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乾性角結膜炎(ドライアイ)

涙液は角膜表面を覆い、外界の刺激を保護する役割や眼のなめらかな曲面を形成して視機能を保つ役割を持っています。何らかの原因により涙液量の不足、もしくは涙液の質の異常が起こることによって、涙液が蒸発しやすくなるために、角膜保護作用が低下して角膜障害が起こることを乾性角結膜炎(ドライアイ)といいます。ドライアイにより、眼の疲れ、不快感(異物感、乾燥)、充血、眼痛、かすみ、視力低下などの症状が起こります。

 

ドライアイでは、涙液が不十分な状態となっていますが、この状態は涙液の分泌量と蒸発量のバランスが崩れている状態となっています。涙液が十分に分泌されないと涙液量は不足しますし、供給量が十分であっても蒸発量が多くなり過ぎると涙液量は不足する状態となります。

 

涙の分泌量の減少と原因となるのは、加齢やシェーグレン症候群の免疫疾患などによるものがあり、涙の蒸発量の増加する原因となるのは、環境因子(パソコン、エアコン、コンタクトレンズの着用)などが挙げられます。

 

一般的なドライアイは環境因子によることが多く、近年はVDT作業を行うことが多く、ドライアイの原因となることが多くあります。VDT作業とはディスプレイを見ながら行う作業のことを指し、いわゆるパソコン作業のことを指します。最近ではスマートフォンが普及しており、インターネットを閲覧してしまう機会が多くなっていることから、現代病の1つと言えるのではないでしょうか。

 

 

CLの着用でドライアイが起こるメカニズム

コンタクトレンズを着用している方で、ドライアイを訴える方が多くいらっしゃいますが、使用コンタクトレンズがハードかソフトによってドライアイが起こるメカニズムが異なってきます。

 

ハードコンタクレンズによるドライアイ

ハードコンタクトレンズは水を含まない素材でできています。ハードコンタクトレンズ自体は水分を吸収しませんので、涙は毛細血管現象によってレンズの下側に引き寄せられて、レンズの表面の涙の層が薄くなるために、眼の表面が乾燥してドライアイを生じます。

 

ソフトコンタクトレンズによるドライアイ

ソフトコンタクトレンズは水を含む素材でできているため、涙液がレンズに引き込まれることで涙液量が減り、レンズの表面が露出するようになります。さらには眼表面から水分が蒸発しやすくなるため、結果として、レンズの縁と角膜の間で摩擦を生じ、傷がつくことでドライアイを生じます。

 

 

ドライアイの治療

眼の表面は、涙液層表面上皮細胞から構成されていて、涙液層は油層水層の二層構造であると考えられています。油層が外側(外界側)、水層が内側となっていて、油層は水層側の水分が蒸発しにくいように作用しています。一方、液層は眼の表面の水分を保つ働きがありますが、液層中には水分と糖タンパク質であるムチンが分布していて、涙液をサラサラとした水分というよりもどろっとしたゲル状に保っています。ムチンはまばたきのときに結膜と角膜との間に起こる摩擦を軽減する働きがあります。

 

これまでのドライアイの治療は、人工涙液やヒアルロン酸の点眼によって水分を補給していく方法が中心でしたが、水分を補給し、ムチンの分泌を促す治療薬が近年開発され、ドライアイの治療の新しい選択して使用されています。

 

近年のドライアイの治療法としては、単に不足する涙液を補充するというだけでなく、どの眼表層に異常があるかを鑑別診断するいわゆる層別診断・層別治療の考え方がなされるようになってきました。この診断法では、どの層に異常があるかを検査し、それに対して適切な薬剤選択を行っていくという治療方法です。涙液が減少したり、蒸発量が亢進して、水分量が不足すれば、涙液を補充し、摩擦が大きければ、潤滑油の役割を担うムチンを補うなどの薬剤選択を行います。

 

以下に主なドライアイの治療薬と役割を示します。

 

涙液補充薬

人工涙液(商品名:人工涙液マイティア、ソフトサンティア)
人工的に精製した涙液で涙液を補います。

 

ヒアルロン酸ナトリウム(商品名:ヒアレイン・ヒアレインミニ)
ヒアルロン酸が分子内に多数の水分子を保持することで水分の蒸発を防ぎます。

 

ムチン産生促進薬

ジクアホスルホソルナトリウム(商品名:ジクアス点眼液)
ムチン分泌作用があります。防腐剤にベンザルコニウムを添加しているため含水性コンタクトレンズ装用時の点眼を避ける必要があります。

 

レバミピド(ムコスタ点眼液UD2%)
角膜のムチン産生を促す作用があります。ユニットドーズ(1回使用タイプ)で保存剤は添加されていません。白濁色をしており、点眼後一時的に眼がかすむことがあるので機械類の操作や車の運転には注意する必要があります。

 


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