 予防接種で使うワクチンは生ワクチン不活化ワクチンがあり、複数のワクチンを接種する場合、間隔をあけることが必要となります。同じ種類のワクチンを複数回接種する場合は、ワクチン毎に推奨される接種間隔が定められていますので、そのスケジュールに沿って接種しますが、異なった種類のワクチンを接種する場合は以下のように考えます。

 

 異なった種類のワクチンを接種する場合、不活化ワクチン接種の場合は6日以上(1週間以上)の間隔をあけなければなりません。これは一般的に副反応が出現するのは接種後24時間以内と考えられるため、6日間以上間隔が空いていれば、次の接種が可能と考えられるためです。

 

 一方、生ワクチン接種した場合は、27日以上(4週間以上)の間隔をあけて次のワクチンを接種しなければならないとされています。これは生ワクチンを1ヶ月以内の短い間隔で接種した場合、ワクチン同士で効果を弱めあう干渉現象が起こる可能性があることと、副反応が起こるかもしれない時期をはずすため4週間以上あけることとされています。

 

 したがって、接種するワクチンの順番はスケジュールに大きく影響すると考えられます。例えば、生ワクチンであるBCGと不活化ワクチンのヒブワクチンを受けることを考えるとき、ヒブワクチンを先に接種すると、1週間後にBCGを接種することができます。
しかし、BCGワクチンを先に接種すると4週間後まではヒブワクチンを接種できないことになってしまいます。したがって、なるべく不活化ワクチンを先に接種すると時間が短くて済むのでスケジュールが立てやすくなります。

 

 

ワクチンの同時接種

 あらかじめ混合されていない2種類以上のワクチンについて、医師が特に必要と認めた場合には、同時に(接種部位は別々に)接種を行うことができます。しかし、2011年3月に沈降7価肺炎球菌結合型ワクチン、ヒブワクチンを含む複数のワクチン同時接種後に乳幼児の死亡例が複数報告され、沈降7価肺炎球菌結合型ワクチンとヒブワクチンの接種を一時的に見合わせるということがあり、ワクチンの同時接種の安全性が問われる事例がありました。

 

 この問題について様々な検討が行われましたが、結果として両ワクチンの接種と死亡との間に直接的な明確な因果関係は認められず、同時接種に関する情報等から安全性上の懸念はないとされました。そのため、現在では以前と同様にワクチンの同時接種は行われています。日本小児学会からは同時接種に対する考え方が以下のように示されています。

 

<日本小児科学会の予防接種の同時接種に対する考え方>

 

 日本国内においては、2種類以上の予防接種を同時に同一の接種対象者に対して行う同時接種は、医師が特に必要と認めた場合に行うことができるとされています。一方、諸外国においては、同時接種は一般的に行われている医療行為です。特に乳児期においては、三種混合ワクチン、インフルエンザ菌b型(Hib)ワクチン、結合型肺炎球菌ワクチン、不活化ポリオワクチンなどの重要なワクチン接種が複数回必要です。これらのワクチン接種がようやく可能となった現在、日本の子どもたちをこれらのワクチンで予防できる病気(VPD:Vaccine Preventable Diseases)から確実に守るためには、必要なワクチンを適切な時期に適切な回数接種することが重要です。そのためには、日本国内において、同時接種をより一般的な医療行為として行っていく必要があります。

 

1)複数のワクチン(生ワクチンを含む)を同時に接種して、それぞれのワクチンに対する有効性について、お互いのワクチンによる干渉はありません。(例外として、コレラ+黄熱ワクチンでは効果が減弱することが知られていますが、現在、日本には接種可能なコレラワクチンはありません。)

 

2)複数のワクチン(生ワクチンを含む)を同時に接種して、それぞれのワクチンの有害事象、副反応の頻度が上がることはありません。

 

3)同時接種において、接種できるワクチン(生ワクチンを含む)の本数に原則制限はありません。また、その利点として、以下の事項があげられます。
1)各ワクチンの接種率が向上します。
2)子どもたちがワクチンで予防される疾患から早期に守られます。
3)保護者の経済的、時間的負担が軽減します。
4)医療者の時間的負担が軽減します。
以上より、日本小児科学会は、ワクチンの同時接種は、日本の子どもたちをワクチンで予防できる病気から守るために必要な医療行為であると考えます。

 

なお、同時接種を行う際、以下の点について留意する必要があります。
1)複数のワクチンを1つのシリンジに混ぜて接種してはなりません。
2)皮下接種部位の候補場所として、上腕外側ならびに大腿前外側があげられます。
3)上腕ならびに大腿の同側の近い部位に接種する際、接種部位の局所反応が出た場合に重ならないように少なくとも2.5cm以上あけます。

 

(日本小児科学会ホームページ「日本小児科学会の予防接種の同時接種に対する考え方」平成23年4月28日更新版より)

 

 


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