薬学管理料加算
薬学管理指導料には加算点数が設定されています。患者の安全性の確保と有効性の向上のために行われた調剤行為や情報提供を評価するもので、これらの行為が行われた証拠として薬歴に記録しておく必要があります。薬学管理料加算の項目を以下に記します。
・ 麻薬管理指導加算
・ 重複投薬・相互作用防止加算
・ 特定薬剤管理指導加算
・ 乳幼児服薬指導加算
麻薬管理指導加算
麻薬管理指導加算は、麻薬が処方されている患者又はその家族に対して、服薬方法などについて指導を行った場合に算定することができます。麻薬は内服薬以外に注射剤や貼付剤など剤形のラインナップが豊富で、保管や廃棄などについても厳重に行われなくてはいけません。また麻薬による鎮痛効果や副作用の発現などの確認を行い、必要な薬学的管理指導を行わなくてはなりません。これらを行った場合は22点を算定し、指導の要点を薬歴に記載しなければなりません。
重複投薬・相互作用防止加算
保険薬局ではお薬手帳や薬歴の確認により飲み合わせの確認を行いますが、患者によっては複数の医療施設を受診していることもるため、重複投与や飲み合わせの悪い組み合わせの薬剤が処方される場合があります。薬剤師がこれを確認し、処方医へ連絡または確認を行った場合に算定することができます。
結果的に処方が変更になった場合は20点を算定しますが、薬剤が追加、処方期間の延長となった場合は20点を算定することはできません。処方に変更がなかった場合は10点を算定します。
複数の医療機関や複数の診療科の処方せんを受け付けた場合でも算定することは可能ですが、どちらか1回に限り加算することができます。
また、残薬の確認の結果、残薬を確認後、処方医に疑義照会して処方日数が短くなる場合も算定することができます。実際に残薬の確認を薬剤師会が強化しているところがあり、医療費を大幅に削減できたという報告がされています。重複投薬・相互作用防止加算は、医薬品の安全使用だけでなく、医薬品の適正使用を目的としていると考えることもできます。
特定薬剤管理指導加算
処方せんで取り扱われる医薬品によっては、副作用が起きやすかったり、効果を注意深くモニタリングしていく必要があるものがあります。このような特に安全管理が必要な医薬品(ハイリスク薬)が処方された際に、そのハイリスク薬の効果や関連副作用の自覚症状の有無などを確認するとともに、服用に際しての注意事項などを詳細に説明し、かつ指導を行った場合に、特定薬剤管理指導加算を算定します。全てのハイリスク薬に共通する確認および指導事項について5項目を以下に記します。
1)患者に対する処方内容(薬剤名、用法・用量等)の確認
2)服用患者のアドヒアランスの確認(飲み忘れ時の対応を含む)
3)副作用モニタリング及び重篤な副作用発生時の対処方法の教育
4)効果の確認(適正な用量、可能な場合の検査値のモニター)
5)一般用医薬品やサプリメント等を含め、併用薬及び食事との相互作用の確認
ハイリスク薬の定義は以下に示す3つの分類に含まれるものとされています。
I. 厚生労働省科学研究「医薬品の安全使用のための業務手順書」作成マニュアルにて「ハイリスク薬とされているもの」
① 投与量等に注意が必要な医薬品
② 休薬期間の設けられている医薬品や服薬期間の管理が必要な医薬品
③ 併用禁忌や多くの薬剤との相互作用に注意を要する医薬品
④ 特定の疾病や妊婦等に禁忌である医薬品
⑤ 重篤な副作用回避のために、定期的な検査が必要な医薬品
⑥ 心停止等に注意が必要な医薬品
⑦ 呼吸抑制に注意が必要な注射薬
⑧ 投与量が単位(Unit)で設定されている注射薬
⑨ 漏出により皮膚障害を起こす注射薬
II. 投与時に特に注意が必要と考えられる以下の治療領域の薬剤
① 抗悪性腫瘍剤
② 免疫抑制剤
③ 不整脈用剤
④ 抗てんかん剤
⑤ 血液凝固阻止剤
⑥ ジギタリス製剤
⑦ テオフィリン製剤
⑧ 精神神経用剤(SSRI、SNRI、抗パーキンソン病薬を含む)
⑨ 糖尿病用剤
⑩ 膵臓ホルモン剤
⑪ 抗HIV剤
III. 投与時に特に注意が必要と考えられる以下の性質をもつ薬剤
① 治療有効域の狭い薬剤
② 中毒域と有効域が接近し、投与方法・投与量の管理が難しい薬剤
③ 体内動態に個人差が大きい薬剤
④ 生理的要因(肝障害、腎障害、高齢者、小児等)で個人差が大きい薬剤
⑤ 不適切な使用によって患者に重大な害をもたらす可能性がある薬剤
⑥ 医療事故やインシデントが多数報告されている薬剤
⑦ その他、適正使用が強く求められる薬剤(発売直後の薬剤など)
ハイリスク薬が複数処方されている場合は、その全てについて必要な薬学的管理及び指導を行わなくてはいけませんが、処方受付1回につき1回限り算定することになっています。指導後は実際に行った指導の要点を薬歴に記載しなくてはなりません。
乳幼児服薬指導加算
6歳未満の乳幼児への調剤において、処方せんを受け付けた際に、体重、適切な剤形その他必要な事項等の確認を行った上で、適切な服用方法、誤飲防止等の必要な服薬指導を行い、かつ、当該指導の内容等を手帳に記載した場合に算定します。
私の経験では、あらかじめ指導内容の要点を記載した説明文書を用意しておき、粉薬の飲み方、坐薬の使用方法、外用剤の塗り方などの内容について文書を見せながら指導を行ったことがあります。説明後は説明文書をお薬手帳に貼付または記載します。乳幼児服薬指導加算は説明だけでなく、手帳への記載も算定条件に含まれています。