薬局のしごと/くすり/病気に関する情報発信サイト

放射性医薬品

放射性医薬品とは、放射性同位体(RI)を用いた医薬品です。RIとはある元素の同位体で、核種が不安定な状態から放射性崩壊を起こし、安定な状態に戻るときに放射線を放つ元素のことをいいます。

 

放射性医薬品は放射線を放つ作用があり、放射線そのものを利用するため、その物質の薬理作用を期待することはありません。臨床応用される量は超微量であり、放射性医薬品は疾病診断やがん治療等に利用されています。

 

日本薬局方に収載されている放射性医薬品は10品目あり、放射性医薬品基準書には42品目が収載されています。放射性医薬品の有効期限は、放射性核種の物理学的半減期に基づいて設定されています。

 

診断用の放射性医薬品は注射剤や経口薬が使用されていて、生体内で利用される放射性医薬品をin vivo放射性医薬品といったりします。特定の臓器に集積する化合物の性質を利用し、その化合物とRIを結合させ、集積する臓器から放出されるガンマ線という放射線を測定し、解析して画像化したり、グラフ化することで標的臓器や病巣の状態を確認したり、組織の機能検査を行うことができます。

 

放射性医薬品による検査は脳血流や代謝などの機能検査に非常に優れていて、脳血流量を検査してアルツハイマー型認知症などの認知症の診断や鑑別が日常診療で広く実施されています。

 

また、血液などに含まれる生理活性物質や薬物量を定量解析する際にもRIが使用されることもあります。体外使用されることから、in vivo放射性医薬品に対してin vitro放射性医薬品といったります。

 

一方、治療用の放射性医薬品は、診断用と同様に特定の臓器に集積する化合物とRIを結合させることにより、標的臓器の細胞を放射線によって破壊します。ヨウ素が甲状腺に集積しやすい性質を利用して、ヨウ化ナトリウム(131I)カプセルによる甲状腺腫瘍などの治療が行われています。

 

 

放射性医薬品の管理

放射性医薬品は放射線を放出するため安全に管理されなければなりません。そのため、管理区域や数量などを規定している医療法と放射線障害の防止に関する放射線障害防止法によって規制を受け、特別な取り扱いを受けます。また、放射性医薬品の製造し、販売する場合は薬事法によって規制されます。

 

PET診断で使用する核種は半減期が非常に短いため、検査の直前に施設内で製造しなければなりません。このような施設では、医薬品の製造から使用までを全て行うことになります。

 

放射線障害の防止のため、RIを取り扱う事業所ごとに放射線取扱主任者を配置しなくてはならないことになっています。放射線取扱主任者取り扱う内容によって第1種、2種、3種がありますが、病院や診療所内での放射線取扱主任者に選任されるのは、第1種放射性取扱主任者免状を有する者になっています。

 

該当者がいない場合は医師又は歯科医師を放射線取扱主任者に選任してもよいことになっています。病院薬剤師が選任させる場合もありますが、その場合は薬剤師が第1種放射線取扱主任者免状を有している必要があります。

 

保管について、貯蔵箱は建物に固定し、貯蔵施設には鍵をかける必要があります。また、放射性医薬品は他の医薬品と区別して保管することになっています。

 

 

SPECTとPET

放射性医薬品を投与して行う医学検査にSPECTとPETがあります。両検査とも標的臓器や病巣へ放射性同位元素が取り込まれることによって、それを画像化するという手法は共通しています。

 

SPECT(single photon emission computed tomography)単一光子放射コンピュータ断層撮影法とも呼ばれ、123Iや99mTcなどで標識された放射性医薬品を使用し、核種が放出するガンマ線を検出する検査です。SPECTは脳血流の評価に優れているため、アルツハイマー型認知症などの認知症の診断や鑑別が日常診療で広く実施されています。

 

SPECTは、PETに比べて画像解像度では劣りますが、SPECT装置はPET装置よりも施設的な制限が少なく、広く普及しています。さらに123Iや99mTcなどを標識核種とする放射性医薬品は製薬企業によって広く供給されていますので、PETに比べると検査を実施できるハードルが低くなります。

 

一方、PET(positron emission tomography)は、ポジトロン断層撮影法とよばれ、ポジトロンが消滅するときに放出する消滅γ線をPETカメラで撮影することにより、身体中のポジトロンの分布を画像にすることができる検査法です。

 

ポジトロンを放出する元素はポジトロン核種とよばれ、ポジトロン核種には11C、15O、18F、13Nが用いられており、いずれも半減期が2分間から2時間程度と極めて短くなっています。そのため、PET検査を行う際には医療機関内に設置されたサイクロトロンという装置で製造され、使用されます。

 

製造されたポジトロン核種は、酸素、水、ブドウ糖、アミノ酸、脂肪酸などで標識され、注射剤や吸入剤として投与されます。投与後、身体の目的部位に集まるまで安静して待ち(約40~60分)、PETカメラを用いて撮影を行います。

 

がん細胞の場合、正常な細胞の3~8倍ものブドウ糖を取り込む性質があるため、がん細胞に集積する様子を画像化して、がんの有無(転移)、場所、大きさの特定のほか、良悪性の区別や進行の度合いまで推定することができます。さらに血流やエネルギー代謝の状態が画像で明確にすることができ、アルツハイマーなどの脳疾患や狭心症、心筋梗塞などの心臓疾患の発見、心不全の治療効果判定などに利用されます。

 

PETはサイクロトロンを必要とするため、施設的な制限を受けます。そのため、国内で実施できる医療機関は限られており、経済性と普及性ではPETの方が劣ります。しかし、PETでは画像解像度が高い診断結果を得ることができます。

 


HOME サイト概要 プロフィール お問い合わせ