薬局のしごと/くすり/病気に関する情報発信サイト

C型肝炎の治療方針

C型肝炎ウイルス(HCV)に感染して、急性肝炎を発症した患者のうち治癒する割合は3割程度で、約7割は感染が持続して慢性肝炎に移行します。さらに慢性肝炎に移行ののち肝硬変もしくは肝がんへと移行していきます。HCV感染から肝がんまでの期間は10~30年と考えられていて、肝がんの原因の約8割はHCV由来とされています。

 

そのため、C型肝炎に対する治療目的は、HCVを陰性化し、肝臓の線維化の進行を抑えて肝硬変および肝がんの発生を抑制することになります。

 

治療が成功しているどうかを判断する指標にウイルス学的著効(SVR)があり、これは治療終了後もHCV-RNA陰性を維持している状態を示すものになります。HCV-RNA陰性を12週間維持している場合はSVR12、24週間維持している場合はSVR24と表記します。

 

 

C型肝炎の治療の流れ

HCVが発見されたのは1989年で、日本で1992年からインターフェロン(IFN)の単独療法が開始されました。IFNは動物体内で産生される蛋白質で、体外から侵入した病原体や腫瘍細胞などの異物に反応して産生され、抗ウイルス作用や免疫調節作用があります。

 

IFNは抗ウイルス薬や抗がん剤の医薬品として応用されており、全て注射剤で使用されていて、経口薬はありません。IFN製剤は優れた効果があるものの、著効する症例が少なく、IFN単独治療では、SVRは10%未満でした。

 

IFNを使用する上で問題となるのが副作用です。HCVの治療は長期に及ぶことが多く通常は24週間行います。24週間は約半年間であり、半年間IFNを毎日使用し続けることはかなり体に負担を強いることになります。
IFNを長く使用していると副作用が発現する可能性が高く、副作用により治療を完遂できないということも多くあります。

 

IFNの副作用の代表的な症状は、発熱、悪寒、頭痛、関節痛などのインフルエンザに似た症状が発現しやすくなります。また、使用期間が長くなるとうつ症状、間質性肺炎を起こしやすくなります。間質性肺炎は重篤な状態になりやすいため、IFN投与後の定期検査や胸部X線検査を行い、初期の段階で対応できるようにしておく必要があります。

 

IFN治療が開始された後、経口抗ウイルス薬のリバビリン(RBV)(商品名:レベトール)が開発され、2001年からIFNとRBVの併用療法が承認されました。さらにIFN製剤の持続作用を延長し、週1回の投与を可能にしたペグインターフェロン(Peg-IFN)とRBVとの併用療法が2004年に承認されるとSVRは50%程度にまで飛躍しました。

 

HCVのSVRは改善したとはいえ、日本人に多いジェノタイプ1b型でウイルス量が多いタイプにおいては薬が効きにくく、Peg-IFNとRBVの併用療法であっても約半数は効果得られないという状態でした。

 

2011年の11月から新しいプロテアーゼ阻害剤であるテラプレビル(TVR)が治療に使用できるようになりました。TVRはHCVの複製に必須なNS3/4Aプロテアーゼという酵素を阻害することでHCVの産生量を抑制する経口薬です。このような作用をもつ薬剤を直接作用型抗ウイルス剤(DAA)といいます。

 

以降、TVR+Peg-IFN+RBVの3剤併用療法が確立され、臨床応用されるようになりました。この治療法が適応されるのは1b型でウイルス量が高いタイプの症例でしたが、SVRは70~90%でした。結果、DAAの有用性を示すものとなりました。

 

DAAの開発はさらにすすみ、2014年にダクラタスビル(商品名:ダクルインザ錠)アスナプレビル(商品名:スンベプラカプセル)が承認されました。ダクラタスビルとアスナプレビルの2剤併用療法により、SVRは約90%を示しました。したがって、今後の薬物治療はIFNを使わないIFNフリー治療を主とする方向性となっています。

 

IFNフリー治療によりIFN使用による身体への負担を軽減でき、IFNの副作用リスクをなくすことが可能となります。今後も作用点が異なるDAAの登場が控えていることから、HCVの治療を手軽に継続でき、さらにより有効な治療法へ変化していくことが予想されます。

 

 

 

DAA治療における注意点

より有効な経口剤による治療継続が可能となる一方で、薬剤耐性のHCV出現が危惧されています。ダクラタスビルとアスナプレビルの第Ⅲ相試験において、治療に失敗した患者の多くに薬剤耐性に関係する遺伝子変異が認められました。

 

DAAを単剤で使用するとHCVは変異をしやすく、耐性ウイルスに変化しやすいことが明らかになっています。したがって、DAAでの治療は複数のDAAで行うかまたは、DAAとIFNを同時に併用することで、薬剤耐性HCVの出現に注意しながら治療を行っていく必要があります。

 


HOME サイト概要 プロフィール お問い合わせ