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尿酸分解酵素薬(ラスブリカーゼ)の概要

ラスブリカーゼは高尿酸血症に対する治療薬ですが、生活習慣病の高尿酸血症に使用されることはなく、がん薬物療法に伴う腫瘍崩壊症候群による高尿酸血症の予防に対して投与されます。

 

既存の治療法(アロプリノールの予防投与や水分摂取など)では血中尿酸値の管理が不十分と考えられる場合に投与され、がん化学療法開始4~24時間前に投与を静注で開始します。

 

腫瘍崩壊症候群は、悪性腫瘍(特に白血球などの造血器腫瘍に多い)の治療により腫瘍細胞が急速に破壊され、腫瘍細胞中の成分が血中に大量に放出されることにより、身体全体の循環機能が障害され致死的な症状に至ることがあります。
細胞中の核酸が代謝され、高尿酸血症を呈する他、高K血症、高P血症、低Ca血症、アシドーシスなどの電解質異常や酸塩基異常を呈することがあります。

 

概要<腫瘍崩壊症候群>

抗がん剤の使用により腫瘍細胞が崩壊する。

腫瘍細胞中の核酸が血中に大量に放出される。

核酸が代謝され、大量の尿酸が産生され、高尿酸血症となる。

 

薬理作用

ラスブリカーゼは尿酸オキシダーゼを遺伝子組み換え技術を用いて製造した生物学的製剤です。
ラスブリカーゼは尿酸を水溶性のアラントインに分解し、体外へ排出することで高尿酸血症が改善します。
アラントインは水溶性が高いため、腎臓から容易に排泄され、既に産生されている尿酸も含めて、血清中の尿酸値を低下させることできます。

 

適応

がん薬物療法に伴う高尿酸血症

 

禁忌

赤血球酵素異常(G6PD欠損)

 

主な副作用

ショック、アナフィラキシー、溶血性貧血、メトヘモグロビン血症、肝障害

 

 

尿酸を酸化してアラントインと過酸化水素に分解する薬物はどれか。1つ選べ。
1 コルヒチン
2 アロプリノール
3 ラスブリカーゼ
4 ベンズブロマロン
5 プロベネシド

解答 3
1 × コルヒチンは、微小管を構成するタンパク質であるチューブリンに結合し、微小管形成を阻害するとともに、好中球の走化性因子(LTB4、IL−8)に対する反応性を低下させます。その結果、好中球の遊走を阻害し、痛風発作を抑制するため、痛風発作の緩解及び予防に用いられます。
2 × アロプリノールは、ヒポキサンチン及びキサンチンに競合的に拮抗してキサンチンオキシダーゼを阻害し、尿酸の生合成を抑制することで血中尿酸値を低下させます。また、本剤の主代謝物であるオキシプリノールには非競合的キサンチンオキシダーゼ阻害作用があります。
3 ○ ラスブリカーゼは、遺伝子組換え型尿酸オキシダーゼ製剤であり、血中の尿酸を酸化することで水溶性の高いアラントインと過酸化水素に分解し、血中尿酸値を低下させます。なお、本剤は、がん化学療法に伴う高尿酸血症に用いられます。
4 × ベンズブロマロンは、腎臓の近位尿細管管腔側に存在する尿酸トランスポーター (URAT1)を阻害し、尿酸の再吸収を選択的に阻害して尿酸の排泄を促進させ、血中尿酸値を低下させます。
5 × プロベネシドは、尿細管での尿酸の分泌及び再吸収を阻害しますが、治療量では尿酸の再吸収阻害作用がより強いため、尿酸の排泄を促進させ、血中尿酸値を低下させます。

 

 

 

痛風発作時に投与を開始する薬物として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
1 アロプリノール
2 ベンズブロマロン
3 フェブキソスタット
4 ナプロキセン
5 ラスブリカーゼ

解答 4
1 × アロプリノールはキサンチンオキシダーゼを阻害し、尿酸の生成を阻害します。痛風発作時に血清尿酸値を変動させると発作を増悪させるため、発作中は尿酸降下薬を開始しません。
2 × ベンズブロマロンは尿酸の尿細管再吸収を抑制し、尿酸の排泄を促進します。痛風発作時 に血清尿酸値を変動させると発作を増悪させるため、発作中は尿酸降下薬を開始しません。
3 × フェブキソスタットはキサンチンオキシダーゼを阻害し、尿酸の生成を阻害します。痛風 発作時に血清尿酸値を変動させると発作を増悪させるため、発作中は尿酸降下薬を開始しません。
4 ○ ナプロキセンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、シクロオキシゲナーゼ (COX)を阻害しプロスタグランジンの産生を抑制することで抗炎症作用を現します。痛風発作時には、本剤のような非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の短期間大量投与(NSAIDsパルス療法)が有効です。
5 × ラスブリカーゼは血中の尿酸をアラントインと過酸化水素に分解し、血中尿酸値を低下させます。本剤はがん化学療法に伴う高尿酸血症に適応がありますが、痛風発作には適応を有しません。

 

 

 

 高尿酸血症及び痛風治療薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 ラスブリカーゼは、尿酸を酸化し、水溶性の高いアラントインへと変換する。
2 フェブキソスタットは、プリン骨格を有するキサンチンオキシダーゼ阻害薬であり、尿酸の生合成を阻害する。
3 プロベネシドは、腎尿細管において尿酸の分泌には影響せず、尿酸の再吸収を阻害する。
4 ブコロームは、腎尿細管において尿酸の再吸収を阻害するほか、血管透過性を亢進する。
5 コルヒチンは、好中球の走化性因子に対する反応性を低下させ、炎症部位への好中球の遊走を抑制する。

解答 1・5
1 ○ ラスブリカーゼは、遺伝子組換え型尿酸オキシダーゼ製剤であり、尿酸を酸化することで 水溶性の高いアラントインへと変換し、尿酸よりも容易に尿中へ排泄させることで血中尿酸値を低下させるため、がん化学療法に伴う高尿酸血症に用いられます。
2 × フェブキソスタットは、非プリン型のキサンチンオキシダーゼ阻害薬であり、選択的にキ サンチンオキシダーゼを阻害することで尿酸の生合成を抑制し、血中尿酸値を低下させます。
3 × プロベネシドは、腎尿細管において尿酸の分泌及び再吸収を阻害しますが、再吸収阻害作 用が分泌阻害作用より強いため、尿酸排泄が促進され、血中尿酸値を低下させます。
4 × ブコロームは、腎尿細管において尿酸の再吸収を阻害して尿酸排泄を促進するほか、種々の起炎物質による血管透過性亢進を抑制することで抗炎症作用を示します。
5 ○ コルヒチンは、好中球の走化性因子(LTB4、IL−8)に対する反応性を著明に低下させ、炎 症部位への好中球の遊走を抑制するため、痛風発作の緩解及び予防に用いられます。


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