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スルピリド (商品名:ドグマチール、ミラドール、アビリット)

どんな薬か?

スルピリドはベンザミド誘導体の向精神薬であり、ドパミンD2受容体を特異的に遮断することで効果を発現する薬剤です。スルピリドの開発された時期は古く、日本でも使用実績が長い薬剤です。また、昔から存在している薬剤なので、薬価も低くなっています。

 

スルピリドは、胃・十二指腸潰瘍うつ病統合失調症など幅広い病態に適応があり、比較的副作用が少ない薬剤です。本剤は1日50㎎~300㎎を分割投与しますが、低用量と高用量において臨床効果が異なるのが特徴です。

 

本剤の成人に対する使用法は以下のようになっており、低用量では胃・十二指腸潰瘍に対して使用され、高用量ではうつ病や統合失調症に対して使用されます。

 

胃・十二指腸潰瘍に対して、1日150㎎を3回に分割経口服用。
うつ病・うつ状態に対して、1日150~300㎎を分割経口服用し、1日600㎎まで増量可能。
統合失調症に対して、1日300~600㎎を分割経口服用し、1日1200㎎まで増量可能。

 

ちなみに本剤の錠剤規格として50㎎錠、100mg錠、200㎎錠の3つがありますが、100㎎錠以上の規格は劇薬となっています。

 

                

 

スルピリドの抗うつ作用や鎮静作用は比較的緩やかであるといえます。そのため、重症例や急性期の興奮状態などには不適であり、軽症や高齢者のうつ病に対して使用しやすい薬剤と考えられます。また、胃・十二指腸潰瘍に対する作用があることから、食欲不振や消化器症状のある軽症例において有効であると考えられます。

 

一方、本剤は副作用は比較的少ない薬剤とされていますが、高プロラクチン血症を起こすことがあります。この副作用が起こる原因は、スルピリドが脳下垂体のドパミン受容体を遮断しすぎてしまうためにプロラクチンというホルモンが過剰に分泌されてしまうために起こります。

 

プロラクチンは授乳中の女性において多く分泌されているホルモンです。そのため、高プロラクチン血症を起こすと授乳中と同じような状態となってしまい、乳汁が分泌されるようになったり、胸の張り月経不順性欲低下などが起こることがあります。男性であれば勃起障害が起こることもあります。

 

プロラクチンが高い状態は好ましいとは言えず、骨粗鬆症や乳がんの発生率を上昇させることが示唆されています。したがって、このような症状が現れた場合は本剤を減量もしくは中止する必要があります。

 

また、高齢者が数カ月以上に渡って連用する場合、手足が勝手に動いてしまうような遅発性ジスキネジアを生じることがあるため、注意が必要となります。

 

 

禁忌、注意すべき副作用

<禁忌>
プロラクチン分泌性の下垂体腫瘍(プロラクチノーマ)の患者、褐色細胞腫の疑いのある患者に対する投与

 

<注意すべき副作用>
錐体外路症状、遅発性ジスキネジア、プロラクチン値上昇、眠気、めまい、悪性症候群など

 

 

まとめ
  • 低用量と高用量で臨床効果が異なる。
  • 食欲不振、消化器症状のある軽症例において有効。抗うつ作用はマイルド。
  • 高プロラクチン血症の発現に注意。高齢者の連用により遅発性ジスキネジアの発現の可能性もある。

 

 


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