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糖尿病性急性合併症

Sick day(シックデイ)

糖尿病患者は、食事・運動療法さらには薬物治療を通して、血糖コントロールを行っていき、それは長期に渡っていきます。ふだんは十分に血糖コントロールができていても、感染症や消化器疾患、外傷、ストレスなどにより体調を崩してしまうと、血糖値が乱れやすくなってしまい、急性合併症を引き起こしてしまうことがあります。このような状態をSick day(シックデイ)といい、糖尿病患者にとって、通常よりも療養に対して十分な注意が必要となります。

 

シックデイでは、血糖コントロールが乱れやすいために注意が必要となります。例えば風邪などの感染症で具合が悪くなり、食事を食べれなくなったとします。すると患者は食事をとっていないから大丈夫だと考えてしまうために、患者が勝手に自己判断でインスリン注射を中止してしまうことがあります。結果的にそこから血糖コントロールが悪化し、著しい高血糖やアシドーシスを起こしてしまうというケースが多くあります。また、反対に食事量が極端に減少したにもかかわらず、いつもと同じ量のインスリンを使用すると低血糖症状を起こしてしまうこともあります。

 

こうした危険を避けるために、あらかじめシックデイのときの対応の原則に基づき、患者や家族への指導を徹底しておく必要があります。

 

 

Sick Day対応の原則

①適量の食物摂取

食欲のないときは、消化の良い食べ物(おかゆ、アイスクリームなど)を選び、絶食しないように指導する必要があります。炭水化物と水の摂取を優先し、 食欲のあるときは、血糖値が上がりやすくなっているので食べ過ぎに注意しなければなりません。

 

②血糖コントロール

インスリン治療中の患者には、食事が摂れていなくても、原則としてインスリン注射は継続していきます。血糖値を3~4時間ごとに自己測定し、血糖値の動きに注意を払うようにします。血糖値200mg/dLを超え、さらに上昇する傾向がみられたときは、その都度速効型または超速効型インスリンを追加する必要があります。

 

③脱水の予防

脱水を予防するためには水分や電解質を十分に摂取する必要があります。食欲がなくても水分は十分に摂るようにし、特に嘔吐や下痢が続く場合は、塩分などの電解質も失われやすいの中止が必要です。必要に応じて、点滴注射にて生理食塩水を補給したり、経口補水液(OS-1など)を摂るようにします。また、急激な体重減少は脱水が起きていることが疑われますので体重の推移には注意が必要です。

 

④医療機関の受診

症状が軽い場合は1日くらいは様子を見ても構いませんが、発熱・消化器症状が強いときは、必ず医療機関を受診するようにします。体温の推移が、感染症の状態を把握する手掛かりとなりますので、体温測定はこまめに行うべきでしょう。

 

⑤尿中ケトン体の測定

ケトアシドーシスの前兆をつかむことができるため、尿中ケトン体の測定を行うようにします。尿中ケトン体の測定は尿糖測定と同じような測定方法で行うことができる試験紙が市販されていますのでそれを利用すると良いでしょう。

 

ケトアシドーシスとは、血液中のケトン体が多くなるためにアシドーシスが起こる状態を言います。インスリンの作用が少ない場合炭水化物などの摂取が少ない場合、体内で脂肪が炭水化物の代わりにエネルギー源として利用されるようになります。すると肝臓で脂肪からケトン体が作られるようになり、血中のケトン体が多くなっていきます。このような状態をケトーシスと言います。ケトン体は酸性を示すため血液中で量が多くなると血液が酸性になっていきます。これをアシドーシスと言い、ケトン体が増えてアシドーシスとなる状態のことをケトアシドーシスと言います。ケトアシドーシスは吐気腹痛などがあり、悪化すると意識障害昏睡に至ることがあるため、注意が必要な状態です。ケトアシドーシスは、自己判断により勝手にインスリンを中止してしまった場合に起こりやすくなります。

 

 


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