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糖尿病の病態

 糖尿病はインスリンの作用不足による慢性高血糖状態が続く疾患で、大部分を2型糖尿病であり、遺伝因子や高脂肪食・運動不足・肥満といった生活習慣に関する環境因子が原因と考えられている。

 

2型糖尿病には西欧人と日本人の病型は異なっている。西欧人型は肥満によるインスリン抵抗性が主であり、日本人型インスリン分泌不全によるものが多い。そのため、病型がことなるために治療のアプローチも異なり、海外で著効した治療法であっても日本人には思うような効果が得られないこともある。

 

インスリンの作用部位は骨格筋、脂肪組織、肝臓で、慢性的なインスリン作用不足は血糖値の上昇脱水、ケトアシドーシスなどを招き昏睡に至る場合もある。

 

糖尿病は進行性の疾患である。血糖上昇が高い状態が続くとインスリンが効きにくい状態となり、さらに血糖が上昇し、さらにインスリン抵抗性となりという悪循環に陥ってしまう。治療によりこの悪循環を断ち切る必要がある。糖尿病治療薬は継時的に薬が効きにくくなっていく

 

つまり高齢層よりも若年層の方が薬物治療の効果が得られやすいと考えられている。

 

耐糖能異常であるIGTの段階からβ細胞機能は低下していく。β細胞は減少していき、膵臓は疲弊を起こす。また、高血糖状態が続くとGIP受容体が減少及びGLP-1分泌が低下することが知られている。

 

動脈硬化、網膜症、認知機能低下に関連性が高いと考えられており、食後の血糖コントロールは重要とされている。食後2時間の血糖値が140mg/dLを上回る場合を、「食後高血糖」と定義しており、治療目標は160mg/dL未満とされている。

 

HbA1cが高くなくても食後高血糖がみられることがあり、HbA1cのみでなく、食後血糖のコントロールが必要。胃排出速度の亢進、インスリン初期分泌が不足すると食後高血糖となりやすいと考えられている。

 

 

糖尿病治療薬の使い分け

理想の糖尿病治療薬として、@低血糖症状を起こしにくいということA体重増加を来さないことを満たす必要がある。体重が増加するとインスリン抵抗性の原因となりうるためである。

 

低血糖症状の問題点を以下に挙げる。
体重増加→低血糖状態になると食欲が亢進し、結果的に体重が増えてしまう。

 

低血糖昏睡→低血糖症状になると死亡もしくは植物状態となる危険性がある。

 

低血糖性認知症→糖尿病は認知症と関連性があると考えられているが、低血糖症状が起こることで海馬の神経細胞死を増加させるため、低血糖症状により認知症が起こるとも考えられている。

 

心血管イベント→重症低血糖症状が心血管リスクを上昇させる可能性があることも報告されている。

 

 

低血糖症状を起こしやすい薬剤

インスリンの分泌を促すSU剤、グリニド系薬剤は危険性が高いと考えられている。治療効果はグリニド系よりもSU剤の方が高い。一方、インスリンの分泌を促進しないα-GI、SGLT-2阻害剤、チアゾリジン系薬剤、ビグアナイド系薬剤は低血糖症状を起こしにくいとされている。

 

治療薬は病態に応じた使い分けをするのが基本となる。欧米人型はインスリン抵抗性に対するビグアナイド系、チアゾリジン系薬剤が有効。体重減少効果が見込めるSGLT-2阻害剤も有効と考えられている。

 

一方、日本人型はインスリン分泌障害またはグルカゴン分泌異常に対する治療がメインとなる。αGI、グリニド系薬剤、DPP-4阻害薬が有効とされている。

 

 

各治療薬の特徴

肝臓に働きかけるビグアナイド薬、筋肉に働きかけるチアゾリジン系の他に今回新しく腎臓に働きかけるSGLT-2阻害剤が追加されている。

 

αGI(α-グルコシダーゼ阻害薬)

米食中心文化の日本人には効果が高いとされている。
HbA1cは0.2〜0.5くらいの減少が期待できる
低血糖症状が起こりにくく、体重増加も起こりにくい

 

1日3回食事の前に服用しなければならない。
放屁下痢が起こりやすい。
薬剤コストは高め。

 

