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非定型抗精神病薬

セロトニン・ドパミン拮抗薬(SDA)

SDAはドパミンD2受容体遮断作用と強いセロトニン5-HT2A受容体遮断作用を併せ持つ薬剤です。SDAは陽性症状に加えて、陰性症状や認知機能障害改善効果があります。錐体外路症状(EPS)の発現は少ないとされています。

 

 

リスペリドン(商品名:リスパダール)

本剤はドパミンD2受容体とセロトニン5-HT2A受容体を遮断する作用があり、後者に対する親和性が前者よりも高い性質をもっています。統合失調症やせん妄に使用されています。錐体外路症状(EPS)のリスクが低い抗精神病薬とされていますが、用量を増やすとEPSがある程度出現するので低用量で使用されるべき薬剤です。

 

本剤は主に肝臓のシトクロムP450(CYP)2D6によって代謝され、9-ハイドロキシリスペリドン(パリペリドン)となりますので、リスペリドンとして作用する以外にパリペリドンとしても作用します。なお、そのままパリペリドンを成分とする薬剤も開発されています。

 

本剤の剤型ラインナップは豊富で、錠剤以外にOD錠、細粒、内用液などがあり、1日2回服用します。患者の特性に合わせて剤型を使い分けることができます。内用液については、服用の際にお茶コーラに溶かすと効果が少なくなることが明らかになっているため、内用液はそのまま飲むか、水やジュース、汁物などで約150mLに希釈して内服しなければなりません。

 

非定型抗精神病薬の中では、ドパミンD2受容体遮断作用が強い方なので、EPSや高プロラクチン血症が比較的に起こりやすいと考えられています。他に頻度の高い副作用として、アカシジア、不眠症、振戦、便秘、易刺激性、傾眠、流涎過多、不安、倦怠感、筋固縮、構音障害、ふらつき、嚥下障害、鼻閉、月経障害があります。

 

過鎮静や代謝障害は起きにくいとされていますが注意は必要です。起立性低血圧による高齢者の転倒、代謝異常による高血糖症状(口渇、多飲、多尿、頻尿等)および低血糖症状(脱力感、倦怠感、冷汗、振戦、傾眠、意識障害等)の発現には常日頃から注意する必要があります。

 

 

 

パリペリドン(商品名:インヴェガ)

前述のようにリスペリドンは肝臓においてCYP2D6により代謝され、パリペリドンとなりますが、本剤は、パリペリドンを抽出し、浸透圧勾配による放出制御方式(OROS)を利用して徐放薬にしたものになります。この方式はメチルフェニデート(コンサータ)にも用いられている技術ですが、その分薬価が高くなりますが、1日1回の内服で済むのが利点です。

 

リスペリドンとの最大の違いはα1受容体の拮抗作用が弱いことであり、起立性低血圧や過鎮静が起きにくくなっています。その一方で急性期の興奮に対する作用はより弱くなっていますので、鎮静効果が弱い分、基本的には維持療法に適した薬剤と言えます。また、EPSや過鎮静の発生頻度は低いとされています。リスペリドンの副作用で使用できなくなった症例に対しても本剤であれば使用できる可能性があります。

 

 

 

ペロスピロン塩酸塩(商品名:ルーラン)

本剤は抗不安薬のタンドスピロン(セディール)という薬剤に続いて開発された抗精神病薬です。ドパミンD2受容体とセロトニン5-HT2A受容体を遮断する作用があり、セロトニン5-HT1A受容体への部分作動薬としての作用も持っています。セロトニン5-HT1A受容体に作用すると抗不安効果が得られると考えられています。

 

本剤は、抗不安作用があることから興奮をやわらげ、不安、抑うつ、焦燥などの症状を改善する効果があります。代謝異常による高血糖症状や低血糖症状は起きにくいとされており、オランザピンやクエチアピンなどの抗精神病薬においてこれらの症状や過鎮静、体重増加のために使用できなかったケースにおいて、本剤が選択されることが多くあります。

 

 

 

ブロナンセリン(商品名:ロナセン)

ここまでのSDAは本剤は、ドパミンD2受容体遮断作用<セロトニン受容体5-HT2A受容体遮断作用でしたが、本剤はドパミンD2受容体に高い親和性を持つため、ドパミンD2受容体遮断作用>セロトニン受容体5-HT2A受容体遮断作用となっています。それにもかかわらず定型抗精神病薬と比較し、EPSや高プロラクチン血症などの副作用は生じにくいという特徴があります。また、α1受容体、ヒスタミンH1受容体、ムスカリンM1受容体への親和性は低いため、起立性低血圧、過鎮静、眠気、口渇などの不快感を伴う副作用も起こりにくいとされています。

 

このように、本剤は副作用を起こしにくいことが最大の特徴です。他の薬剤が副作用のために増量できなかったり、薬を飲もうとしなくなったりするケースは本剤のよい適応になると考えられます。一方、本剤の吸収は食事の影響を受けやすため、食後に服用する必要があります。

 

 


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