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心不全に適応のあるSGLT2阻害薬

SGLT2阻害薬が心不全にも有効とのデータが蓄積されています。SGLT2阻害薬は、ナトリウム利尿作用や浸透圧利尿作用に加え、代謝や心筋エネルギー改善、神経液性因子改善、心筋炎症・酸化ストレス改善、血管内皮機能改善など、多面的に心不全抑制効果を示すと考えられています。

 

2020年11月、ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物(フォシーガ)が慢性心不全への適応追加が認められ、その後2021年3月にエンパグリフロジン(ジャディアンス)への適応追加がありました。今後も他のSGLT2阻害薬で同様に適応が追加される可能性があります。

 

SGLT2阻害薬は、近位尿細管に集中して存在しているSGLT2の働きを阻害することにより作用を発現します。SGLT2はグルコースとナトリウム(Na)を再吸収する輸送体で細胞内外のNa濃度差を駆動力としてグルコースを細胞内へ取り込んでいます。
その輸送体を阻害することでグルコースとNaの再吸収を阻害して尿糖の排泄量を増加させ、血中のグルコース濃度を低下させます。

 

心不全に対する作用機序

慢性心不全に対してSGLT2阻害薬の作用機序は、尿細管内のグルコース濃度の上昇により起こる浸透圧性利尿作用が関与していると考えられています。血漿流量が減少し、臓器の浮腫を軽減し、尿量が増えます。また、Naの血中への流入を抑えて血圧の上昇や交感神経の活性化を防ぐとも考えられています。

 

さらにSGLT2阻害薬による尿糖排泄作用により、HbA1cや体重、肥満の改善につながるため、心血管の保護や心負荷の軽減が期待できます。

 

水分管理の重要性

通常、SGLT2阻害薬は利尿作用があるため、投与開始時には脱水を起こさないように水分を摂取するようにしなければなりません。しかし、うっ血症状を訴える心不全患者は、過度な飲水により体液貯留が悪化する恐れがありますので、一律に水分摂取を指導することが適切ではないケースもあります。
 また、心不全の患者は多くの場合で利尿薬が投与されており、脱水を起こさないために利尿剤の減量を検討する必要な場合があります。したがって、息切れや起坐呼吸(体を起こすと楽になる)や、心不全増悪の兆候として浮腫や数日に2~3kgの急激な体重増加などがないかを、継続してモニタリングすることが重要です。

 

心不全適応における用量

2型糖尿病にダパグリフロジンを使用する際は、5 mg/日で、効果不十分の場合に10㎎/日に増量を考慮するとされています。しかし、慢性心不全に対する用量は10㎎/日となっています。よって、通常よりも比較的高用量で使用することになるために副作用のリスクが高くなります。SGLT2阻害薬では糖尿病ケトアシドーシスを起こしやすいため、強いのどの渇きと頻尿、体重減少、吐気、嘔吐、疲労などの症状に注意する必要があります。


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