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骨粗鬆症の病態

骨粗鬆症は、「骨強度の低下を特徴とし、骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患」と定義されています。つまり骨粗鬆症になると骨量が減少して骨がスカスカになり、その結果骨が脆くなるために転倒を起こしやすくなる疾患です。

 

骨は硬くて丈夫で、一度作られるとそのままというイメージがありますが、実は新陳代謝を繰り返していて、日々骨は作りかえられています。古くなった骨を壊すことを骨吸収といい、その役割を破骨細胞が担っています。骨吸収は、骨からカルシウムが溶け出して、骨が壊されることを意味します。反対に、新しい骨を作ることを骨形成といい、この役割を骨芽細胞が担っています。このように骨は骨吸収と骨形成を繰り返しており、この代謝バランスのことを骨リモデリングといいます。

 

若いうちは、このバランスが保たれていますが、40歳以降になると骨吸収>骨形成となるために骨量が減少していきます。特に女性は骨吸収を抑制作用があるエストロゲンの分泌が少なくなってしまうために、閉経後10年間で骨吸収が著しく亢進すると言われています。閉経後の女性は骨量が減少しやすくなるため特に注意が必要となります。

 

先に述べたように、骨粗鬆症になると骨折のリスクが高まります。一度骨折すると、骨密度が同じであっても、同じ場所で繰り返して骨折しやすくなり、他の箇所の骨折も起こりやすくなります。

 

また、高齢者が骨折すると歩行が困難になり、日常生活のあらゆる面が制限されます。健康な時には問題なく行えていた買い物やトイレなどがゆっくりとしか行えなくなったり、介助を必要とする場合も出てきます。また、一回の骨折が次の骨折を繰り返す負の連鎖を引き起こす危険性が高くなり、寝たきりとなる可能性も出てきます。寝たきりになると生命予後も悪化することにもなりかねないため注意が必要です。このように骨粗鬆症では、いかに骨折をさせないようにしていくかがカギとなります。

 

 

骨粗鬆症の薬物治療

前述のように骨折は、本人の生活全般および生命予後に大きく関わっているおり、骨折を起こしやすくなる骨粗鬆症の治療目的は、骨折をいかに防止するかということになります。そのためには骨密度を上昇させることと骨の質を改善することになります。方法論としては骨吸収を行う破骨細胞の働きを抑制することまたは骨形成を促進する骨芽細胞を活性化させることになります。

 

現在の治療薬は、年齢と骨折リスクを考慮して行われます。例えば、高齢者に対しては大腿骨骨折防止効果のあるビスフォスフォネート製剤が第一選択薬で、若年女性に対しては選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)が第一選択薬として使用されています。これらの薬剤は骨吸収を抑制する薬剤ですが、さらに年齢が高く、骨折の既往があって70歳を超えている人に対しては、骨形成を促進する副甲状腺ホルモンのテリパラチドを使用することがあります。

 

骨折リスクについては、FRAXTMいう骨折リスクの評価票が使用されることがあります。FRAXTMとはWHOが開発した今後10年以内に発生する骨折のリスクを算出する評価票です。FRAXTMの結果次第では、現段階では健康な状態にあっても、将来的な骨折予防と骨の健康維持という観点から薬物治療が開始されることもあります。

 

<FRAXTMによる質問項目>

  • 年齢
  • 性別
  • 体重
  • 骨折歴の有無
  • 両親の大腿骨近位部骨折歴の有無
  • 現在の喫煙の有無
  • 糖質コルチコイドの経口投与を受けているかどうか
  • 関節リウマチの確定診断がなされているかどうか
  • 骨粗鬆症と強い関係がある疾患があるかどうか(Ⅰ型糖尿病や慢性肝疾患など)
  • 毎日3単位以上のアルコールを摂取しているかどうか
  • 骨密度(BMD)

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