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小児の便秘症

便秘とは便が長い期間出ない、または便が出にくく腸に残ってしまう状態をいいます。便秘のために治療が必要となる状態を便秘症といいます。

 

小児の場合、排便の回数が週に3回より少なかったり、5日以上排便がない日が続くと便秘の可能性があります。毎日排便があっても、排便の際に痛みがあったり、量が少なすぎることもあり、この場合も便秘が疑われることがあります。便秘症は、早めに治療に取りかかった方が後の経過が良くなると考えられています。便秘症をそのままにして放置しておくと悪循環に陥ってしまい、だんだんと症状が悪化してしまうことが多くあります。

 

小児の場合に便秘が悪化していく悪循環を考えると以下のようになります。

 

便秘により便が硬くなると排便時に力んでもなかなか出なかったり、肛門が切れて出血したりすると、排便に苦痛を感じるようになります。

 

排便に苦痛が伴うようなると排便を我慢するようになり、排便の我慢を繰り返していると腸に便が残るような状態となります。大腸に便が残ると便の中の水分が大腸に吸収され、便はいっそう硬くなっていきます。すると、便がますます硬くなることで痛みが強くなり…、

 

つまり排便困難→痛み→我慢→便の硬化→排便困難→…というサイクルで悪循環に陥ってしまいます。また、便が腸に残る状態が続くと便意が鈍くなっていきますので、便が腸に残りやすい状態となり、便秘が続くことで便秘になりやすい環境になっていきます。早めに治療を行うことでこの悪循環を断ち切ることが求められます。

 

 

乳児の便秘症

生後1年未満である乳児の便秘症を定義づけるのは困難です。ほとんどの場合は3日に1回以上の便が出ますが、中には週に1回の排便で問題ない場合もあります。よって乳児の場合は個人差が大きいためにはっきりとした診断付けが難しいのですが、小児の場合と同様に1週間で便の回数が3回より少ないときに便秘症と考えるという意見が多くあります。

 

一方、便の出が悪くなることでも便秘症になりますが、乳児は排便がまだうまくできない状態にあるため、力んでいても排便をできない場合もあります。

 

この場合は綿棒などで肛門を刺激すると排便ができるようになることがあり、特に治療の必要はありません。このような場合は便秘症と区別して考えますが、便が硬くて出にくいとかお腹が張る状態が続く場合は便秘症と考えることがあります。

 

乳児の便秘の原因として、生まれつき腸や肛門に異常がある場合があります。この場合は専門家による検査を受けて診断してもらう必要がありますが、便秘の原因で最も多いものに、哺乳不足があります。

 

哺乳不足いわゆる水分が不足することによって、便秘となることがあります。哺乳瓶でミルクを与える場合は飲んでいる量を確認できますが、母乳を与えている場合はどれくらい飲んでいるかよく分りません。そのため、母乳を与えていても十分な量が足りていないこともありますので、乳児の様子を注意深く観察する必要があります。おっぱいの張りが乏しい、なかなか乳首を離そうとしない、授乳してもすぐに欲しがるなどの状態をみると母乳不足が推測されます。

 

他の方法として、授乳前後の体重測定で母乳の量をおおよそ掴むことができます。1~2週間ごとに体重の増加を観察することなどで母乳が足りているかどうかを確認することができます。

 

 

治療

生活習慣や食習慣などの改善を行っても便秘が改善せず、便秘が慢性的になると治療を行います。便が直腸にたまった状態であれば、浣腸下剤を使って排便を行います。排便により腸内を空にすることができれば、その状態を維持していく治療を行いますが、その方法論の1つに薬物療法があります。以下、薬物療法について記していきます。

 

<下剤>
①浸透圧性下剤
糖類                                                             塩類
・マルトース(マルツエキス)                            ・酸化マグネシウム(マグミットなど)
・ラクツロース(モニラックなど)                      ・水酸化マグネシウム(ミルマグ)

 

②刺激性下剤
・ピコスルファートナトリウム(ラキソベロンなど)
・センノシド(プルゼニドなど)

 

下剤は浸透圧性下剤刺激性下剤の2つに分けられ、小児の場合は浸透圧性下剤で治療をすることが多くあります。浸透圧性下剤は、便に直接作用して便をやわらかくする効果があります。浸透圧性下剤は糖類塩類がありますが、甘くて飲みやすいという点から糖類が乳幼児向けに多く使用されています。

 

浸透圧性下剤の効果には個人差があり、少なすぎると効果がなく、多すぎると下痢になるため、人によって量の調整が必要になります。量の調整は毎日服用して、一番硬い便のときでも比較的楽に排便できる程度に調整します。また、浸透圧性下剤を服用する際は水分を十分にとることで効果が得られやすいため、服用中は水分を十分に摂るようにします。

 

糖類下剤はマルトース(マルツエキス)ラクツロース(モニラックなど)があります。マルツエキスの主成分は麦芽糖で、浣腸や刺激性下剤と比べると効果は穏やかで自然な排便を促して便通を整えます。甘さがあり水あめのような形状なので乳幼児に飲みやすい剤形となっています。また、便秘時には食欲減退を起こしやすいですが、マルツエキスの服用で不足しがちな栄養を補給することにも役立ちます。

 

ラクツロースは経口投与されると未変化のまま大腸へ到達し、食物繊維と同じような排便効果を示し、同時に腸内細菌によって分解され生成した有機酸によって腸管運動を緩やかに亢進させる効果があります。
ラクツロースも原末自体は甘く、シロップ剤もあって乳幼児には服用しやすいのですが、原末の場合は1回あたりの服用量が多く、粉薬が苦手な場合は服用が難しいかもしれません。

 

浸透圧性下剤で症状が改善しない場合、刺激性下剤に変更するかもしくは追加することがあります。刺激性下剤ではピコスルファートナトリウム(ラキソベロン液)がよく使用されるます。

 

ラキソベロンは錠剤と内用液剤があり、乳幼児の場合は内用液剤を使用すること多いです。無味無臭で飲みやすいことと、滴数で量を容易に微調節できることが特徴で、数滴を水などで薄めて服用します。服用後効果は7~12時間で現れるとされているため、就寝前に服用します。比較的確実に効果を得ることができますが、飲み始めの量を調節することが必要です。量が多すぎると下痢になったり腹痛が出たりすることがあるため、初めて使用する場合は休みの前日に服用して効果をみるのが無難な使い方かもしれません。

 

現在有効と考えられる薬剤の効果については、便秘症の原因を取り除く効果があるわけでなく、便秘の症状を緩和する効果になります。したがって、自己判断で中止すると再発したり悪化する可能性があり、便秘になりやすい体質の場合は服用を継続した場合が良いと判断される場合もあります。便秘症の薬物治療では、減量や中止する場合については医師に判断を仰いでから、行う必要があります。

 


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