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バクスミー点鼻粉末剤(baqsimi)

低血糖症状の救命処置に使用する国内初の点鼻薬が発売されました。
本剤は血糖値を一時的に上昇させるホルモンであるグルカゴンを含んでおり、点滴でも経口薬でもなく点鼻剤であることが特徴です。

 

低血糖は一般的に70 mg/dL未満の状態をいい、特に54 mg/dL以下のときの場合は、すぐに対処しなければ生命の危機に関わります。
低血糖を起こすと、動悸、生あくび、ふるえ、異常な空腹感、気分不良、めまい、冷汗、眠気などの症状があらわれます。一方で低血糖状態となっていてもこれらの症状があらわれない無自覚性低血糖の場合もあります。

 

低血糖に気づかずそのまま進行すると、意識障害、けいれん、昏睡などのような重い症状(重要低血糖)が現れることがあり、この状態になると、患者自身で対処ができないので周りの人の手助けが必要となります。
そのため、低血糖の状態を早めに察知し、適切に対処していく必要があります。

 

糖尿病治療において、使用される薬剤によっては低血糖を起こしやすいリスクが高くなります。
糖尿病は軽度であれば単剤でコントロールしますが、通常薬理作用の異なる複数の薬剤で治療が行われます。使用薬剤が増えれば低血糖を起こすリスクが大きくなります。
その他にも重症低血糖の既往歴のある方、1型糖尿病の方、高齢者、インスリンやSU剤で治療している方、HbA1c低値の方、長期間罹患している方は低血糖をリスク起こすが高くなります。

 

本剤はこのような状況で低血糖状態に陥ったとき、回復させるために使用する薬になります。

 

本剤は1回使い切りタイプで、室温(30℃以下)で保存することができます。室温保存ですので冷蔵庫に保管する必要性はなく、携帯性に優れる薬剤です。ですので、バッグなどに携帯して外出することが非常に容易になります。

 

また、簡単な操作により誰でも薬剤を使用することができます。
必要時に黄色の容器から開封します。そして容器を手に持ち、先端を鼻に入れ、注入ボタンを押す、という手技だけで処置を終了することができます。

  

吸入剤に比べても操作は簡単ですので、周りにいる家族等が操作法を知っていれば、低血糖で本人の意識がなくなっても低血糖症状をリカバリーできます。臨床試験で、治療成功割合が100%であったことからも操作の簡便性が高い薬剤と考えられます。
本剤の作用発現は早く、20分程度で効果が得られると考えられます。

 

本剤の副作用のうち、悪心、嘔吐、頭痛などが1~10%以上であり、流涙増加、眼そう痒症、収縮期血圧上昇、拡張期血圧上昇、上気道刺激症状(鼻部不快感、鼻閉、鼻痛、鼻漏等)などが1~10未満で報告されています。

 

重症低血糖は放置しておくと、命に係わるのでいかに早く対処するかがカギとなります。
本剤はこのリスクを簡便な操作で軽減できる価値のある薬剤であると考えられます。


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