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骨粗鬆症の治療薬について

 

 骨粗鬆症の治療には、骨吸収と骨形成のバランスを整える必要があり、年齢骨折リスクなどを考慮して使い分けていきます。骨粗鬆症の治療薬は以下の通りとなっており、骨吸収を抑制する薬と骨形成を促進する薬が使用されるほか、骨の代謝バランスを整える薬などがあります。骨の代謝バランスを整える薬とは、骨量を増やす上で必要となるカルシウムなどの骨の材料となるものを増やし、間接的に骨量の増量させる薬になります。

 

骨粗鬆症の治療薬

骨吸収を抑制する

ビスフォスフォネート製剤(BP)、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、抗RANKL抗体

 

骨形成を促進する

副甲状腺ホルモン製剤(PTH)

 

骨の代謝バランスを整える

ビタミンD製剤、ビタミンK2製剤、カルシトニン製剤

 

 

骨形成を促進する治療薬

副甲状腺ホルモン(PTH)

PTHは、血中のカルシウムが不足すると骨に作用して、骨のカルシウムを溶解して血中に放出する働きがあります。PTHが持続的に作用すると骨の中のカルシウムがどんどん溶解して骨量が減少していきますが、PTHが適度に作用すると骨芽細胞が活性化して骨形成が促進されます。そのため、PTHをある一定の期間に区切って投与することで骨粗鬆症治療薬とすることができます。

 

PTHは、骨折の危険性が高い骨粗鬆症に対して使用され、効果は大きいとされます。しかし、費用が割高なので誰でも気軽に使用できるという薬剤ではありません。

 

PTH製剤は、注射剤で病院で医師に注射してもらう方法と自分で皮下に注射して投与する方法があります。医療機関で注射する製剤は週に1回最長72週間まで、自分で皮下に注射する製剤は1日に1回24カ月までしか使えないという制限があり、投与終了後はBP製剤への切り替えが望ましいとされています。

 

主なPTH製剤

成分名

商品名

テリパラチド フォルテオ皮下注
テリパラチド テリボン皮下注

 

 

骨の代謝バランスを整える

ビタミンD製剤

骨量増加作用はわずかですが、脊椎骨折防止の効果が認められています。ビタミンDは腸管からカルシウム吸収を促進して、血中のカルシウム濃度を高めて骨形成を間接的に促進します。また、腎臓でカルシウムが尿中へ排出されないように体内に再吸収させる作用もあります。

 

ビタミンDは食物から摂取される他に、紫外線により皮膚でビタミンDの前駆物質が生成され、肝臓と腎臓で代謝されることで活性化されますので、適度に日光に当たらないとビタミンDの合成が少なくなり、骨量が低下しやすくなってしまいます。そのため、家に閉じこもり気味で日光の当たる機会の少ない高齢者への投与に向いていると言えます。

 

ビタミンD製剤の副作用としては、血中のカルシウム濃度が高くなり過ぎてしまう高カルシウム血症に注意しなくてはなりません。そのほかにも急性腎不全尿路結石の報告があります。

 

主なビタミンD製剤

成分名

商品名

アルファカルシドール アルファロール、ワンアルファ
エルデカルシトール エディロール
カルシトリオール ロカルトロール

 

 

ビタミンK

ビタミンKの摂取不足により骨折の危険性が高くなることが疫学的に知られています。空腹時に服用すると吸収が低下してしまいますので必ず食後に服用しなければなりません。なお、血栓をできにくくする治療薬のワーファリンの作用を弱めてしまうため、併用禁忌となっています。

 

ビタミンKは、骨のビタミンK不足状態を示す骨代謝マーカーであるucOCを目安に投与されることがあります。血中のucOC濃度が4.5mg/mL以上の症例や胃切除後の骨量減少、アルコール多飲者、肝・胆道系疾患の合併者、抗生物質の長期使用者など低回転型骨粗鬆症患者に用いるのが良いとされています。

 

主なビタミンK製剤

成分名

商品名

メナテトレノン グラケー

 

 

カルシトニン製剤

カルシトニン製剤は、骨吸収抑制作用により効果を示します。BP剤と比較すると骨密度増加効果は少ないとされていますが、カルシトニン製剤には他の骨代謝改善薬にない中枢神経を介した鎮痛作用があるため、腰背部痛を有する高代謝回転型骨粗鬆症では、第一選択薬の一つとなることがあります。注射薬のため、薬局ではなかなかお目にかかる機会が少ない薬剤です。

 

ビタミンD製剤

成分名(商品名)

