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白色ワセリンとプロペトのちがい

冬場になると乾燥してワセリンを使用する機会も多いのではないでしょうか。白色ワセリンは比較的安価で安全性も高く、ドラッグストアでも販売されているので入手しやすい塗布剤です。白色ワセリンは医師に処方してもらうことが可能ですが、その際の白色ワセリンまたはプロペトなどと記載されて処方されることもあります。白色ワセリンとプロペトにどのような違いがあるのでしょうか?

 

結論、プロペトは白色ワセリンから不純物を除いたものになります。
白色ワセリンやプロペトの用途として、皮膚保護剤としての役割があり、その他にも軟膏基剤として使用されています。添付文書によると白色ワセリンは「軟膏基剤として使用する。または皮膚保護剤として用いる」と記載されています。一方、プロペトの方は「眼科用軟膏基剤、一般軟膏剤として調剤に用いる。また、皮膚保護剤として用いる」とあります。眼科用軟膏基剤として用いる以外ではほとんど同じになります。

 

"ワセリン"という名称は化学名ではなく、Chesebrough社の登録名称であり、ドイツや日本では一般化した名称です。ワセリンの主成分は原油からナフサ、流動パラフィンおよび結晶性パラフィンを分離した後の残油から、さらに微結晶性パラフィンを分離したものです。

 

国内で白色ワセリンは数社から販売されていますが、物性は異なっており、融点、粘度、色調、臭いなどが違ってきます。そのため、同じ白色ワセリンであってもメーカーが異なると塗り心地が異なるように感じることがあります。

 

日本薬局方にはワセリンは、白色ワセリンと黄色ワセリンに分かれて収載されています。白色ワセリンは活性炭または活性白土を用い、熱濾過して脱色したものになりますので、本質的に違いはありません。どちらの用途も同じです。

 

一方、前述のとおりプロペトはワセリンに含まれる不純物を取り除いたものになります。不純物の中で特に過酸化物が皮膚へ刺激性があるため問題となることがあります。粘膜への使用を考慮すると、プロペトは不純物(ナフテン酸、高級固形脂肪酸、フェノール類など)などの刺激性要素をほとんど含有しないため、このような部位に使用する際はプロペトの方が適していると言えます。

 

また、過酸化物で問題になる点として、活性型ビタミンD3の含量を低下させるという点があります。活性型ビタミンD3製剤であるボンアルファ軟膏では基剤のワセリンの代わりに大部分の過酸化物を除去した"サンホワイト"という特別に精製したワセリンを使用しています。

 

サンホワイト

サンホワイトはプロペトをさらに精製したもので、過酸化物をほとんど除去してあり、抗酸化物のトコフェロールが配合してあります。経時的に安定していて、紫外線により着色しないなどの特徴をもっています。
ただし、ワセリンよりも精製コストがかかっているため、価格は普通の白色ワセリンの数倍程度となっています。保険適用されておらず薬価収載されていませんが、価格はサンホワイト>プロペト>白色ワセリンとなります。ボンアルファ軟膏以外において、刺激性が少ないことから小児に適用させることの多いキンダベート軟膏ではサンホワイトが使用されています。

 

 

 

プロペトの利点

純度

前述のようにプロペトはワセリンよりも不純物が少なくなっています。そのため、皮膚への刺激性も低くなっています。実際に副作用はほとんどなく、接触性皮膚炎などの発生頻度も低いのが特徴です。

 

使用性

プロペトは眼科用基剤として使用される分、稠度(かたさ)・粘度(ねばり気)ともに眼科用基剤として適切な物性を持ち、塗りやすいです。これは、眼軟膏基剤として結膜嚢内に分布しやすくするために稠度を調節しているためです。そのため、アトピー性皮膚炎患者で顔の角層の薄い部分などに塗る場合でも刺激を与えることが少なく、痒みが生じにくい利点があります。

 

プロペトと白色ワセリンを温度25℃と5℃に一定時間保存した後、かたさ(稠度)と伸び具合(延展性)の物性を測定した検査があります。その結果、温度25℃に保存した場合ではプロペトは白色ワセリンと比べて約20%程度稠度と延展性が優れていたと報告されています。しかし、5℃の場合ではほぼ同等であることが分かりました。これは冬など気温が低い場合には、他の季節よりもプロペトが硬くなっていると言えます。そのため、プロペトは手の甲などで少し練って、柔らかくしてから使用しなければなりません。

 

安定性

プロペトは精製により抗酸化物まで除去されてしまうため、酸化をうけやすくなっています。そのため、保存する場合は遮光保存するなどして紫外線の影響を受けないようにする必要があります。

 

 

まとめ

プロペトは安価で皮膚刺激性も少ないことから、皮膚保護剤として非常に使いやすい薬剤です。白色ワセリンとプロペトのちがいは不純物の少なさであり、さらに高精製したものにサンホワイトがあります。不純物を取り除くことで皮膚や粘膜への刺激性を低下させたり、含量低下を防ぐことができるようになっています。

 


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