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麻疹(はしか)

麻疹(はしか)は麻疹ウイルスによって起こる感染症です。感染力が非常に強く、1人の感染者から周囲の感受性のある人に対して、12〜18人に感染するとまで言われています。

 

はしかは小児の感染症の中では臨床的に重篤な感染症です。この理由は、はしかに感染すると発熱、咳、発疹などの症状が現われますが、重篤な合併症を併発しやすく、場合によっては命に関わることもあるためです。昔、はしかはほとんどの人が小児期に罹患し、回復するまでは命が保証されないと感じられたことから「命定め病気」と呼ばれたこともありました。現在はしかは定期接種になり症例数は少なくなりましたが、新たな問題も出てきています。

 

麻疹ウイルスは空気感染、飛沫感染、接触感染など様々な経路から感染します。1〜5歳に感染することが多く、母乳から抗体を得られている生後4〜6ヶ月は感染が防御されています。

 

麻疹ウイルスは気道粘膜や眼粘膜から侵入すると、10〜12日程度の潜伏期間があり、突然発熱が起こり約1週間続きます。発症24時間以内に咳、鼻汁、目やに、眼球結膜充血などの症状が発現し、Koplik斑とよばれる粟粒大の白斑が頬粘膜に出現を認めます。Koplik斑は症例の90%以上で確認できるため、はしかを診断する上で重要な所見となります。発熱後、いったん熱が下がりますが、再度発熱します。
 発熱すると同時に発疹が出現します。発疹は耳の後、顔面などから出現し始め、体幹や四肢末端にまで広がっていきます。発疹が全身に広がるまで、高熱が続きます。発疹は鮮紅色の紅斑でやや隆起しており、次第に互いに融合して色調は暗褐色となっていきます。
 発症後7〜9日経過すると、熱は下がり回復へ向かいます。発疹は褐色の色素沈着を残して消退していきます。はしかに感染することで免疫を得ることができます。感染によって得られた免疫は一生に渡って免疫を得られるとされています。

 

 

はしかの合併症

はしかの合併症には、中耳炎肺炎があります。肺炎の合併は約6%と高く、はしかの主な死亡原因となります。麻疹ウイルスによるウイルス性ものと細菌の二次感染によるものがありますが、細菌性の場合は、原因の細菌に対する抗菌薬の投与を行います。このとき、入院治療が原則となります。

 

麻疹ウイルスによる脳炎を合併することもあります。脳炎を起こすと死亡率が高く、中枢神経系の後遺症も残ることが多くあります。また、罹患後7〜10年の期間を経て亜急性硬化性全脳炎(SSPE)を発症することもあります。SSPEは麻疹ウイルスによりゆっくりと進行する脳炎です。極めてまれな症例ですが、有効な治療法が存在せず、予後も不良とされています。

 

その他に、重篤な合併症として失明が古くからよく知られています。ビタミンAが治療に使用されることがありますが、投与量として1日の通常用量の100〜200倍もの高用量が必要となります。頭蓋内圧亢進の副作用などに注意する必要があります。今のところ国内では、はしかに罹患したときのビタミンAの投与は一般化されていません。

 

 

予防

はしかは疾患の重篤性や抗ウイルス薬が存在しないことから、ワクチンによってはしかに罹らないようにすることが最も重要になります。

 

麻疹ワクチンは定期接種となっており、現在では生後12ヶ月を過ぎたなるべく早い時期に1回目、小学校入学前の5〜6歳時に2回目の合計2回麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)の予防接種が行われています。

 

予防接種の普及により流行の規模が小さくなり、感染する機会は少なくなりました。そのため、自然に感染する人やウイルスに晒されて免疫が強化される機会も減少しました。自然感染により得られた免疫は一生続くと考えられていますが、ワクチンによって得られた免疫は時間が経過すると抗体価が減少するため、軽症ではありますがはしかに罹患することがあります。予防接種によって得られる有効期間は10年とも言われています。そのため、幼児期と小学校入学前の2回ワクチン接種を行うことで抗体価の再上昇を図っています。

 

2007年にはしかの流行感染が起こりました。感染者の多くは大学生で成人でした。この流行の要因として、定期接種に移行期でワクチンを受けていない人がいたことがありますが、他にもワクチンを受けても免疫が不十分であったこと、ワクチンをうけたもののウイルスに晒される機会がないため免疫が低下して感染してしまったことが考えられました。

 

このように定期接種移行期でワクチン接種を受けていない人の初感染やワクチン接種歴があっても再感染する危険性があることが問題となっています。成人で罹患した場合は重症化することが多く、合併症も引き起こしやすくなります。そのため、これまではしかに罹患したかどうかワクチン接種を行ったかどうかの確認が必要になります。あいまいな記憶を頼りにするのではなく、確固たる証拠を確認する必要があります。場合によっては、麻疹ウイルスに対する抗体検査を行う必要があります。

 

このように、はしかは予防の重要性が強い疾患です。そのためには、ワクチンに対する正しい知識を持ち合わせておく必要があります。

 

 

治療

今のところ麻疹ウイルスに特異的に効く抗ウイルス薬はないため、対症療法が基本となります。水分と栄養補給、解熱剤、咳止めなどの投与を行い、細菌感染症の合併症には抗菌薬の投与を行います。

 

はしかの患者との接触後72時間以内であれば、緊急ワクチン接種を行うことで発症を予防または軽症化できることがあります。72時間を越えていても6日以内であれば、免疫グロブリン投与することで同様の効果が得られることがあります。しかし、免疫グロブリンは血液製剤ですので、投与については慎重に行われなくてはなりません。ワクチン接種を行っていない乳幼児免疫不全者などに対する投与に限られます。

 

合併症であるSSPEについては、イノシンプラノベクス(イソプリノシン錠)が投与される場合があります。イソプリノシン錠の適用はSSPE患者における生存期間の延長だけとなっています。イソプリノシン錠は抗ウイルス作用免疫を活性化させる作用により効果を示しますが、副作用として尿酸値を上昇させてしまうことが多くあります。

 

このようにはしかは基本が対症療法で他の方法も使用できるケースが限られているため、予防こそが最大の治療法と考えざるを得ません。はしかに対する知識を持ち、確実に予防をすることができていけば、根絶は可能になると考えられます。

 


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