商品名

① アルファカルシドール (活性型ビタミンD3製剤) アルファロール、ワンアルファ
② カルシトリオール (活性型ビタミンD3製剤) ロカルトロール
③ エルデカルシトール (ビタミンD3誘導体) エディロール

 

構造式

①                    ②                     ③

 

 

 

作用機序

ビタミンDは、食物から摂取または皮膚で合成された後、肝・腎での2段階の水酸化により活性化され骨代謝等に関与します。
活性型ビタミンD3は、腸管でのCa吸収促進や破骨細胞抑制などの作用を示すことから、骨粗鬆症の治療薬として使用されています。

 

骨量増加作用はわずかですが、脊椎骨折防止の効果が認められています。ビタミンDは腸管からカルシウム吸収を促進して、血中のカルシウム濃度を高めて骨形成を間接的に促進します。また、腎臓でカルシウムが尿中へ排出されないように体内に再吸収させる作用もあります。

 

ビタミンDは食物から摂取される他に、紫外線により皮膚でビタミンDの前駆物質が生成され、肝臓と腎臓で代謝されることで活性化されますので、適度に日光に当たらないとビタミンDの合成が少なくなり、骨量が低下しやすくなってしまいます。そのため、家に閉じこもり気味で日光の当たる機会の少ない高齢者への投与に向いていると言えます。

 

ビタミンD製剤の副作用としては、血中のカルシウム濃度が高くなり過ぎてしまう高カルシウム血症に注意しなくてはなりません。そのほかにも急性腎不全尿路結石の報告があります。

 

腸管のCaの吸収↑、副甲状腺からのPTHの分泌↓、破骨細胞機能↓

 

ビタミンDは標的臓器(小腸、副甲状腺、腎臓、骨など)の受容体に結合し、種々の作用を発揮する。
ビタミンD3誘導体は、破骨細胞の機能抑制作用が強い。

 

ビタミンD製剤は、腎でのCa再吸収促進による血清Ca値上昇、副甲状腺への直接的な作用(PTH分泌抑制)、骨芽細胞刺激による骨形成促進作用なども有する。

 

エルデカルシトールは骨密度上昇効果が最も高く、また、骨折予防効果に関するエビデンスが最も明確である。

 

 

ビタミンD製剤は、天然のビタミンDが必要とする活性化過程の一部または全部が不要である。
高齢者ではビタミンDの活性化能が低下することが骨密度低下の一因であるため、体内での代謝を必要としないビタミンD製剤が適している。
また、いずれの薬も腎での活性化を必要としないため、腎不全患者でも使用可能である。

 

天然ビタミンD
Vit.D➡代謝➡活性化➡作用発現 肝臓と腎臓で、2回の代謝(水酸化反応)を受けて活性型となる。

 

活性型ビタミンD3製剤
カルシトリオール➡作用発現 活性型ビタミンD3を化学合成したもの
アルファカルシドール➡代謝➡活性化➡作用発現 カルシトリオールのプロドラッグ

 

ビタミンD3誘導体
エルデカルシトール➡作用発現 活性型ビタミンD3と類似構造をもち、より強い骨折予防効果がある。

 

適応

骨粗鬆症

 

禁忌

①高Ca血症、③妊婦、授乳婦

 

相互作用

併用薬作用↑:ジギタリス製剤(血清Ca濃度上昇➡作用増強➡不整脈出現のおそれ)

 

注意

定期的に血清Ca測定を行い、高Ca血症の初期症状(食欲不振、悪心・嘔吐、口渇、多尿など)に注意する。

 

破骨細胞分化促進因子であるRANKLを標的とするヒト化モノクローナル抗体である。RANKLとRANKの結合を阻害することで破骨細胞の成熟を阻害し、骨吸収を抑制する。

 

<一般名>
デノスマブ(ランマーク、プラリア)

 

<作用機序>
RANKLに特異的に結合・競合➡成熟破骨細胞の成熟阻害➡骨吸収↓➡骨密度↑・骨折↓

 

抗RANKLモノクローナル抗体は、破骨細胞分化促進因子であるRANKリガンド(RANKL)を阻害し、骨吸収を抑制する。
わが国では、2013年に承認されたプラリアが骨粗鬆症に適応がある。
低Ca血症、妊婦または妊娠の可能性のある患者には投与不可。

 

<適応>
骨粗鬆症

 

<禁忌>
低Ca血症、妊婦

 

<副作用>
低Ca血症、顎骨壊死・顎骨骨髄炎、高血圧、肝機能障害

 

<注意>
低Ca予防のため、ビタミンDとカルシウム製剤の経口補充を行う(高Caの場合を除く)


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