CKD(chronic kidney disease)とは?
<CKDの定義>
下記の1か2をCKDとする。
1.3ヶ月以上持続する
(1) 蛋白尿の存在
(2) 蛋白尿以外の異常
2.GFR<60mL/min/1.73㎡が3ヶ月以上持続する。
これまでCKDの定義がなかったため、論文によって指標はバラバラでした。そこで、2002年に世界共通の指標を作成することになり、GFRで評価をすることになりました。
結果、世界的に共通のエビデンスが作られるようになりました。その後改定が行われてGFRだけでなく、蛋白尿を組み合わせて作成した18段階の病期分類が行われるようになりました。CKDの判断では1回の検査値により決めるのではなく、経過により判断します。つまりCKDの診断は時間をかける必要があります。
腎臓病の3つの特徴
① 症状がない(=病識がない)
例えば、医学部の実習で尿検査をやると3割程度は何らかの異常が出る。これは腎臓病の症状がないという特色を示していて、発見されたときは重症になっているケースが多いです。
また、病識がないということは、治療を受けつけない、薬を飲まないということになり、治療を拒絶する一因となることもあります。
② 進行が遅い
腎臓病のスパンは長く1年、10年単位で進行します。治療期間が長くなると担当する医師が変更になることが多くなります。治療の指示は、医師によって異なることが多く、意見が異なると患者はそれに従わなくなったり、通院しなくなることもあります。
③ 治らない
治療を行っていても検査値がなかなか良くなりません。一生懸命に治療を行っていても治療成果が上がらないと、治療に対する積極性が生まれなくなってしまいます。
CKDを普及する意義
● 早期発見
腎臓内科などの専門医を受診する前に発見できるようにする。健康診断などの異常が出た段階で早めの受診できれば早期発見できる可能性があります。
医師を介した受診勧告はなかなか困難なことが多く、コメディカル(例えば臨床検査技師や薬剤師など)が患者に受診を促すとうまくいくケースが多いです。
● 早期管理開始
医師変更によるコンプライアンス低下を防ぐため、予め一般医家と専門医による2人体制で患者をフォローする。意見の相違も起きにくく、引き継ぎも行いやすくなります。
● 管理の継続
GFRの測定について
イヌリンでのみ測定が可能であるが、この方法を実施するためには24時間の蓄尿が必要となるため、現実的には測定が困難です。これを解決すべく現在はeGFRという推定式を使用しています。eGFRは血清クレアチニン値が必要で、年齢と性別を加味して算出します。
血清クレアチニン=1.0mg/dLがボーダーとされていますが、eGFRで再計算すると異常値となることがあります。特にNSAIDsとV.D製剤を定期で服用している方は注意が必要となります。痛くもないのに痛み止めを飲んでいる方は要注意。尿所見や腎機能に注目し、早めにCKDを見つけることが大事です。
CKDの治療
生活習慣、血圧、食事、血糖のコントロールが重要となります。つまり、生活習慣病の管理がCKDの治療につながります。食事療法や運動療法以外に薬物治療として、血圧は降圧薬、糖尿病はインスリン、脂質異常症はスタチン系を使用すればある程度の治療効果が出ます。しかし、CKDについてはそれにあたる治療薬が見当たらないため、他の領域に比べても食事制限の重要性は高いです。
食事療法
生活習慣に食事、運動、仕事、睡眠、性、喫煙、飲酒などがあるが、食事はお金がかからず満足できてしまうため、ついつい甘いものを口に入れてしまうなどコントロールが難しい。そのため、食事のコントロールを行うことが生活習慣の是正に大きく影響をしていきます。
食事のコントロールは、医学というよりも心理学の一面が強いです。行動療法や行動科学という学問の分野もありますが、まだ十分に根付いておらずエビデンスも不足しています。
低蛋白食が良い理由(高蛋白食はなぜ悪いか?)
2つのメカニズムが考えられます。
① 腎臓保護効果
低蛋白食にすることで蛋白量を減らして、糸球体の濾過量を増やします。低蛋白食による省エネ効果で長持ちさせる効果をイメージします。
② 透析導入遅延効果
低蛋白食にすることで蛋白が体内に貯まる尿毒症を防ぎます。尿毒症は、通常は尿中に排泄される尿素や他の老廃物が血液中に多く残る状態をいいます。低蛋白食によるゴミ減量効果をイメージします。
2つを混同しないことが重要です。病期によって目的が異なるため、どの段階でどのくらい抑えれば良いかという考え方をする。2002年に食事療法基準を作成されたが、2014年に改定予定です。
低蛋白食にするためには?
低蛋白食にするために、食塩10g未満/日を目標として減塩を行います。理由は食事を薄味にすると食事量が減ることが期待できることが1つあります。また、減塩を目標とすると、治療の意識付けがしやすく、治療効果も出やすいために積極性を持たせることができます。
ストレスをかけないよう少しずつ変化させるのがポイントでコンプライアンスを重視します。食事だけで低蛋白食にできる割合は3割程度でイチローの打率以下と考えます。
透析患者の栄養管理
普段の透析とのバランスを重視します。たくさん食べる人は、透析量を増やしたり、食べる量が少ない人は、透析量を減らしたりします。全身状態を評価して過不足があれば少しずつ(1~2年)調整していきます。肥満、低栄養、特定の栄養素への偏りなど問題は挙げられえますが、低栄養状態にならないように注意する必要があります。
輸液の基礎
輸液を行う前にいろいろと検討した上で実施した方がいい場合とそうでない場合があります。
何も考えずに輸液をして良い場合は、以下の3つの場合です。
・食事を摂っている場合→制限しても何か食べた時点で計算がくるってしまいます。
・腎機能が正常な場合
・会話のできる状態で短期間のライン取りを行う場合
一方、事前に考えて輸液が必要な場合は、以下の3つの場合です。
・食事の摂れない方に長期間実施する場合
・腎機能が悪い場合
・救急外来→データがないため。
輸液を実施する際に考えること
① 量と速度
1時間20mL=1日480mLを目安とします。
水分量に過不足があるときは、In/outバランスを見ながら水分量を調節します。急速な補充は心臓をみてから行います。
② エネルギー
③ 電解質組成
無尿の場合や情報が少なく、十分に状況が分っていない場合は、カリウムの数値に注意が必要です。ショック症状の場合もカリウムが含まれていないもので開始します。ラクテック、ソリタT-1などで開始することが多いです。
ナトリウムは1日3gくらい摂取が必要とされています。実際日本では塩分として10g以上摂取していますが、必要量をオーバーしている分は文化によるものと考えられています。人間が生きていく上では3g/日で十分とされており、狩猟を行うエスキモーはナトリウムの摂取量が少ないとされています。
④ ラインをとる位置
最も重要なことは患者をモニタリングすることです。患者をモニタリングして6時間おきに再構成するのが良いとされています。1時間おきであればなおさら良いですが、現実的には不可能ですが、患者の状況から再構成を頻回に行うのが良いと考えられています。
まとめ
・CKDの指標はクレアチニンクリアランスではなく、GFRを使用する。
・CKDの治療には、生活習慣が深く関係しており、食事管理が重要となる。
・数値よりも、考え方が重要となる。