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はやり目(流行性角結膜炎) epidemickeratoconjunctivitis,EKC

EKCとは?

結膜は、眼の表面を覆っている透明な粘膜で、黒目のふちからまぶたの裏までをおおっています。結膜の働きは、眼球とまぶたをつなぎ合わせて動きを助ける働きや異物が外部から侵入するのを防ぐ働きがあります。角膜は、いわゆる黒目の部分を指し、眼が外の世界とつながる窓のような存在で、光を屈折させるレンズのような働きや異物の侵入を防ぐ役割を担っています。

 

はやり目(EKC)はウイルスが感染することで結膜または角膜に炎症を起こすため、角結膜炎と表現されます。主な症状として、眼が充血して白目の部分が赤くなり、目やにが多く出るようになります。

 

 

EKCの主な原因ウイルスはアデノウイルスとされています。アデノウイルスは51(または49)の血清型に分類されており、8、19、37型がEKCの原因になることが確認されています。同じ血清型のウイルスには2度感染することはありませんが、血清型が異なる場合はその都度感染する可能性があります。一方、夏季に流行するプール熱(咽頭結膜炎)の原因もアデノウイルスであり、多くの場合は3型が原因とされています。

 

EKCの主な感染経路はウイルスがついた手で直接目をこすることで感染していく接触感染です。そのため、身の回りに感染者がいなくても電車のつり革やドアノブなどを介して感染することがあります。アデノウイルスは感染力が非常に強いので、集団生活などを行っている児童は学校保健法で出席停止が義務付けられており、社会人においても職場で同僚に感染させることも多いので出勤停止となるケースがほとんどです。

 

私の家族も2番目の子供(当時1歳)が感染し、妻→私→1番目の子供と4人暮らしだった家族全員にあっという間に拡がってしまい、1週間程度4人で外出もできず家に軟禁状態となってしまいました。私の場合、発生元が幼児だったため、ウイルスの付着した手でベタベタと触ってしまったことで感染を防げなかったことが不運でした。

 

アデノウイルスはなかなか失活しにくいウイルスであり、消毒剤に対して抵抗性を示します。消毒剤の中でも塩素消毒が有効とされていますが、塩素系消毒剤は粘膜刺激性や金属腐食性などがあるため手や眼の消毒には不向きのため、感染者が使用したタオルや汚物の消毒には使用されることがあります。エタノールも効果があるとされていますが、完全に除去するためには長時間を要すると考えられています。したがって、アデノウイルスに感染しないようにするためには石鹸などを用いた手洗いが中心となり、手洗い後に消毒用アルコールを使用することで追加効果を得ていくということになります。

 

 

EKCの症状は?

EKCの症状として、充血、まぶたのうらにブツブツができて目やにや涙が増えるなどが主なものとして挙げられます。人によって感じ方は異なりますが、かゆみ、しょぼしょぼ感、ゴロゴロ感
まぶしさを感じることがあります。また重症になると、まぶたの腫れ、発熱、耳前リンパの腫れなどを起こすことがある他、まぶたの裏の結膜に偽膜という白い膜ができることがあり、これが眼球の結膜と癒着をおこすことがあります。

 

EKCは同じウイルスに感染しても同じ症状が同じ程度に出る訳ではありません。症状の発現は個人差が大きく、軽症で済む人も重症になる人もいます。潜伏期間は5日~2週間とされていますが、どのくらいのウイルス量で感染が成立するかは今の所は不明であるため、自己診断はせずに眼科医の指導を仰ぐ必要があります。

 

結膜炎の場合だと目やにや充血が消失するまで1週間から10日程度かかるとされていますが、今のところこれを早める方法はありません。角膜炎になると症状が改善するまで数ヶ月~1年にも及ぶことがあります。

 

EKCの治療法

EKCの原因ウイルスを直接標的とした治療薬やワクチンは今のところまだ開発されておらず、自然治癒力により治癒していかなくてはなりません。そのため、十分な休養と栄養を摂ることが基本となります。

 

EKCで眼科を受診すると、抗菌薬ステロイド剤の目薬を処方されますが、残念ながらこれらの薬物は補助的な薬物療法としての位置付けであり、直接の抗ウイルス作用をもっているわけではありません。しかし、抗菌薬は傷ついた眼の表面からの2次感染を防ぎ、ステロイド剤は炎症を抑えて重症化するのを防ぐことができます。

 

2種類の点眼薬を使用する場合、はじめに点眼した薬剤が後から点眼した薬剤によって追い出されてしまい十分な効果が得られないことがあるため、5分間以上の間隔をあけなくてはなりません。

 

点眼薬を使用する順番は、通常はよく効かせたい方を最後に使用します。また、使用する前によく振らなければならないような水溶性懸濁剤は吸収に時間がかかるために後から使用します。この場合、ステロイド剤の点眼薬がそれに該当します。しかし、症状や医師の見解によっては優先する項目が異なっていたり、医師の経験則などにより順番が異なる場合があるため、あくまで医師の指示に従って点眼を行う必要があります。

 

 

 

 

 

 


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