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普通感冒

普通感冒の病態と原因

普通感冒とは、非特異的カタル性炎症(カタル性炎症とは、粘膜における腫脹と滲出液を伴う炎症)を呈する上気道感染症です。上気道とは、解剖学的には、鼻腔、咽頭、喉頭までの気道を指しますので、普通感冒は鼻腔、咽頭、喉頭に発症した感染症ということになります。

 

普通感冒の原因は、80~90%がウイルス、残りは一般細菌、マイコプラズマや肺炎クラミジアなどの非定型病原体です。
原因ウイルスとしては、ライノウイルス(約30~40%)、コロナウイルス(約10%)が多く、これらを合わせると約半数を占めます。その他にRSウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルスなどがあります。

 

一般的に普通感冒は「風邪(かぜ)」と呼ばれますが、インフルエンザウイルスによる感染は流行性感冒と呼称して区別します。原因ウイルスが異なるので治療方法は異ります。

 

一方、下気道気管、気管支、肺胞などを指し、そこで起こる感染症は下気道感染症となります。下気道感染症は細菌による感染が多いです。上気道感染症と下気道感染症では起炎菌は異なり、より鼻腔側の方ではウイルス感染が多く、より肺胞側の方では細菌感染が多いと考えられています。

 

普通感冒の症状と治療方針

普通感冒の初診時の症状として、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、喉の痛み、咳嗽、喀痰などが共通してみられ、発熱、頭痛、全身倦怠感を伴うこともあります。また下痢や嘔吐などの症状を伴うこともあります。

 

主な感染経路は飛沫感染や手指を介した接触感染ですので、手洗いうがいなどの予防が有効です。新型コロナウイルス流行期にマスクをするようになって、風邪の患者さんが少なくなりました。マスクや手洗いなどを徹底することで罹患しにくくなるということを実感しました。

 

普通感冒には平均1人当たり1年に3〜5回くらいは罹患するといわれ、5歳まで(特に1歳以下)の小児は特に罹患しやすいといわれています。私達が生活する上で罹患するリスクの高い疾病ですので予防が重要と考えられます。

 

普通感冒は自然治癒するもので、”かぜ薬でウイルス感染そのものを治すものではありません。一般的には3~7日間で症状は改善します。したがって、原則的には抗菌薬の投与は必要ありません。
しかし、上気道炎様の症状を示す重篤な疾患が隠れていることもあるため、一定期間内に寛解しない場合は、細菌感染症や他の気道疾患に罹患していないかを再確認する必要があります。

 

普通感冒の治療

風邪の治療の基本は自宅療養による安静、保温、十分な栄養・水分を摂ることになります。通常は、自宅療養で1週間以内に自然治癒しますが、一般療法だけは不十分な場合に、症状によって総合感冒薬などの対症療法薬を症状がある間だけ服用します。
ただし、インフルエンザなどの重篤な疾患が疑われる場合、重症化・合併症のリスクが高い患者の場合は、医療機関の受診が勧められます。医療機関の受診が勧められる場合の症状と患者として、以下のものが挙げられます。

【症状】

・39℃以上の発熱
・黄色・緑色の混濁した鼻汁
・激しい咽頭痛、咽頭の腫脹
・激しい咳嗽

【患者】

・上記のような重篤な症状がみられる健康成人
・65歳以上の高齢者
・慢性呼吸器疾患、心疾患、糖尿病などの基礎疾患保有者
・妊婦

 

総合感冒薬以外に感冒の初期症状に葛根湯や小青竜湯が使用されます。葛根湯は体力を消耗させるしまうために高熱が続くときやぐったりしている時に使用すると逆効果になってしまいます。

 

細菌によるかぜ症候群の場合は、β−ラクタム系抗菌薬やマクロライド系抗菌薬を使用することがあります。耐性菌の出現を防ぐため、安易な投与は避け、最大投与期間を3日間を限度に投与し、投与開始から2~3日目に効果判定を行うようにします。


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