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食物アナフィラキシーの現状と対応

食物アレルギー

アナフィラキシーは全年齢層で増加傾向にあり、その中でも食物アナフィラキシーは年少層で増加傾向にある。アナフィラキシーによる4歳以下の乳幼児の入院数が増加しているという報告もある。

 

食物アレルギーで受診するうちの約8割が0~3歳とされている。食物アレルギーの有病率は乳児10%、幼児5%、学童2.6%、成人1%程度である。

 

日本の原因食物は、乳幼児では鶏卵、牛乳、小麦が三大アレルゲンとされている。

 

食物アレルギーを起こす機序として2つの機序が考えられる。1つ目は経口を介して発症する機序と2つ目は皮膚を介して発症する機序がある。皮膚からアレルゲンに感作される可能性があるため、スキンケアは極めて重要となる。特にアトピー性皮膚炎ではその重要性が増す。

 

 

ピーナッツアレルギーについて

米国では、アナフィラキシーショックの死亡原因の多くはピーナッツ・ナッツ類である。ピーナッツアレルギーによる症状は重篤なものが多い。近年、ベビーマッサージが行われることも多く、そこでピーナッツオイルが使用されることもあるため注意が必要である。

 

ピーナッツはピーナッツバターなどの食品として摂取する機会が多く、多くの食品の原料としても使用されている。ピーナッツアレルギーの発症率と家庭環境中におけるピーナッツ量は、相関するというデータがあり、母子摂取量よりも家庭内で使用されるピーナッツ量が多いほど、ピーナッツアレルギーの発症率が高くなるということを示している。

 

ピーナッツバターを除去するためには、手洗い用せっけんや市販ワイパーなどが必要であり、単なる水拭きだけでは不十分とされている。

 

 

食物アレルギーの病型

免疫が関与するものを食物アレルギーというが、免疫が関与しないものについては不耐症という。不耐症は食品中の化学物質への過剰反応や消化管酵素の異常がある。(例:乳糖不耐症)

 

食物アレルギーの機序には、IgE抗体が関与するタイプの即時型アレルギー反応とIgE抗体が関与しないタイプの非即時型(遅発型)アレルギー反応がある。食物アレルギーの多くは即時型反応によるものであり、非IgE抗体によるものに消化管アレルギーがある。アトピー性皮膚炎にはその両方が関与していると考えられている。

 

 

食物依存性運動誘発アナフィラキシーショック

食後30分から2時間後に運動により誘発されて起こるアナフィラキシーショックのことをいう。ある特定の食物と運動の組み合わせで蕁麻疹から始まりショック症状にまで至るケースもある。

 

具体例として、小麦やエビなどの甲殻類を食した後、ランニングや歩行などの運動により、眼瞼の腫れ、じんましん、呼吸困難、ショック症状などが起こる。胃袋がゆすられることで誘発されると考えられており、運動内容については球技によるものが多いと報告がある。水泳や自転車競技などの報告は比較的少ない。

 

 

口腔アレルギー症候群と花粉アレルギー症候群

口の中に限局した食物アレルギー反応のことを口腔アレルギー症候群という。
フルーツや野菜などを食べたときにアレルギー反応を示し、ラテックスゴムでも同様の症状を示すことがあるため、ラテックス・フルーツ症候群と呼ばれている。原因となるフルーツにはバナナ、アボガド、キウイなどがある。

 

花粉アレルギー症候群は花粉吸入で感作が成立するアレルギー反応をいい、ラテックス・フルーツ症候群と交差反応すると考えられている。花粉アレルギー症候群は、最近小児での報告が増えてきている。

 

関連する花粉と食物アレルギーには、<シラカンバとリンゴ、洋ナシ>や<スギとトマト>や<イネ科とメロン、スイカ>などがある。

 

食物アレルギーで0から6歳までにおいて報告されている症例数が多いのは、1位→卵、2位→牛乳、3位→小麦となっており、6歳以降で最も多い食物アレルギーは甲殻類となっている。

 

初回の食物アレルギーの原因となるアレルゲンは、0から1歳においてはであり、2から3歳ではイクラなどの魚卵となっている。

 

 

アレルギー物質を含む食品の表示義務と食物アレルギーの診断

アレルギー物質を含む食品について、アレルギー物質の表示が法令により義務化された。表示が義務化されたのは5品目あり、卵、牛乳、小麦、そば、ピーナッツとなっている。これらの食品に関しては微量混入・添加物のレベルでも表示義務がある。

 

食物アレルギーの診断は、生活歴・家族歴・アレルギー病歴などから診断を行う。診断については熟練した小児科医にとっても困難な作業となる。

 

食物アレルギーが疑われる場合、IgE抗体検査で高値を示す。IgE抗体検査で陽性後にj食物除去試験、食物負荷試験を行い判定する。

 

重篤な症状を誘発するおそれのあるナッツやピーナッツについて負荷試験を行うことは危険を伴うため、CRD(component resolved diagnosis)によって検査を行うことがある。CRDは、アレルゲンをコンポーネント単位に分解し、これに対する特異的IgEを測定する方法をいう。具体的なアレルゲンコンポーネントの例として、ピーナッツ→Arah 2、小麦→ω-5グリアジン、、大豆→Glym 5などがある。

 

 

即時型アレルギーとアナフィラキシーショック

即時型反応→症状が2時間以内に出る。
アナフィラキシー反応→皮膚症状、呼吸器症状、消化管症状、ショック症状などの全身症状が現れる。

皮膚症状…蕁麻疹、血管性浮腫、皮膚紅潮、かゆみなど
呼吸器症状…呼吸困難、喘鳴、咽頭浮腫、鼻炎など
消化器症状…嘔気、下痢、腹痛
その他…めまい、失神、血圧低下、頭痛、胸痛など

小児のアナフィラキシーショックでは90%以上で呼吸器症状が出る。

 

 

エピネフリン

アナフィラキシーショックの死亡例でエピネフリンが使用されたのは50%。エピネフリンが緊急時に使用されていないこと自体が問題。

 

アナフィラキシーショックが起きたら、まずエピネフリン筋注(0.01㎎/kg)、ステロイドはエピネフリンの後。その後、症状によって抗ヒスタミン薬を追加する。先手必勝という考え方が大事。

 

なぜ筋注なのか?
筋注の血中濃度のピークは8分後、皮下注のピークは34分後となっており、筋注の方が即効性が期待できるため。

 

<エピネフリンの副作用>
震え、熱感、発汗、蒼白、顔面潮紅、血圧の異常上昇

 

疑わしい症例であってもエピネフリンを使用する。動悸などの一時的な症状が現れることがあるが、エピネフリンはすぐに代謝されるので回復する。使わないことによるリスクの方が高い。

 


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