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レストレスレッグス症候群

レストレスレッグス症候群(restless legs syndrome:RLS)は、むずむず脚症候群ともいい、安静時または夕方から夜間にかけて脚の異常感覚や不快感が起こりやすく、脚を動かしたくなってしまう疾患です。このとき脚を動かすと症状は和らぎます。

 

RLSの症状は不快感が非常に強く、足を動かさずにはいられない衝動と異常感覚が起こりますが、その表現は患者によって多種多様です。

 

「足がむずむずする」、「虫が這っているような感じがする」、「熱い、火照る」、「ピリピリして電気が流れる感じがする」、「水が流れる感じがする」など様々であり、小児の場合には「痛い」という表現をすることもあります。

 

このような不快感のためになかなか入眠できなかったり、途中で起きてしまうので睡眠障害を起こします。睡眠障害が起こると疲労が蓄積したり、注意力が散漫になったりして日常生活に支障をきたしやすい疾患です。

 

睡眠障害が続くとQOLの低下にとどまらず、うつ病になることもあり、最悪の場合は自殺にまでに及ぶ危険性もあるために早めに治療に取り組む必要があります。

 

 

RLSの原因

RLSの病態は遺伝的なもの、ドパミン神経の機能に異常をきたしているもの、中枢神経における鉄分不足による代謝障害などが原因と考えられていますが、未だに解明されていない部分が多くあります。

 

またRLSは、腎不全、鉄欠乏、脊髄症、糖尿病、末梢神経障害、パーキンソン病などの疾患に合併して二次的に起こるものもあります。特に腎不全で透析受けている者や妊娠期には多く起こるとされているため注意が必要です。有病率は男性に比べて女性で2倍程度高くなっています。

 

生活習慣がRLSの発症に関与していることもあります。肥満、低収入、喫煙、運動不足、少量のアルコール摂取および糖尿病とRLS発症は有意な相関を示すという報告もあることから、生活の不摂生の是正が治療に先立って行われることがあります。

 

そのほかにもRLSは薬物治療で服用中の薬剤で誘発されるケースがあり、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、三環系抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、抗ドパミン作用などが報告されています。

 

 

治療

非薬物療法と薬物療法があり、まずは非薬物療法から開始します。非薬物療法では睡眠衛生の見直し、喫煙やアルコール摂取などの誘発因子の改善、増悪させる薬剤(抗うつ薬、リチウム、抗ヒスタミン薬、抗精神病薬など)の減量または中止などが行われ、それで改善しない場合は薬物療法となります。

 

薬物療法では、できるだけ単剤とし、最小量から開始して増量していき必要最低量にとどめることを原則とします。治療中はRLS症状の増強(augmentation)反跳現象などの有無を定期的に評価する必要があります。

 

 

augmentationと反跳現象

治療開始から3〜4ヶ月が経過するとaugmentationや反跳現象がみられることがあります。augumentationとは、RLS症状の治療前よりRLS症状が増強してしまうために症状の出現が早くなったり、手足など他の部位への症状が拡大してしまう現象をいいます。

 

一方、反跳現象とは、薬効が切れた深夜または早朝に症状が再発することをいいます。

 

薬物療法中はこのような症状が出現することがありますので、定期的に評価することが重要になってきます。

 

 

RLSの薬物治療

RLSの薬物治療の基本的な方針として、ドパミン神経の機能障害の改善が行われます。使用される薬物としてドパミンアゴニストがあります。ドパミンアゴニストはドパミンを受け取る受容体に直接作用し、ドパミンと同じような振る舞いをし、ドパミン神経の改善を行います。ドパミン量が不足する疾患のパーキンソン病でも、ドパミンアゴニストを使用して治療を行います。

 

ドパミンアゴニスト以外には、ベンゾジアゼピン系薬や抗てんかん薬が使用されることがあります。症状によっては併用されることもあります。

 

現在のところ国内で保険適用があるのは、ドパミンアゴニストのペラミペキソールロチゴチン経皮吸収型製剤と抗てんかん薬のガバペンチンエナカルビルの3剤のみとなっています。

 

また鉄が欠乏しているとRLSを発症することもあります。血清フェリチン濃度が50ng/mL以下の場合は、鉄剤による補充が行われることがあり、ドパミンアゴニストなどと併用されることもあります。

 

 

ドパミンアゴニスト

ドパミンアゴニストはパーキンソン病などの疾患で使用されることが多い薬剤ですが、構造式のちがいによって、麦角系非麦角系に分類されます。

 

カバサールやペルマックスなどのような比較的古い薬剤が麦角系で、2000年代移行になって登場した薬剤が非麦角系となります。代表的な薬剤にビ・シフロール、レキップなどがあり、ニュープロパッチも非麦角系に含まれます。

 

以前麦角系はドパミンアゴニストの主流として使用されていましたが、心臓弁膜症、心肺後膜線維症等が報告されており、現在では非麦角系が主流となっています。

 

心臓弁膜症などは極めて稀な副作用ですが、発症する臓器が心臓であることもあり、発症してしまうと致死的な疾患となります。そのため、麦角系薬剤を使用する場合は心エコーなどで心臓弁膜症などの有無を確認し、その後も定期的な検査が行っていく必要があります。

 

2007年からは非麦角系が副作用のために使用不可もしくは効果が不十分なときに限り、麦角系を使用することとされています。一方、非麦角系においては、突発性睡眠、傾眠、幻覚が起こりやすいため注意が必要です。

 

RLSの治療において、非麦角系のビ・シフロール錠(一般名:プラミペキソール)が中等度から重度のRLSに有効性と安全性が確立され、現在多く使用されています。本剤は半減期が10時間と長いため、症状発現あるいは就寝する1〜3時間前に服用します。

 

その他にRLSの保険適用があるドパミンアゴニストにニュープロパッチ(一般名:ロチゴチン)があります。本剤は貼付剤となっているのが特徴で、肩、上腕部、腹部、側腹部、臀部、大腿部のいずれかの正常な皮膚に貼付して、24時間ごとに貼り替えて使用します。

 

麦角系のドパミンアゴニストにRLSの保険適用はありませんが、効果はあると考えられており、非麦角系で効果がなかったり不十分な場合に使用されることがあります。麦角系の薬剤はaugmentationや反跳現象が起こりにくいと考えられています。

 

 

抗てんかん薬

2012年1月に新規RLS治療薬としてガバペン(一般名:ガバペンチンエナカルビル)が承認されました。本剤は抗てんかん薬として使用されることもあります。従来のRLS治療薬であるドパミンアゴニストと比べ、長期連用によるaugumentationが少なく、不眠の改善、疼痛を緩和させる作用があります。

 

また、ゆっくり溶けていく製剤になっているので、効果はゆっくりと発現していきます。食後服用後5〜7時間に血中濃度が最高となるため、夕食後に服用することが望ましいとされています。

 

 

より良い薬物治療を行うために

RLSの薬物治療を効率的に行うためには、患者のRLS症状出現時刻に対応した時刻に服薬していく必要があります。薬剤の特性から、ドパミンアゴニストであれば1〜3時間前に服用するようにし、ガバペンであれば、夕食後に服用する必要があります。

 

効果が十分に得られないと安易な増量を行ったり、別の薬剤を併用しようとしますが、RLS治療は単剤で必要最低量にとどめることが原則となっています。ドパミンアゴニストに関しては、むやみに増強するとaugmentationを招きやすいので注意する必要があります。

 

したがって、薬剤の使用目的と特性を理解しておくことで、薬剤の特性と症状に合わせた使い方ができるようになり、効率的な薬物治療が行うことができるようになります。

 


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