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インフルエンザ

毎年冬場になるとインフルエンザが流行します。インフルエンザの原因はインフルエンザウイルスで感染後1~3日の潜伏期間ののちに高熱や全身症状が現われます。

 

風邪ともよく似たような症状ですが、インフルエンザの場合、症状が急激に激しく出るのが特徴的で、さらに感染性が強く、あっという間に感染を拡大してしまいます。

 

<主な症状>
突然の高熱(39~40℃)                            

全身倦怠感(体がだるい)

頭が痛い、のどが痛い                                                              

関節痛(節々が痛い)、筋肉痛、腰痛
吐き気

 

インフルエンザの診断

インフルエンザの診断には迅速診断キットが広く用いられています。
迅速診断キットは鼻からの吸入液や拭い液などを採取し、15分以内に結果を得ることができます。

 

しかし、感度は100%ではなく、検査の手法が下手な場合はウイルスを検出できないことがあります。また、症状発現初期の場合はウイルス量が検出できる量以下の場合もあり、陰性と出ることがあるため注意が必要です。

 

 

インフルエンザの排出量は症状発現後24~48時間で最大となると言われています。ウイルスの量が増えるとその分症状も悪化しますので、ウイルス量が最大になる前の48時間以内に、治療薬を服用することが推奨されています。

 

 

インフルエンザの治療

インフルエンザの治療の基本は、十分な睡眠と安静そして水分補給となります。

 

インフルエンザ治療薬の服用によって発熱期間は1~2日間短縮できるとも言われおり、非常に効果的です。

 

しかしながら、現在の治療薬はウイルス量が増加させないようにする効果であり、直接的にウイルスを殺す効果はありません。ウイルスを殺すのは、人間に備わっている免疫機能となるため、十分な睡眠安静により免疫力を確保する必要があります。

 

インフルエンザにかかると人によっては40℃に近い熱が出ることがあります。高熱が続くのは好ましい状態ではなく、インフルエンザ脳症や異常行動を引き起こすおそれがあります。

 

そのため、解熱剤の使用によって体温をコントロールする必要性があります。解熱剤としてアセトアミノフェン製剤カロナール、アルピニー、アンヒバなど)が安全に使用でき、汎用されています。

 

一方、メフェナム酸(ポンタールなど)やジクロフェナクナトリウム製剤(ボルタレンなど)は脳症を引き起こす危険性が報告されていることから投与されないことが適当とされています。

 

またインフルエンザが合併症を引き起こすことがあり、インフルエンザ脳症をはじめとして肺炎など死に至る重大な合併症もあります。

 

特に小児の場合は中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎などを起こしやすいため、抗生剤が併用されることがあります。

 

 

インフルエンザの治療薬

インフルエンザの治療にはタミフル、イナビル、リレンザ、ラピアクタの4つの薬剤が現在使用されています。

 

タミフルは経口薬でイナビルとリレンザは吸入薬となっており、ラピアクタは点滴静注薬です。

 

どの薬剤もインフルエンザウイルスが増殖するのに必要な酵素であるノイラミニダーゼを阻害することで効果を示します。

 

 

これまでタミフルとリレンザが治療薬のメインとなっていましたが、イナビルやラピアクタの登場により薬剤選択の幅が広がりました。

 

コンプライアンスが悪い場合は、1回の服用で完結するイナビルが適しています。

 

また、嘔吐や下痢の症状がひどい場合、経口薬や吸入薬は確実に服用できない可能性があるため、注射薬を使用します。

 

呼吸器疾患を有する場合、吸入薬は不向きのため、経口薬や注射薬を使用します。

 

このようにインフルエンザの症状と患者背景の違いなどによって剤型を使い分ける必要があります。

 

 

1) タミフル(成分名:オセルタミビル)
インフルエンザのスタンダードな治療薬です。

 

剤型にカプセル剤(75mg含有)とドライシロップ(30mg/g含有)があり、成人には1日2回、1回1カプセルを5日間服用します。

 

小児にはドライシロップを投与し、体重によって用量を調節します。1日にあたり体重1kgにつき、成分量が4mgが必要となります。

 

体重10kgの小児の場合、必要量は1日あたり40mgとなり、ドライシロップを1.33g服用する計算になります。ドライシロップもカプセル剤同様に1日に2回に分けて、5日間服用します。

   

 

インフルエンザウイルスは症状発現後24~48時間にウイルス量が最大になるといわれているため、症状が出てから48時間以内に服用することで十分な効果が得られるとされています。

 

タミフルの副作用に異常行動・言動が疑われるとして10代の患者への投与は慎重投与となっています。

 

インフルエンザ合併症にインフルエンザ脳症があり、脳症の症状で異常行動・言動を起こすことがあります。副作用で起こったとされる異常行動・言動がタミフルによるものなのかインフルエンザ脳症によるものなのかは今のところはっきりと分っていません。

 

今のところ10代患者への投与は原則として行わないこととされていますが、タミフルの服用があってもなくても、発熱が続くうちは保護者の注意深い観察が必要です。

 

タミフルの他の副作用に嘔吐や下痢が報告されていますが、今のところ重大な副作用は報告されていません。

 

 

 

2) リレンザ(成分名:ザナミビル)
タミフルと同様にインフルエンザウイルスに対するスタンダードな治療薬で、タミフルとの違いは吸入薬であることです。

 

以前タミフルの副作用で異常行動の報告されたとき、切り替え薬としてリレンザが使われました。

 