ビグアナイド系

低血糖症状が起こりにくい。
体重増加が起こりにくい
安価である。

 

高齢者に使いにくい。高齢者に使用すると食欲不振を起こしやすいとも考えられている。
腎機能および肝機能が低下していると使用できない。

 

ピオグリタゾン系

インスリン抵抗性を改善する

 

浮腫を起こしやすい。特に女性で多い。
体重増加を起こしやすい。
貧血、骨粗鬆症を起こす可能性がある。
膀胱がんの報告がある。

 

SU剤(スルホニル尿素)

低血糖症状を起こすことがある。
二次無効があるため、長期に渡って漫然と使ってはならない。

 

二次無効

服用開始時には有効であったSU剤が長期間使用により高用量を使用してもインスリン分泌が行われず、血糖コントロールが困難となる状態。

 
<グリメピリド、グリクラジドについて>
グリメピリドの方が、グリベンクラミドと比較すると効きがマイルドである。
体重増加作用は少ない
グリメピリドはインスリン抵抗性を改善する作用がある。
グリクラジドは弱い抗血小板作用がある。
DPP-4阻害剤と併用すると相乗効果がある。低血糖症状も起こりやすくなるので注意が必要。

 

グリニド系

作用時間が短く、速効性で効果は短い
体重を増加させることはほとんどない。
インスリン分泌の機能を回復する。

 

食事の直前に服用する必要がある。
薬剤コストが高い

 

 

DPP-4阻害薬

副作用がほとんどない
高齢者のファーストチョイスとなる。
肥満型よりもやせ型に有効とされている。

 

日本人に効きやすいと考えられている。
魚介類の摂取量が多いとDPP-4阻害薬の血糖効果作用が高く得ることができる。

 

DPP-4阻害薬の服用で急性膵炎が起こりやすくなるという報告があるものの、今のところは症例として経験していない。

 

 

 

SGLT-2阻害剤(SGLT-2:sodium-glucose co-transporter type2)

<SGLT-2について>
遠位尿細管に存在しているSGLT1は阻害せず、近位尿細管のSGLT2を阻害する。
SGLT2は小腸と腎近位尿細管に発現している。

 

1日あたり80〜100g(400cal)程度のブドウ糖が尿糖として排出される。
血糖濃度180r/dL以上になると尿糖が出てくるとされている。

 

<SGLT-2阻害剤の長所と短所>
・中程度のHbA1c低下作用がある。

 

・低血糖症状を起こしにくい。

 

体重減少作用がある。最大4.7kg減少したという報告がある。体重が減少するとインスリン抵抗性が改善する。

 

・Na+排泄促進作用があり、血圧低下作用がある。収縮期血圧で2〜10mmHg低下する。

 

脂質改善作用がある。

 

尿酸低下作用がある。

 

・ DPP-4阻害薬にはないが、SGLT-2阻害剤にある点として、SGLT-2阻害剤には体重減少、血圧、脂質、尿酸などに対するいわゆるメタボリックシンドローム因子を改善する作用がある。

 

 

<SGLT-2阻害剤を使用する上での注意点>
・ 浸透圧利尿作用があるため脱水になりやすい。脱水症状が起こりやすい夏場などでは注意が必要である。脱水症状を起こしやすい高齢者には不向き
市販後3ヶ月以内で65歳以上の患者に投与する場合は、全症例登録することになっている

 

・ 尿中に糖分が含まれるため尿路感染症や性器(陰部)感染症とくにカンジダなどにかかりやすくなる。

 

・ 高齢者においてサルコペニア(加齢による筋肉量減少)を悪化する可能性がある。

 

・ ケトン体上昇し、ケトーシス、ケトアシドーシスを起こす可能性がある。

 

・ 腎機能低下している患者は使用することができない

 

<SGLT-2阻害剤はどんな人に向いているか?>
・メタボ系肥満傾向の2型DM
・罹患期間が比較的短い
・他の薬が効かない

 

<スーグラの市販後調査>
今のところ(H26.6.13時点)低血糖症状は6件報告あり、重篤な低血糖症状は1件のみ報告があった。
現段階でSGLT-2阻害剤は低血糖症状に関しては安全に使える印象がある。

 


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