生存時間解析
【方法】
胃癌術後補助化学療法の臨床比較試験Stage Ⅱ、Ⅲの胃癌治癒切除症例を対象とし、TS-1投与(手術後1年間)群(529例)と手術単独群(530例)を比較した。
【結果】
検討した結果(観察期間の中央値:手術後3.0年)、生存期間のハザード比は0,675(95%信頼区間:0.523-0.871、ログランク検定 p=0.0024)であった。
TS-1投与群は手術単独群と比較して死亡リスクを32%低下させた。
手術後3年の生存率は、手術単独群70.1%、TS-1投与群80.5%であった。
(TS-1OD錠の添付文書より)
(TS-1OD錠の添付文書より)
生存曲線とは、観察開始の生存率を100%として、一定の期間までの生存率の変動を調べ、時間経過に伴いどのような変化をするか曲線で表したものをいいます。カプランマイヤー曲線ともいいます。
ハザード比と相対リスク比
相対リスク比はある時点でのアウトカムの発症であり、経過途中の発症速度を知ることはできません。
ハザード比は生存時間解析において相対リスク比と同じように扱われますが、ハザード比には経過途中の発症速度を考慮したリスク比になっています。(Cox比例ハザードモデルによって算出される)
一般的に生存時間解析について、カプランマイヤー法でログランク検定を行うとほぼ決まっています。ログランク検定とは、2群間の生存時間経過を加味したノンパラメトリックな検定をいいます。
ハザード比・相対リスク比とオッズ比のちがいとは?
コホート研究は、研究対象を時間の経過とともにイベントの発生を追跡していく研究です。未来に向かって研究が進んでいくため、前向き研究とも呼ばれることがあります。
前向き研究は、研究終了まで数年または数十年という時間が必要となります。そのため、研究に充てられる時間・費用等が莫大となります。しかし、前向き研究から得られた要因に関する情報は正確で信頼性が高いとされています。
例として、喫煙者群(曝露群)と健康者群(非曝露群)を集め、両群を数年追跡し、喫煙の肺がん罹患率(リスク)を比較するという前向き臨床研究があると仮定します。
この研究では、肺がんに罹患していない人全員を追跡することができ、その中で肺がんに罹患した人の数から発生率を計算することができます。この相対的な発生率の比が相対リスク比であり、これが生存時間解析の場合はハザード比になります。
一方、前向き研究に対して、症例対照研究(ケースコントロール研究)があります。この研究は、現時点で患者と非発症者(対照者)を選択し、医療面接や診療記録などを元に過去に要因に曝露したかを調べます。
過去に遡って要因の影響を検証するので後ろ向き研究ともいい、前向き研究に比べると、時間も費用も少なくて済みます。
ここでも例を挙げると、肺がん患者群(症例群)と健康者群(対照群)について過去にどの程度喫煙していたかを調べる後ろ向き研究を考えます。
症例群の方が喫煙者が多ければ、喫煙が肺がんの原因であると推論することができます。
この研究では症例群として肺がんと診断された人のデータやカルテを調べたり、本人や家族に聞き取り調査で、過去に喫煙していたかを調査します。対照群としては、現時点で肺がんになっていない人を集めて、それらの人たちが喫煙していたかどうかを調査します。
調査の結果、「肺がんと診断された人の何パーセントが喫煙していたか?」というデータと「肺がんになっていない人の何パーセントが喫煙していたか?」というデータを得ることができます。
しかし、相対リスクを算出するときに必要な「喫煙している人の何パーセントが肺がんになったか?」というデータと「喫煙していない人の何パーセントが肺がんになったか?」というデータを得ることはできません。
そのため、症例対照研究ではオッズ比で相対リスクを相似するという手法がとられます。
症例群の方が喫煙者が多ければ、オッズ比が1を越え、喫煙が肺がんの原因と推論できます。