薬局で薬を受け取るとき、5日分処方で円盤状の吸入剤を5枚と吸入器を一つ受け取ります。吸入剤を自分で吸入器にセットして服用する形になります。
   

 

服用方法は1日2回1回10mgを5日間吸入します。吸入するブリスター1個の中に5mgが含有されており、1回につき2ブリスターを使用します。

 

円盤状の吸入剤には4ブリスターが封入されているため、1日につき1枚使用します。なお、成分は湿気に弱いために注意が必要です。

 

リレンザは吸入投与によって、インフルエンザウイルスの主要な感染・増殖部位である気道粘膜上皮細胞に直ちに作用することが可能です。さらに、経口薬と比較して全身への影響が少ないとされています。

 

リレンザは自分で薬をセットしてから吸入しなければなりません。

 

吸入までの手順は慣れてしまえば簡単な操作なのですが、どうしても小児や老人が行うのは難があります。適切に吸入することがリレンザによる治療を左右することになります。

 

したがって、吸入の手技に不安がある場合はリレンザを選択すべきではありません。

 

また、気管支喘息や慢性呼吸器疾患のある患者にリレンザを投与すると、呼吸機能が低下しているため、気管支や肺などの病巣まで十分に薬が届かない可能性があります。また、インフルエンザウイルス感染症により気道が過敏になっているために喘息を誘発しやしことが報告されています。

 

そのため、呼吸器疾患を有する場合は吸入剤よりもタミフルやラピアクタの血中から病巣へ移行する薬剤を選択するべきです。

 

 

現在のところ重大な副作用は報告されていませんが、タミフルと同様に嘔吐や下痢が報告されているほか、発疹、蕁麻疹、顔面浮腫などの報告もあります。

 

リレンザは異常行動を起こすことはないと考えられていますが、やはり服用後は十分な保護者の観察が必要です。

 

 

 

3) イナビル(成分名:ラニナビル)
イナビルは吸入剤で、吸入後にインフルエンザの増殖部位である呼吸器に長期間にわたって貯留して作用を示します。そのため、イナビルは1回で治療を完結することができます。

 

この特徴がイナビルの最大の利点であり、服薬指導とともに服用が終了させることができます。

 

タミフルやリレンザの場合、5日間続けて服用を行う必要性があり、途中で中止してしまうと再発の危険性や周りに感染を引き起こしてしまう危険性があります。

 

このように服薬コンプライアンスが悪い患者に対してイナビルは有効です。さらにイナビルは薬剤充填の必要性がないため、吸入のみの操作を行うことで服薬が完了します。

 

リレンザの吸入手技に不安がある場合はイナビルを選択してもよいかもしれません。
 

 

イナビルは吸入粉末剤で1容器につき成分が20mg入っています。成人の場合(10歳以上)は1日40mg分(2容器)を単回吸入し、10歳未満は1日20mg分(1容器)を単回吸入します。

 

イナビルはタミフルが効かないインフルエンザウイルスにも効果があると言われています。
最近、薬剤耐性ウイルスの出現が懸念されており、イナビルの有効性が期待されています。

 

また予防効果のエビデンスも得られており、2013年12月より予防投与も可能となりました。

 

リレンザ同様に吸入薬であることから呼吸器疾患をもつ患者への投与は不向きです。気管支喘息の発作を誘発するおそれもあるため注意が必要です。

 

副作用は下痢やめまいや蕁麻疹などの報告があります。

 

 

 

4) ラピアクタ(成分名:ペラミビル)
唯一の注射剤です。これまでの3剤と違い、自分で服用するのではなく、医療機関等で点滴によって投与されます。

 

ラピアクタの利点は内服や吸入が困難な患者にも投与が可能なことです。

 

嘔吐や下痢が続いている場合は経口薬や吸入薬ではきちんと吸収されていない可能性がありますが、ラピアクタは点滴静注により確実に血中へ移行することができ、病巣まで到達することができます。また、服薬忘れの心配もなく、治療を完結することができることも有利な点と言えます。
  

 

ラピアクタは点滴静注用バッグとバイアル製剤が販売されており、通常成人には300mgを15分以上かけて単回点滴静注します。合併症や重症化するおそれのある場合は、1日1回600mgを15分以上かけて単回点滴静注し、症状に応じて連日反復投与でき、年齢や症状に応じて適宜減量します。

 

小児の場合、1日1回10mg/kgを15分以上かけて単回点滴静注し、症状に応じて連日反復投与でき、上限は1回量として600mgまでとされています。

 

ラピアクタの副作用には下痢や悪心のほか、重大な副作用としてショック症状、白血球減少、好中球減少などが報告されています。また、腎機能障害のある患者への投与は減量が必要とされています。

 

 

 

服薬のポイント
  • 現在国内で使用できる4剤は全てA型にもB型に効果があり、有効性についてもあまり変わりません。したがって、薬を選択する上で、考慮すべきことは薬剤の剤型が最も重要になります。

 

  • 症状が軽くなっても、指示された間は続けて服用しなければいけません。途中で中止してしまうと、症状は改善していてもウイルス量が十分に減っておらず再発するおそれとがあり、周囲にも感染を広げる危険性があります。

 

  • 解熱剤を使用する場合はアセトアミノフェン製剤(カロナール、アンヒバなど)を使用します。ボルタレンやポンタールは脳症を引き起こす危険性があるため併用してはいけません。

 

  • リレンザ、イナビルの使用おいて、吸入のやり方が治療効果に大きく影響するため、吸入方法について十分理解しておく必要があります。理解度が十分でなければ、経口投与が妥当です。


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