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C型肝炎

C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)が感染することにより発症するウイルス性肝炎の1つです。肝炎とは肝臓に炎症が起き、その炎症が続くことで肝細胞が破壊され、肝細胞が機能できなくなる状態をいいます。C型肝炎は持続的に感染し、次第に肝臓が線維化していき、肝硬変肝がんへと移行していきます。

 

ウイルス性肝炎はA型、B型、C型、D型、E型の5種類がありますが、B型とC型の肝炎ウイルスに感染した患者は多く、両方を合わせると300万人を越えていると言われています。

 

肝炎はウイルス性肝炎以外にアルコールの長期にわたる多量摂取や薬剤が原因で起こることがありますが、日本における慢性肝炎疾患の原因の約2割がB型肝炎ウイルス(HBV)感染であり、約7割がC型肝炎ウイルス感染によるものとなっています。

 

HBVに感染すると、急性肝炎を呈することが多くあります。急性肝炎では急速に肝細胞が破壊されるため、発熱、全身倦怠感、黄疸などの症状を起こしますが、その後ウイルスは自然に排除されて治癒することが多く、慢性肝炎に移行する頻度は1%以下となっています。

 

一方、HCVに感染した場合は、慢性肝炎に移行する頻度が50~70%とHCVと比べると高率になっています。C型肝炎は治療せずに放置しておくと、10~30年を経過して、肝硬変を経て肝がんを起こしやすくなります。肝硬変とは肝細胞が繊維化し硬くなり、肝細胞が機能しなくなった状態をいいます。

 

また、肝がんへ移行する率は男性で高く、また高齢になるに従いリスクが増大すると言われています。実際に肝がんの約8割はC型肝炎ウイルス由来であるとされています。

 

 

HCVについて

HCVは、遺伝子の違いによっていくつかのタイプに分類されますが、これをジェノタイプといいます。ジェノタイプは人種によって偏りがあり、薬剤の治療効果に大きく影響することがあります。

 

日本で多いHCVのジェノタイプは1型と2型で、1型は1a,1bに、2型は2a,2bのタイプに分類されます。日本人のHCV感染者数は150万~200万人ですが、そのうち約7割がジェノタイプ1bで最も多く、2aが約2割で2bが約1割とされています。

 

また、1b型の中でウイルス量の多いタイプは、日本人のHCV感染者の約半数を占めています。ジェノタイプ1b型でウイルス量が多いタイプは、難治性を示し、インターフェロン(IFN)が効きにくい性質があります。当初のIFN単独療法ではこのタイプのSVR率は約2~5%しかありませんでした。

 

ウイルス学的著効(SVR:sustained virological response)

治療終了後もHCV-RNA陰性を維持している状態のことをいいます。治療終了後12週間HCV-RNA陰性を維持している場合はSVR12、24週間維持している場合はSVR24というように表記します。

 

ジェノタイプ2はジェノタイプ1に比べて治療に対する反応性が良好とされていて、ジェノタイプ1の人と同じ薬物治療をしても、ジェノタイプ2においてより良い効果を得ることができます。実際、ジェノタイプ2においてPEG-IFNまたはIFNβとリバビリンの24週間併用療法により、約90%がSVRを達成することができると報告されています。

 

 

HCVの構造とDAA

HCVは血液を介して伝播することが多い疾患です。かつては輸血感染することがありましたが、ディスポーザブル注射器の普及により現在は輸血感染することはなく、針刺し事故や刺青、覚醒剤注射の回し打ちなどによる感染が多くなっています。また、性行為や母子感染は少ないと考えられています。

 

近年の研究により、HCVの遺伝子の蛋白構造と働きが明らかになってきました。HCVの遺伝子にコードされる蛋白のうちNS3、NS4A、NS5A、NS5BはHCVが肝細胞の中で増殖するために必要な蛋白であることが明らかになりました。

 

そこでこれらの蛋白質の活性を阻害することで、HCVの増殖を抑えることができるのではないかとの考えから、これらの蛋白を標的とした治療薬が開発されています。このようなウイルスの増殖に必須の蛋白質を阻害する作用をもつ薬剤のことを直接作用型抗ウイルス薬(DAA:direct acting antivirals)といいます。

 

DAAはNS3/4Aプロテアーゼ阻害薬、NS5A複製複合体阻害薬があり、開発中の薬剤にはNS5Bポリメラーゼ阻害薬もあります。DAAの利点は、IFN治療と比較してSVRが格段に向上していることと経口剤で治療が可能であることです。

 

これまでIFN治療がHCV治療の中心でしたが、現在はDAAがそれに取って代わるようになり、IFNを使用しないIFNフリー治療が可能となりました。IFNは注射剤であることやインフルエンザ様の副作用が発現することから治療継続が困難になることも多くあるため、治療効果が良好かつ経口剤であることは患者にとって大きなメリットとなります。

 

今後DAAの臨床応用が進むことが予想され、それに伴ってC型肝炎の治療法も改良が進んでいくと考えられます。C型肝炎の病態とDAAの作用を理解して、薬物治療を適切に行うことができるよう知識を備えておきましょう。

 


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