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ジェネリック医薬品(GE)とは?

調剤薬局において、調剤に先だって「ジェネリック医薬品で調剤してよろしいですか?」とか「今回の処方せんは一般名で薬が処方されているのでジェネリックで差しつかえありませんか?」といったやり取りをよく耳にします。

 

ジェネリック医薬品(GE)は、既に世に出回っている医薬品(先発医薬品)の特許が切れ、別のメーカーが製造販売する成分・含量・剤形が同じを医薬品のことを指します。GEの最も大きい特徴は安いという点になります。GEの薬価が安いという点から高騰する医療費を抑制する一つの手段として、GEの使用が推進されています。

 

先発医薬品は新規有効成分の発明から約20年間は、発明したメーカーが独占的に製造販売することができ、この期間中に他のメーカーは製造販売することができません。この独占権を特許といいますが、特許期間が満了した後は、先発医薬品以外のメーカーでもGEとして承認申請し、許可を受ければ製造販売が可能となります。

 

医薬品の開発には膨大なコストがかかり、開発される医薬品はすべてが医薬品として承認を得られるとは限らないため、開発コストはメーカー側には大きなリスクとなります。そのため、特許は先発医薬品の開発メーカーを保護する役割を担っています。

 

GEはゼロから開発される医薬品ではないため、その分開発経費を少なくすることができます。そのため削減された開発費の分によって低価格に設定することができ、先発医薬品の特許切れで初めて認可を受けたGEは先発医薬品の約70%の薬価に設定されます。その後、申請されたGEはさらに安価となっていきます。

 

GEの使用推進は、患者の自己負担額を抑えるだけでなく、国全体の医療費負担額を軽減することもできますが、多くのGEに使用される添加物は先発医薬品と異なっており、添加物の違いによる問題が起きることがあります。日本薬局方において、添加剤はその製剤の投与量において薬理作用を示さず、無害でなければならないとされており、添加剤は有効成分の治療効果を妨げるものであってはならないとされています。

 

内服薬では、味やにおいや服用感に違いが出たり、添加物によるアレルギー発現の可能性もあります。外用薬であれば、添加物による違いは内服薬よりも顕著で、貼付剤の貼り心地や剥がれやすさ、塗り薬の塗布後の使用感や伸び具合の違いを感じることがあります。さらに注射剤では添加物の違いから配合変化を起こす薬剤の組み合わせが先発医薬品とはまったく異なっていることもあり、安いのでGEを使用すれば良いという訳ではありません。

 

 

ジェネリック医薬品の承認申請

一般にGEと先発医薬品は同一の医薬品と判断されていますが、そう判断されるためにはデータが必要です。このデータがGEの製造承認を得るために必要なデータとなります。

 

先発医薬品の承認申請には、薬効成分(原薬)製剤の両方の有効性と安全性が必要となります。GEの開発段階においては、先発医薬品で原薬については確認済みとの考えから、製剤の有効性と安全性について基準を満たす必要性があります。

 

GEの有効性については、GEの吸収・分布・代謝・排泄(ADME)に関する試験を実施し、安定性についてはGEが含量が正しく含まれていたり、きちんと溶けることができるかなどに関する試験を実施することになります。これらの基準を満たせば、GEの製造販売の許可を受けることができます。

 

GEの承認申請に必要な書類は、規格および試験方法安定性試験生物学的同等性試験のデータが必要となります。医薬品によっては長期保存試験のデータが必要となる場合もあります。

 

 

規格および試験方法

規格および試験方法には、GEにおける有効成分の確認試験、含量規格(表示されたとおりに成分がきちんと入っているか)、純度試験(不純物が混じっていないか)、溶出試験(きちんと溶けるか)などの試験方法が定められ、その結果が一定の範囲内におさまることが定められています。

 

通常は3ロットで3回試験を実施し、その結果が安全域を加味した一定の範囲内におさまっているか確認を行います。結果がこの範囲外であると含量が表示されている通りに入っていなかったり、不純物が混じっていると判断されることがあり、販売後だと不良医薬品として扱われ、法的処分を受けることもあります。

 

 

安定性試験

医薬品の安定性試験として長期保存試験、苛酷試験、および加速試験を定めていますが、GEではこのうち加速試験のデータが承認申請に必要となります。これらの試験は流通期間中における安定性を確認する試験で、最終包装の状態で試験が実施されます。医薬品は乗用車等で輸送されることが多く、真夏は40℃を超えたり、真冬は氷点下になることもあります。そのような条件下で流通する上で、安定性に問題がないかを確認する試験になります。

 

長期保存試験は、一定の流通期間中の安定性を確認する試験で、通常は相対湿度60%下、25℃(±2℃)の状態で3年以上に期間で行われます。一方、試験期間を短縮して安定性を推測しようとする試験が加速試験になります。

 

加速試験は試験期間が6か月以上に設定され、試験期間が短い分早く世に出すことができます。ただし保存条件が厳しいものとなり、相対湿度75%の40℃(±1℃)で実施することになっています。

 

苛酷試験は、流通期間中に起こりうる極端な条件下での安定性を確認する試験になります。光、温度変化、湿度変化を考慮して保存条件が設定されます。

 

これらの試験のうち、GEの承認申請時に求められる資料は加速試験のデータとなります。しかし、承認後であっても、品質確保のために安定性を確認すべき試験は実施し、データを適切に収集していくことがメーカー側には求められます。そのため、GEであっても長期保存試験を実施し確認していくことが定められています。

 

 

生物学的同等性試験

GEが先発医薬品と治療学的に同等であることを保証するためには、生物学的同等性試験のデータが必要とされます。生物学的同等性試験は、通常、GEと先発医薬品のバイオアベイラビリティを比較します。バイオアベイラビリティとは、薬物が血管外投与部位から全身循環血液へ移行する速度と量を指します。

 

注射剤であれば、直接血管内に投与されるため、投与した薬物は100%が全身循環血液へと移行しますが、経口剤の場合は、薬物が溶け具合や吸収されやすさなどが大きく影響するため、投与した薬物の80%が循環血液へ移行することもあれば、20%しか移行しない場合もあります。

 

そのため、GEと先発医薬品を比較したとき、同じ量を服用すると同じ量だけ血液中に移行しなければ、同じ医薬品であるということはできませんので生物学的同等性試験のデータが必要となります。

 

生物学的同等性試験には試験製剤と標準製剤を用いて、被試験者20名(1群10名)以上のクロスオーバー試験を絶食下で行います。投与後、7時点以上で採血を行い(場合によっては採尿)、Cmax、AUCで同等性を評価します。TmaxやMRTなどのパラメータは参考パラメータとして評価されます。

 

Cmax:最高血中濃度(生体内に投与された薬物濃度の最高値)

 

AUC:血中薬物濃度−時間曲線面積(生体内に投与された薬物について薬物血中濃度を縦軸、時間を横軸としてグラフに表したとき、グラフの曲線と時間軸に囲まれた部分の面積)

 

Tmax:最高血中濃度到達時間(Cmaxに達するまでの時間)

 

MRT:平均滞留時間(生体に投与された薬物が体内に滞留する時間)

 

クロスオーバー法:同一被験者が一定期間を空け、GEと先発医薬品をそれぞれ交互に服用する試験方法。同一被験者においてGEの薬物動態と先発医薬品の薬物動態が比較できるため、個人差を小さくできる。

 

 


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